エイドリアンの騎士団長就任式が行われます
本日2度目の投稿です。
一足先に家に帰ってきた私とお母様。不安そうに待っていた使用人たちに、エイドリアンが無事優勝し、騎士団長に内定したことを伝える。
使用人たちも皆喜んでくれた。
「今日はパーティーね!早速準備をしなくっちゃ!」
お母様の言葉で、使用人たちも準備に取り掛かる。
「私も卵サンドを作るわ。エイドリアンの大好物ですもの」
私も急いで厨房へと向かった。
「料理長、私今からエイドリアンの大好物の卵サンドを作りたいの。少し厨房を借りてもいいかしら?」
「もちろんですお嬢様。本当にお坊ちゃまは凄いお方だ、私たちも今日は腕によりをかけて、お料理をたくさん作りますよ」
料理長も張り切っている!私は料理の邪魔にならないよう、隅っこでこっそり卵サンドを作った。そう言えばお昼はカツサンドだったわね。サンドサンドで大丈夫かしら?
でもまあ、作っちゃったしいいか!
卵サンドを作り終え、食堂へと向かうとお母様が使用人たちに、あーでもないこーでもないと、指示を飛ばしていた。
「早くしないとエイドリアンが帰ってきてしまうわ!」
焦るお母様。
「お母様、そう思うなら少しは手伝ったらどう?これはここに飾るのね。私やるから、あなたはあっちをお願い」
私は近くにいたメイドに指示を出す。お母様も私の言葉にハッとしたのか、慌てて手伝いだした。もう、お母様ったら根っからのお嬢様なんだから。手伝うと言う発想がないようだ。
何とかエイドリアンが帰ってくるまでに、飾りつけも料理も準備できた。後は本人が帰ってくるのを待つだけだ。
しばらく待っていると
「お坊ちゃまと旦那様が帰宅いたしました」
執事が教えに来てくれた。
いよいよね。
「ねえ、明かりを消して!入ってきた瞬間明かりを付けて、エイドリアンをびっくりさせましょう!」
私の提案にうなずくお母様。すぐにメイドが明かりを消してくれた。
「ただいま…」
明かりが消えているせいか、恐る恐る入ってくるエイドリアン。その瞬間、明かりを一気に付けた。
「「「「エイドリアン(様)騎士団長内定おめでとう(ございます)!」」」」
私とお母様、使用人一同が一斉に声をかける。
「うぁ!びっくりした。でも、ありがとう。凄いね。この短時間で、こんなにたくさんの飾りや料理を準備したの?」
「もちろんよ!今日はエイドリアンが史上最年少で騎士団長に内定した、とってもおめでたい日なのよ!」
私は得意げに言う。
「さあ、冷めないうちに食べましょう。エイドリアン、座って。あなたも!」
お母様に促され、エイドリアンとお父様も席に着く。
「それにしても、エイドリアン。今日の試合凄かったわね。私びっくりしちゃったわ!」
魔力と剣をうまく使いこなして戦うエイドリアン、ものすごくかっこよかった!
「ありがとう、エイリーン!きっとお守りとカツサンドが効いたんだよ」
「そう言ってもらえると、作った甲斐があったわ。そうだ、卵サンドを作ったの、エイドリアン、食べて」
私が卵サンドを進めると、嬉しそうに食べてくれるエイドリアン。やっぱり、卵サンドも作ってよかったわ。
「今度の休みなんだけれど、俺の第2騎士団長就任式があるんだ。家族や友人を呼んでいいらしいから、来て欲しいんだけれど」
「まあ、今回はお友達もいいの?なら、カルロ様やリリー、フェルナンド殿下も良いかしら。今回の事話したら、凄く気にしてくれていたの。後…出来ればフィーリップ様も…」
「もちろんいいよ!カルデゥース侯爵令息か…彼にも色々とお世話になっているし、まあいいよ」
若干嫌そうな顔をしているが、何とか許可が下りた。
「それにしても、15歳で騎士団長だなんて、エイドリアンは本当に凄いわ!私の自慢の息子ね!」
「ずっと塗り替えられなかった私の騎士団長最年少記録も、ついに塗り替えられてしまったな。でも、息子のエイドリアンに塗り替えられるなんて、本当に嬉しいよ」
涙ながらにそう言ったお父様。この涙はきっと、息子の成長を喜ぶ涙よね。うん、そうに違いないわ!
この日は、夜遅くまで宴が行われた。
翌日、早速カルロ様達にエイドリアンが優勝し、騎士団長になる事が決まったことを報告する。
「それは良かった。さすがエイドリアンだね」
「本当に凄いわ」
「俺からもエイドリアンにお祝いを贈りたいな!何が良いかな」
「ありがとう皆。それでね、今度の休みに、エイドリアンの第2騎士団長就任式があるの。今回は友人も参加できるみたいだから、良かったら参加してくれないかな?」
「えっ、私たちもいいの!もちろん参加するわ!」
鼻息荒く食いつくリリー。予想通りの反応だ。カルロ様とフェルナンド殿下もOKしてくれた。
後は、フィーリップ様だけね。私は家に帰ると、通信型魔道具でフィーリップ様を呼び出す。
“エイリーン、昨日はおめでとう!それにしてもエイドリアン様、めちゃくちゃ格好よかったわ!私惚れ直しちゃった。決勝なんて本当にすごかったわね!さすがエイドリアン様だわ!”
通信が繋がったとたん、ものすごい勢いで話し出す、フィーリップ様。
「あのね、フィーリップ様。今度の休みにエイドリアンの第2騎士団長就任式があるの。今回は友人も来ていいらしいから、良かったら来ない?」
“えっ、いいの!もちろん行くわ。やった~!エイドリアン様が騎士団長に就任する姿を生で拝めるのね。なんて幸せなのかしら!”
うっとりするフィーリップ様。もうどう見ても恋する乙女の顔だ。
「詳しいことはまた後で連絡するわね」
“わかったわ、誘ってくれてありがとう、エイリーン。それじゃあ、またね”
とりあえず全員誘えたわ。それにしてもエイドリアンの就任式、楽しみね。そうだわ、メルシアお姉さまにも映像を送ってあげないとね。
そして、就任式当日。エイドリアンの騎士団長就任をお祝いするかのように、雲一つない青空が広がっている。
私たちは今回就任式が行われる、騎士団の本部へと向かう。騎士団員以外の人はエイドリアンの証明書がないと入れないため、お母様と私、リリー・カルロ様・フェルナンド殿下の5人で会場へと向かった。
フィーリップ様は事前に証明書を渡してあるので、別で来るようだ。会場に着くと、既にたくさんの騎士団の人が集まっていた。
私たちと少し離れたところに、フィーリップ様の姿を見つけた。手には見覚えのない魔道具が握られている。あれは、何かしら?
「なんでカルデゥース侯爵令息がここにいるんだ」
フィーリップ様を見つけたカルロ様が、ものすごく不満げな声をあげる。
「確か騎士団員は誰でも入れるらしいから、彼も騎士団員じゃないの?」
ナイス!リリー。
「きっとそうよ!」
私も援護射撃を行う。
「う~ん」
カルロ様は明らかに不満げだが、何とか納得したようだ。そして、フィーリップ様から見えないよう、フィーリップ様と反対側に私を移動させ、がっしり腰を掴まれた。
もしかして、未だにまだ私とフィーリップ様の仲を疑っているのかしら…
お母様やリリー、フェルナンド殿下はそんなカルロ様を見て、苦笑いをしている。
「皆様、お待たせいたしました。新たに第2騎士団長に就任しました、エイドリアン・フィーサーのご入場です」
第1騎士団長の言葉に合わせ、エイドリアンが出てきた。後ろには総騎士団長でもある、お父様もいる。そしてお父様から、騎士団長の称号でもあるバッジと剣を渡された。
「ここにエイドリアン・フィーサーを次期第2騎士団長として認める。異論があるものはいるか?」
お父様の問いかけに、もちろん誰も異論を唱えるものはいない。次は無事第2騎士団長になった、エイドリアンの挨拶だ。
「本日は私、エイドリアン・フィーサーの就任式においでいただき、誠にありがとうございます。まだまだ未熟ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします」
エイドリアンは深々と頭を下げた。周りからは、割れんばかりの拍手が鳴り響く。エイドリアン、毎日毎日稽古していたものね。本当に良かったわ。
いつの間にかエイドリアンの元には、たくさんの騎士団員たちが集まっていた。仲間に囲まれ、嬉しそうなエイドリアン。そんなエイドリアンを見ていると、私まで嬉しくなる。
そして次は祝賀会だ。我がフィーサー家が誇る料理人たちによって、たくさんの料理が並ぶ。ちなみに新たに騎士団長になった者の家が、もてなす決まりになっている。その為、フィーサー家の使用人一同大忙しだ。
私もお母様と一緒に、挨拶に回る。それにしても騎士団員、凄い食欲。既に並んでいる料理はもちろん、新たに出てくる料理も片っ端から無くなっていく。本当に、どんな胃袋をしているのかしら。
一通り挨拶を終え、カルロ様達が待つテーブルへと向かった。
「エイリーン、お疲れ様。さすがに疲れただろう!ここでゆっくりすると良いよ」
カルロ様が私にジュースを手渡してくれる。ちょうど喉が渇いていたのよね。
「ありがとう、カルロ様」
私は一気にジュースを飲み干す。
「それにしても、みんなすごい食欲ね!どんな胃袋をしているのかしら」
リリーも私と同じことを考えていた様だ。ちなみにこのテーブル、王子2人に聖女という、とてつもなくVIPメンバーが揃っている。そのせいか、騎士団のみんなも警戒して近づかない。
「みんな、今日は俺の為に来てくれてありがとう。ゆっくりしていってね」
エイドリアンが、何とか騎士団の仲間から抜け出て来たのか、やっと私たちのテーブルに挨拶に来た。
「エイドリアン、わざわざ挨拶に来てくれてありがとう。それにしても、15歳で騎士団長になるなんて凄いね。本当におめでとう」
「史上最年少だってね。本当にすごいよ」
「さすがエイドリアン様ですわね!今日はおめでとうございます」
3人から挨拶を貰い、嬉しそうなエイドリアン。
「おーい、エイドリアンはどこに行ったんだ~」
遠くからエイドリアンを呼ぶ声が!
「ごめん、もう行かないと!今日は本当にありがとう。それじゃあ」
そう言うと、エイドリアンは急いで行ってしまった。
こうしてエイドリアンの祝賀会は、夜遅くまで行われたのであった。
騎士団員からの信頼も厚いエイドリアン。今回の就任式もたくさんの仲間たちが集まってくれました。ちなみに、副騎士団長は騎士団長が選ぶ決まりになっている。
エイドリアンが選んだ新副騎士団長は、男爵令息のカロイド様という人です。
彼も魔力量が高く、剣の腕も抜群。エイドリアンが騎士団に入った時からよく面倒を見てくれた、とても優しい人です。
※4月中の完結を目指しているため、毎日2回更新で行く予定です。多分終わると思うのですが、もしかしたら5月までずれ込むかもしれません。よろしくお願いいたしますm(__)m