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エイドリアンが騎士団長になるための試験を受けます

魔石の開発も順調に進み、生徒会の仕事も慣れてきた為、精神的にも肉体的にも余裕が出てきた。そんなある日。


「俺、今週の休みに騎士団長になる為の試験を受けることになったんだ」


家族で食後のティータイムを楽しんでいた時、急にエイドリアンから重大発表をされた。


「まあ、凄いわエイドリアン!さすが私の息子ね!」


「さすがだな!私が初めて騎士団長になったのが17歳の時だった。史上最年少での騎士団長だったんだぞ。未だにその記録は破られていない!もし今回の試験に合格したら、エイドリアンが私の記録を塗り替えて、史上最年少の騎士団長になるのだな。息子に記録を塗り替えられるなんて、嬉しい限りだ」


お父様もお母様も物凄く喜んでいる。それにしても今さらっと、お父様自慢したわよね…まあ、別にいいけれど!


「父上も母上も試験を受けさせてもらえる事が決まっただけで、まだ騎士団長になれると決まったわけではありません。喜ぶのはまだ早いですよ!」


エイドリアンの話によると、今回第2部隊の騎士団長が辞めることになり、新たな騎士団長を決めることになったらしい。今回試験を受けるのは、エイドリアン含め8人。


その中でトーナメント戦を行い、優勝した人が次の騎士団長というわけだ。ちなみに試験は希望すれば受けられる訳ではなく、他の隊長からの推薦が必須らしい。


「でもエイドリアン。試験を受けられるってことは、隊長から推薦されたって事でしょ。それだけでも凄いわ!同じ双子として私も鼻が高いわ」


漫画では今頃旅に出ているエイドリアン。今では自国の騎士団長候補ですものね。


「ありがとう、エイリーン。それでその試験なんだけれど、家族も観戦が出来るんだ。良かったら、見に来てくれないかな」


「もちろん、行くわ!エイドリアンが戦っている姿を見れるなんて!今までの大会では女性は入れなかったから、見たくても見れなかったでしょ!めちゃくちゃ楽しみだわ」


「ありがとう。エイリーン!また昔みたいに、赤いお守りを作ってくれるかい?」


私は前世の記憶が戻ってから、大会の時はいつもエイドリアンに赤いお守りを作って渡していた。赤い布で作った簡単なものだが。


「あんなものでよければ、もちろん作るわ!今週の休みが楽しみね!」


「私は総騎士団長として、元々試合を見に行くことになっているからな。それにしても、エイドリアンが騎士団長か!」


お父様は嬉しそうにつぶやいた。お母様も隣で大きくうなずいている。


「だから、まだ決まった訳じゃないんだって…」


エイドリアンの嘆き?は、きっと両親には聞こえていないだろう…


それにしてもエイドリアン、勝てると良いな!



“何ですって!エイドリアン様が騎士団長の試験を受けるですって!ねえ、エイリーン、通信型魔道具で配信してよ!それくらいできるでしょ!”


魔石の制作の件で、フィーリップ様と通信していた際、つい嬉しくてエイドリアンの事を話してしまったのだ。


「でもお母様も近くにいるし。通信型魔道具をずっと置いておくわけにはいかないわ。みんなが不審がるでしょ」


私はやんわり断る。第一周りの目を気にして撮影なんてしていたら、私が試合に集中できないじゃない!


“わかったわ、その点は何とかする。小型の新しい魔道具を開発するから、ちょっと待っていて。また連絡するわ“


どうやらフィーリップ様は何が何でも、エイドリアンの試験の様子を私に配信させるようだ。こんなことになるなら、言わなければよかったわ…今頃後悔しても遅いんだけれどね。


そして次の日。若干テンションが低いまま、私は生徒会の仕事をしていた。


「ねえ、今週の休み、久しぶりに4人で街に行かない?」


隣で作業をしていたリリーが手を止め、嬉しそうに私たちを誘って来た。


「それいいね。最近あまり出かけていなかったし!」


カルロ様もリリーの誘いに乗った。最近この2人、あまり喧嘩しなくなったのよね。まあ、2人とも大人になったって事かな?


「俺も大丈夫だよ。エイリーン嬢は?」

フェルナンド様に急に話を振られた。今週の休日は、ダメだ!エイドリアンの試験の日だ。


「ごめんなさい。私はちょっと用事があって行けないわ」


「エイリーン、前回も用事があるって言って断ったよね!一体君は何をしているんだい?」

すかさずカルロ様に突っ込まれる!前回は確か魔石を作るために断ったのよね。でも、今回は絶対外せない用事だものね。


「実は今週の休み、エイドリアンの騎士団長になる為の試験があるの。その試験を家族で応援しに行く事になっていて。だからごめんなさい!」


私はみんなに頭を下げた。


「騎士団長の試験だって!確か騎士団長の試験を受ける為には、団長の推薦が必要なはず。凄いじゃないか、エイドリアン!それなら仕方がないね!しっかり応援しておいで」


カルロ様も納得してくれた様で良かったわ。


「ねえ、その応援、私たちも行ったらダメかしら?」


「リリー、騎士団長の試験は団員と家族しか観戦できない決まりになっているんだよ」


リリーの提案に、フェルナンド様がすかさず答える。がっかりするリリー。


「リリー、ありがとう!私がみんなの分まで、しっかりエイドリアンを応援してくるから安心して」


そして、いよいよエイドリアンが試験を受ける当日になった。先に試験会場へと向かうエイドリアンに、私はいつものように布で作った赤いお守りと、エイドリアンの大好物でもあるカツサンドを渡す。


カツサンドは、”戦いに勝つ”という意味も含まれている。ちなみにお父様は総騎士団長として今回の試験を見送る為、既に会場へと出発している。


「エイドリアン、頑張ってね」

「ありがとう、エイリーン。じゃあ、行ってくるよ」

「いってらっしゃい。後で応援に行くからね」


使用人含め、公爵家一同でエイドリアンも見送る。


「さあ、エイリーン。私たちも準備をして会場に行きましょう」

お母様の言葉で、私たちも準備を始める。忘れ物はないわよね。あっ、行けないわ。フィーリップ様から預かった撮影型魔道具を付けなきゃ!


2日前、フィーリップ様から新たな魔道具が届いたのだ。ブローチ型の撮影型魔道具で、私が胸に付けスイッチを押すだけで、勝手に通信型魔道具に映像が送信できるという優れもの。


メルシアお姉さまも見られるよう、フィーリップ様に調整してもらっている。

私は出来るだけ高い位置にブローチを付けた。これならしっかりと試験の試合が、2人に見えるはずだわ。


お母様と一緒に馬車で会場へと向かう。会場は色々な大会でも使われる競技場だ。



武道場に入ると、私たちは家族席へと案内される。既に何組かの家族が席に座っていた。私たちも良く見える一番前の席を陣取る。ここなら魔道具越しでもよく見えるわよね。


騎士団長を決める試験ということもあり、多くの団員が見に来ている。中には”エイドリアン頑張れ!”と書かれた横断幕を持っている集団もいる。エイドリアンって、男性に人気があるのね…


しばらくすると、今日試験を受ける8人が出てきた。もちろん、エイドリアンもいる。第1騎士団長が、今回のルールを説明した。剣、魔力など何を使っても良く、場外に出たり、倒れこんでしまったり、降参したら負けらしい。


ちなみに魔力を使う為、観客席に被害が出ないよう、王宮魔術師によるバリア魔法が使われている。説明が終わると、トーナメント表が張り出された。


「エイドリアンは2試合目ね!ねぇ、エイリーン。エイドリアンは大丈夫かしら?」

心配症のお母様、エイドリアンが怪我をしないかどうか心配なようだ。


「しっかり鍛えているからきっと大丈夫よ。」


そしていよいよ試合が始まった、第1試合から白熱した戦いが繰り広げられていた。そして、いよいよエイドリアンの番だ。


「エイドリアンが出て来たわ!エイドリアン、頑張るのよ!お母様はここにいるわよ!エイドリアン!」


まあ、叫ぶ叫ぶ。さすがに恥ずかしかったのだろう。エイドリアンが真っ赤になっている。周りもクスクス笑っているわ。

私はお母様を必死で止める。騎士団側に座っているお父様も慌てている。何だかんだ言って、お母様はものすごく子煩悩なので仕方ないか。


おっといけない、魔道具のスイッチを入れないとね。私はフィーリップ様に教えてもらった通り、ブローチの裏側にあるボタンを押す。このボタンを押すと、通信機に連絡が行くようになっているらしい。



第1騎士団長の掛け声で、試合が始まった。魔力量はもちろん、剣の腕も一流のエイドリアン。あっという間に試合終了。もちろん、エイドリアンの勝利だ。試合って、こんなにあっけないものなのね。その後も順調に勝ち上がったエイドリアンは、ついに決勝へとコマを進めた。


相手は26歳の、アルダス伯爵令息だ。彼はとにかく剣の腕が凄いらしい。エイドリアン大丈夫かしら!


そうこうしているうちに試合が始まった。魔力で攻めるエイドリアン。その魔力をうまく剣でかわすアルダス伯爵令息。ここまで、両者互角の戦いを繰り広げられている。


頑張れエイドリアン、負けるな!私は祈るように見つめる。隣ではお母様も祈っている。


その時、エイドリアンが剣で一気に攻め込み、アルダス伯爵令息がバランスを崩した一瞬の隙をつき、一気に魔力で攻め込んだ。倒れこむアルダス伯爵令息!


「この勝負、エイドリアンの勝ち」

第1騎士団長の声が響き渡る。


「やったわ!エイドリアンが勝ったのね」

私とお母様は抱き合って喜ぶ。お母様は涙を流しているわ。本当に良かったわ。ふとお父様の方を見ると、お父様も涙ぐんでいた。



「さあ、今から急いで帰ってエイドリアンを祝う準備をしなくっちゃ!」


張り切るお母様。喜びの中、私たちは急いで家路についたのであった。


エイドリアンは何とか優勝し、第2騎士団長に内定しました。

そんなエイドリアンは面倒見がよく、公爵令息だからって威張ったりしません。その為団員内からの信頼も厚く、エイドリアンを慕っている団員も多いのです。


もう1つ言うと、エイドリアンはとてもイケメンな上、頭もよく運動神経も抜群、誰にでも優しい為、エイリーン同様ファンクラブがあります。会員のほとんどが女性で、会員数はエイリーンよりも多いのだとか…







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