生徒会に入ることになりました
本日2回目の投稿です!
「さて、随分長く話し込んじゃったわね。そろそろ戻らないとヤバいんじゃない?」
フィーリップ様の言葉に私は慌てて時計をみる。いけない!1時間以上も話し込んじゃった!
「フィーリップ様、あなたと話せてよかったわ。ありがとう!とにかく私は急いで戻るわね。それじゃあ、また」
私は急いでブローチを付けた場所でもある3階のトイレに向かう。途中私を必死に探すカルロ様と護衛騎士の姿が目に付いた。
どうしよう!どうしよう!
きっとトイレに居ないのがばれたんだわ。こうなったら仕方ない。私はトイレに戻るのを諦め、図書室へと向かった。図書室の最も人目に付かない一番奥へと向かい、ブローチを外した。
私は何食わぬ顔で、図書室を出ようとしたとき、司書に声をかけられた。
「エイリーン様、図書室にいらしたのですか?カルロ殿下が探していらしていましたよ。ここで少しお待ちください。今殿下を呼んできますので」
そう言うと、司書は走って行ってしまった。まずいわ!どうしましょう。とにかく、奥で本を読んでいたら、寝てしまったということにしよう。
しばらくすると、カルロ様と司書が戻ってきた。
「エイリーン、どこに行っていたんだい?随分探したんだよ」
カルロ様に思いっきり抱きしめられる。
「図書館の奥で本を読んでいたの。でも途中で寝てしまったみたいで。心配かけてごめんなさい」
私はカルロ様の目をしっかり見て言った。目、泳いでないよね。
「そうだったんだ。でもおかしいな?図書室はくまなく探したんだけれど…本当に図書室に居たのかい?」
ヤバい、嘘がばれる。でももう後には引けないわ。
「本当にずっと居ましたわ。奥の方に居たので、本棚で見えなかったのかもしれないわね」
「ふ~ん…」
明らかに不満げなカルロ様!変な汗が出てくる…
「まあ、今日はそう言うことにしておいてあげる。じゃあエイリーン、帰ろうか!」
まだ不満げではあったが、今日は見逃してもらえそうだ。そう言えば、エイドリアンの指示であちこちに映像型魔道具が設置されているのよね。もしかして、私の嘘…バレてる?とにかく、今まで以上に慎重に行動しないとね。
次の日、お昼休みにトイレに行くふりをして図書室へ行こうとしたのだが、リリーに捕まってしまった。
「トイレなら私も一緒に行くわ!」
一緒に付いてきたリリーは、トイレの外で待っているとのこと。仕方ない、トイレに入るとすぐにブローチを付け、急いで図書室へと向かった。
早速指定された場所に行き、本をどけると“あった!”少し大きめの袋に入ったものが!本当はすぐに中を確認したいが、早く戻らないとまた怪しまれるわ。私はとりあえずカバンにしまい、すぐにリリーの元へと戻る。
一度トイレに入り、ブローチを外す。ちなみにカルロ様とフェルアンド殿下は生徒会の集まりで、今日もいない。
「エイリーン様、随分遅かったわね。」
トイレの前で待っていたリリーが不満げな声をあげる。どうやらカルロ様、リリーをも味方に付けて私を監視しようとしているようだ。いつもは犬猿の仲なのに、こんな時だけ変なチームワークを発揮する。
「ちょっとお腹が痛くてね。ごめんねリリー。さっ、お昼に行きましょう」
今日は食堂で2人並んで食事をとり、早めに教室に戻った。教室には他の令嬢もいて、みんなで楽しくおしゃべりをする。
2年になってから、クラスの令嬢とも仲良くなり、よくしゃべるようになった。やっぱり友達は多い方がいいものね。
その時だった!
「ちょっとエイリーン!!!」
大声で名前を呼ばれた私は、声の方を向く。そこには鬼の形相をしたフィーリップ様が…
「あなた昨日エイドリアン様に婚約者がいるなんて言わなかったわよね!!私さっき初めてエイドリアン様を見つけて、嬉しくてつい気持ちを伝えたの!そしたら婚約者がいるって言うじゃない!一体どうなっているのよ!」
すごい剣幕で一気に話すフィーリップ様。周りもかなり騒めいている。これはまずい!
私は怒り狂うフィーリップ様の手を取り、とりあえず人目のつかない裏庭へと向かった。
「ちょっと、フィーリップ様!落ち着いて!」
私は必死にフィーリップ様をなだめようとする。
「これが落ち着いていられますか!女嫌いのエイドリアン様なら、私を受け入れてくれると思ったのに!まさか婚約者がいるなんて!」
え~~~~!たとえエイドリアンが漫画と同じように女嫌いだったとしても、男性には手を出さないのでは?ていうか、どれだけポジティブ思考なの?
「もうエイリーンには協力しないわ!あなただけ推しと幸せになるなんて許せない!」
鼻息を荒くて怒るフィーリップ様。それはマズイ!何とかしなくては!
「お言葉ですがフィーリップ様。私たちは、推しの幸せを一番に考えるものではないの?たとえ自分が傷ついても、推しの為なら何でもやる。それが推しをこよなく愛する私たちの努めでしょ!私だってカルロ様の為なら、今ここで命を差し出してもいいと思っているわ!」
私は真剣にフィーリップ様に向かって叫んだ。
しばらく考え込む、フィーリップ様。
「…そうよね。私本物のエイドリアン様を見て、つい欲が出てしまったんだわ。そうよ、エイドリアン様の幸せこそが私の幸せ!大切な気持ちを思い出させてくれてありがとう、エイリーン」
「フィーリップ様!」
同士よ!推しを守るため、ともに頑張ろう!そんな思いを込めて、つい私はフィーリップ様の両手を握りしめてしまった。きっとそれがいけなかったんだろう…
「エイリーーン!何をしているんだ!!」
物凄い勢いで走ってくるカルロ様。カルロ様は有無も言わさず私たちを引き離す。
「フィーリップ、エイリーンには近づくなと言ったよね!これ以上エイリーンに近づくと、カルデゥース侯爵家に抗議文を出させてもらうよ!」
「カルロ様!いくら何でもそれは…」
「エイリーン、君も君だよ!僕という婚約者がいながら、他の男性と手を握り合うなんて!いつからそんなふしだらな女性になったんだい?」
手を握っただけでふしだらだなんて、大体フィーリップ様の中身は女の子なのに…
「カルロ殿下、申し訳ございません、金輪際エイリーン嬢には近づかないようにいたします。それでは私はこれで」
フィーリップ様は一礼すると去って行った。
「カルロ様、ごめんなさい!私たち変な関係じゃないのよ!本当よ!第一フィーリップ様はエイドリアンが好きなんだし」
「そうらしいね。食堂でみんなが見ている前でエイドリアンに告白したって、さっき聞いたよ。でもね、君はいずれ王妃になるんだ。もうちょっと考えて行動してほしい」
確かにそうよね。私、軽率だったわ。
「カルロ様、ごめんなさい!今度から気を付けるわ」
「わかってくれたらいいんだよ!さあ、教室に戻ろう」
カルロ様に手を引かれて、教室に戻る。それにしても、どうしてフィーリップ様は男なのかしら。そもそも女だったら、こんなに苦労しなかったのに!そんなことを考えているうちに、午後の授業は終わった。
私はフィーリップ様がくれた袋の中身が気になり、急いで帰りの馬車へと向かう。
「エイリーン、待って。大事な話があるんだ。生徒会室に来てくれるかな」
カルロ様に呼び止められた。生徒会室ですって?私何かしたかしら。もしかして、昼間のフィーリップ様の事?私はドキドキしながら、生徒会室に向かう。
生徒会室には、フェルナンド殿下とリリーの姿もあった。
「実はね。生徒会を一緒にやってくれるメンバーを探しているんだ。そこでエイリーン、君にも生徒会に入ってもらいたい。君は成績も優秀だし、人望もある。ピッタリだろ?」
カルロ様はにっこり笑ってそう言った。それは困るわ。生徒会に入ったら忙しくて、魔石の開発が思うように出来ないじゃない!ここは何とか断らないと!
「私よりエイドリアンの方が、向いているのではなくて?そうよ、エイドリアンに聞いてみてはいかが?」
「エイドリアンにも声をかけたんだけれど、騎士団の方が忙しいみたいでね。断られたんだよ!エイリーンは今王妃教育も休んでいるし、問題ないだろ?」
うっ、エイドリアンめ。断っちゃったのか。
「私も生徒会に入ったのよ。ねえ、エイリーン様、一緒にやりましょうよ!きっと楽しいわよ」
さらにリリーにも誘われる。どうしよう…
「エイリーン、それとも何か出来ない理由でもあるのかい?」
カルロ様、笑っているけれど目が怖い…
これで断ったらまずいやつよね。
「わかったわ!みんなの足を引っ張っちゃうかもしれないけれど、私やるわ」
「やった!じゃあ早速今日からよろしくね」
カルロ様は、それはそれは美しいほほ笑みを見せた。まあ、カルロ様と一緒に過ごせる時間が増えるんだから、それはそれで幸せよね。
こうなったら魔石の開発も生徒会の仕事も、どっちもこなして見せるわ!頑張れ私!
~カルロ様と護衛騎士の会話~
「カルロ殿下、申し訳ございません。エイリーン様の行方が分からなくなりました」
「なんだって!それはどういうことだ」
「それが、3階のトイレに入ったところまでは確認できたのですが…それ以降の足取りがわからなくなってしまって。女性職員にトイレの中を確認してもらったのですが、エイリーン様の姿が見当たらないのです」
「お前たち!しっかり護衛していたのではないのか?何をしているんだ!とにかく探すぞ!」
「「「はっ」」」
こうしてエイリーン捜索が始まりました。カルロ様と護衛騎士によって徹底的に探されたのですが、エイリーンは見つからず…そんな時、エイリーンが現れたので、カルロ様は不振に思ったようです。
ただし、カルロ様、映像型魔道具の存在をすっかり忘れていたので、映像を確認することはありませんでした。
~エイリーン行方不明事件の次の日、カルロ様・リリー・フェルナンド殿下の会話~
カルロ「昨日エイリーンが一時行方不明になったんだ」
リリー「なんですって!それでエイリーン様は?」
カルロ「見つかったよ。図書室に居たと本人は言っているが、どうも怪しくてね。ニッチェル嬢、悪いがエイリーンを少し見張っていてくれないか?また行方不明にでもなったら大変だから」
リリー「わかったわ。任せて」
ここでカルロ様、リリーを味方に付けることに成功。
フェルナンド「そうだ、それならばエイリーン嬢を生徒会に入れてしまえば、よりエイリーン嬢を監視することが出来るよ、兄上。ちょうど生徒会の人間を募集するところだったし。もちろん、リリーも入ってくれるよね」
リリー「エイリーン様が入るなら…」
フェルナンド「なら決まりだな!」
カルロ「確かにエイリーンを生徒会に入れれば、一緒に居られる時間も長くなるし、監視も出来る。フェルナンド、ナイスアイデアだ。早速今日の放課後、エイリーンを生徒会に加入させよう」
こうして、エイリーンは生徒会に入れられることになったのである。




