生徒会主催のダンスパーティーが開かれます
生徒会に入って半年が経過した。私も生徒会の仕事に随分慣れて、大好きなカルロ様と一緒に過ごせる生徒会の時間が、幸せに感じるようになった。今日ももちろん、生徒会室で作業をしている。
「みんな聞いてくれるかい?2ヶ月後に行われる生徒会主催のダンスパーティーの件で、相談があるのだがいいかな?」
そう、2ヶ月後には全校生徒参加のダンスパーティーがある。貴族学院の生徒は、名前の通り全員が貴族だ。今は学生の身分なので、夜会などの参加もほとんどないが、卒業すれば貴族としてたくさんの夜会やダンスパーティーに参加しなければいけない。
もちろん、ダンスの授業やクラスごとの発表は行っているものの、規模が小さい。そこで年に1回、約300人いる全校生徒全員でダンスパーティーを行い、世に出た時の夜会やパーティーに備えようというわけだ。
また、色々な学年の貴族と交流できるとあって、大切な社交の場としても利用されている。
「そう言えば、去年はドラゴン騒動で中止になったんでしたわね。私たちにとっても初めてのダンスパーティー。どう進めればいいのかしら?」
リリーの言う通り、ドラゴンの調査などでバタバタしており、去年は急遽中止になった。
「とりあえず、一昨年に開催された時の資料を持ってきたよ。まあ、僕たちが行うことと言ったら、会場のセッティングと料理を手配するくらいかな」
「う~ん、それじゃあなんだか味気ないわね!せっかくなら、もっと面白い企画を考えない?」
リリーが提案する。確かにただ踊って飲んで食べてじゃあ面白くないわね。
「ニッチェル嬢、何かいい案があるのかい?」
「そうね~」
皆が考え込む。
「そうだわ!せっかくならダンスパーティーでやりたい事を、他の生徒に聞いてみるのはどうかしら?だって生徒の為のダンスパーティーでしょ。なら、みんながやりたい事をやるべきだわ」
私の提案に、少し考え込むカルロ様。
「エイリーン、その案は素晴らしいけれど、どうやって生徒に聞くんだい?」
言われてみればそうね。ん?待てよ。そう言えば前世ではスーパーで、ご意見箱ってものが設置されていたな。あれを活用すれば行けるかも!
「カルロ様、それでしたら“アイデア募集箱”を設置してみはいかがですか?そうですわね、期限は明日から2週間程度。その後、生徒会で多かったアイデアの中から、5つくらい候補を出して、どれがいいか全校生徒に投票してもらうの。その中から多かったものを採用すれば、みんながやりたいことができますわ」
少し手間はかかるが、まだダンスパーティーまで2ヶ月程度ある。十分間に合うはずだ。
「確かにそれならみんなの意見を公平に聞けるね。早速アイデア募集箱を作って、明日から募集をかけよう」
そうと決まれば早速作業開始!私とリリーは箱の準備。カルロ様とフェルナンド殿下は、全校生徒に配る告知票を準備する。
学年ごとに箱を設置するため、全部で3つ準備した。早速各フロアに設置し、その上にはカルロ様達が作った告知票も貼り付ける。
後は先生たちに頼んで、全校生徒に告知票を配ってもらえばOKだ。ちなみに公平性を出す為、開封は先生同伴で、最後の投票は各クラスの学級委員に協力してもらい、全校生徒が見守る中で開票することにした。
「ねえ、せっかくだから私たちも何か案を出してみましょうよ」
リリーの提案に、私もうなずく。でも、どんな案がいいかしら?
「そうだ、奇抜な衣装対決なんてどう?おもしろそうじゃない?」
「それ、確かにおもしろいわ。それに普段の夜会なら絶対出来ないもの!それいいわね」
私の提案にリリーも食いつく。よし、じゃあ私たちはこの案を、アイデア募集箱に投稿しよう。
他にどんな案が出てくるのかしら。楽しみね。
そうこうしているうちに2週間が経ち、今日はいよいよアイデア募集箱を開封する日。今回見届けてくれる先生は3人。各学年の担任の先生が1人づつ来てくれた。
「早速開封していこうか?」
私たちは、各フロアから回収したアイデア募集箱の中身を一気に取り出した。
「すごい量ね。100枚くらいはあるかしら?」
確かに凄い量だ。先生たちにも手伝ってもらい、1つ1つ見ていく。
「ヤダ~、女性の美しさコンテストですって!一体何を考えているのかしら、これを書いた人」
リリーが不満の声をあげる。
「こっちは、かっこいい男子決定戦だって…」
私もすかさず読み上げてしまった。「やーねー」とリリーと2人で盛り上がる。
「おまえら~盛り上がっている暇はないぞ~。さっさと開封しろ~」
そう注意してきたのは、もちろん私たちの担任だ。この語尾を伸ばすしゃべり方、本当に独特よね…
どんどん開封していき、何とかすべてを開封出来た。
「多かった内容をまとめると、“ダンスが上手なペア選手権”“一発芸選手権”“大食い選手権”“奇抜なファッション選手権”“美しい女性&かっこいい男性選手権”の5つだね」
「ダンスが上手い以外は、ダンスパーティーと全く関係ないものばかりだな…」
先生が呆れている。
「でも、私たち学生だし楽しめたらいいんじゃないですか?」
私はすかさずフォローを入れる。
「まあ、お前たちが良いならいいが…」
「じゃあこの5つから多数決を取ろうか。とりあえず明日告知して、投票&開票日は、明後日の全校集会ということで」
せっかく色々な案を出してもらったので、この中から2つ採用することにした。一体どれが選ばれるのかしら!楽しみね。
そして、投票日。投票用紙に記載してもらい、ホールで全校生徒立ち合いのもと、開票が行われる。
「皆さん、今回のダンスパーティーで行う余興に、たくさんのアイデアを頂きありがとうございます。今日は皆さんの投票結果から、2つ決めたいと思います。今から開票を行うので、各クラスの学級委員さん、前に出てきていただけますか?」
カルロ様の言葉で、各クラスの学級委員15名(各クラス1名)+生徒会4名で開票が始まった。
人数も多いため、どんどん開票されていく。そしていよいよ、結果発表の時間だ!
「開票の結果を発表いたします。“ダンスが上手なペア選手権”と“奇抜なファッション選手権”の2つに決まりました。なお、後日参加用紙を配るので、参加する人は用紙を提出してください。勝敗は僕たち生徒会と先生達、学級委員で行う予定です。もちろん、優勝者には素敵なプレゼントを準備しますので、皆さん奮ってご参加ください」
とりあえず、ダンスパーティーでの余興が無事決まった。でも、まだまだやらなければいけない事がたくさんある。これから1ヶ月半、大変だわ。
「ねえ、私たちも参加しても良いのかしら?」
リリーがこっそり聞いてきた。
「ニッチェル嬢、生徒会メンバーは参加できないよ!僕たちはあくまでも審査員だからね」
「そっか、残念!でも来年もあるから、まあいっか」
来年か…このダンスパーティーが終われば、すぐに魔王が復活するだろう。もしかしら、これが最後のダンスパーティーかもしれない…
いけないわ。またネガティブなことを考えてしまった。今は今回のダンスパーティーを、生徒会メンバーの1人として、成功させることだけを考えよう。
~投票後のエイリーンとリリーの会話~
「エイリーン様、何に投票したんですか?」
「私は奇抜なファッションよ。リリーは?」
「私は…美しい&かっこいい人選手権…」
「えっ、何でそれなの?リリー何これ?って言ってたじゃない!」
「最初はそう思ったんだけれど、学院内で一番の美男美女って気になるじゃない」
「確かにそうね」
「でしょ!それに美男美女選手権なら私たちも参加できたし」
もしかしてリリー、美女の方狙っていたのかしら?まあ、リリーは可愛いから、もしかしたら選ばれていたかもしれないわね。
そう思いながら微笑むエイリーンであった。
補足:余興は2つ選ばれましたが、投票は1つ選んで書く方式でした!




