アレクサンドル王国に帰ってきました
カルロ様にプレゼントを渡した翌日、いよいよ帰国の日だ。
国王陛下、王妃様、ライリー様はもちろん、エレノア様やエマ様もお見送りに来てくれている。
私はエマ様にこっそり呼ばれた。
「エイリーンお姉ちゃん、色々ありがとう。今度会うときにはきっとライリーの婚約者になっているから、だからまた絶対遊びに来てね」
にっこり笑ったエマ様。とっても可愛いわ!
「それにしてもメルシアとエイドリアンは何をしているのかしら?」
「しばらく会えなくなるのだから仕方ないわよ、いつものことなんだから、もう少し待ってあげましょう」
王妃様の言葉にエレノア様がすかさずフォローする。しばらくすると、2人がやって来た。メルシアお姉さまは泣きはらしたのか、目が真っ赤だ。
「やっぱり私もアレクサンドル王国に行くわ!だって、またエイドリアンにしばらく会えないなんて、耐えられないわ!2年後には嫁ぐんだから、アレクサンドル王国に慣れないといけないでしょ」
そう言うと、メルシアお姉さまは公爵家の馬車へと乗り込もうとする。
「いい加減にしなさい。メルシア!あなたがあんまりうるさいから、来年あなたが学院を卒業したら、アレクサンドル王国に花嫁修業という名目で行くことになっているでしょ。それに半期休みにはアレクサンドル王国に遊びに行くことだってできるのだし!毎回同じやり取りをさせるのはやめなさい!」
シュメリー王国はアレクサンドル王国より、学院に行く期間が1年長い。そのため、メルシアお姉さまの卒業は来年なのだ。
王妃様の言葉にシュンとするお姉さま。それにしても、毎回このやり取りをしているのね。そう言えば、アレクサンドル王国に来た時も、いつも「私はこのままアレクサンドル王国に残るわ~」って言って、侍従の人を困らせているわね。
「メルシア、俺だってメルシアに会えないのはとても寂しいよ。でも俺たちはこのブレスレットで繋がっているだろう?」
そう、メルシアお姉さまがエイドリアンの為に作ったブレスレットだ。お姉さまもちゃんとエイドリアンに渡せたのね。
「そうね、ごめんなさい。私いっぱい手紙を書くわ。だからエイドリアンも書いてね」
「もちろんだよ!」
エイドリアンはメルシアお姉さまをギューッと抱きしめると、馬車へと乗り込んだ。私とカルロ様も、馬車へと乗り込む。
もちろん、行きと同じ様に、私は王宮の馬車だ。
私たちは窓を開けて、みんなに手を振る。シュメリー王国のみんなも手を振り返してくれている。
「みなさん、ありがとう!また必ず遊びに来ます!それまでお元気で!」
私は窓から叫んだ。
メルシアお姉さまはじめ、シュメリー王国の皆には本当に良くしてくれたわ。今回の旅は、本当に有意義だった。
「エイリーン、シュメリー王国はとても素敵な国だったね。またいつか2人で来ようね。新婚旅行で!」
カルロ様は、それはそれは嬉しそうにそう言った。そう言えば私、行きの馬車の中で新婚旅行の話をしたんだった。カルロ様ったら、覚えていたのね…恥ずかしいわ…
でもいつか、またこの国に来れたらいいな!そのためには、何が何でも生き残らないとね。そう思いながら、馬車に揺られていく。
基本的に行きと同じ道を通って帰る。宿泊施設も基本的に一緒だ。行きは全くと言っていいほど、食事が取れなかった。そのため、帰りはこれでもかというくらい郷土料理を堪能した。エイドリアンはどこか寂しそうな顔をしている。やっぱり最愛の婚約者と、またしばらく会えないのは辛いのだろう。
そうこうしているうちに、あっという間に5日が過ぎ、懐かしいアレクサンドル王国の王都へと戻ってきた。
公爵邸には、使用人一同とお父様、お母様が外で待っていてくれていた。
「お父様、お母様、みんな、ただいま」
私は馬車を降りると、お母様に抱き付いた。
「エイリーン、お帰り!顔色もすっかり良くなって安心したわ。シュメリー王国はどうだった?メルシアちゃんは元気にしていた?」
「とっても素敵だったわ。特に海が本当に奇麗だったのよ。メルシアお姉さまは相変わらずとっても元気だったわ。私、メルシアお姉さまのおかげで元気になったのよ!メルシアお姉さまの家族もとっても親切にしてくれたわ」
私の話を嬉しそうに聞くお父様とお母様。
「そうか!それはよかった。早速シュメリー王国にお礼の手紙を書かないとな」
お父様がそう言った。
「エイドリアンもカルロ殿下もお帰りなさい。カルロ殿下、エイリーンを家まで送ってくれてありがとうございます」
お母様がカルロ殿下に頭を下げた。
「そんなの、当然のことです。エイリーン、僕は王宮に戻るね」
カルロ様は、私のおでこにキスをして、馬車へと乗り込んでいった。
私はカルロ様に手をふる。この1ヶ月、ずっとカルロ様と一緒だった。そのせいか、なんだか寂しいわ。でも、エイドリアンはもっと寂しいわよね。
私はエイドリアンの方をそっと見た。エイドリアンはメルシアお姉さまからもらったブレスレットをじっと見つめている。きっと、メルシアお姉さまの事を考えているのだろう。
「エイドリアンもありがとう。エイドリアンが今回誘ってくれたから、私はシュメリー王国に行けたのよ。本当に感謝しているわ!」
私の言葉にエイドリアンも優しく微笑む。
「さあ、家に入ろう!2人とも疲れただろう、今日はゆっくり休むといい」
お父様の言葉で、みんな家の中に入った。
夕食の後のティータイムでは、シュメリー王国での出来事をエイドリアンと2人で、お父様とお母様に話した。もちろん、買ってきたプレゼントも渡した!
お母様には真珠のネックレス、お父様には真珠のタイピンだ。久しぶりの家族団らん。その日は話題が尽きず、夜遅くまで家族で過ごした。
次の日、私はニッチェル伯爵家へ向かった。もちろん、リリーに会うためだ。
「エイリーン様、久しぶりです!」
リリーは私が訪ねてくると、思いっきり抱き付いてきた。相変わらず人懐っこい。
「今日は天気がいいからお庭でお茶をしましょう」
リリーはそう言うと、庭に案内してくれた。メイドがお茶を入れてくれる。最初はメイドや護衛騎士を嫌がっていたが、随分なれたようだ。
「エイリーン様、シュメリー王国はどうでした?私も行きたかったわ」
リリーは頬を膨らます。
「とても素敵だったわ。海がとても奇麗でね。お魚料理も美味しいのよ。そうだわ、これはリリーへのお土産よ」
私はリリーにお土産の入った袋を渡した。
「まあ、開けてもいい?」
嬉しそうに袋を開けるリリー
「この奇麗な粒は何?光の加減で色々な色に光るのね。とても奇麗だわ」
「それは真珠よ。海で取れるの。こっちがイヤリングで、こっちがネックレスよ」
「真珠?初めて聞きましたけれど、とても奇麗ね!エイリーン様ありがとう。早速付けてみるわ」
リリーが嬉しそうに真珠のイヤリングとネックレスを付けた。とてもよく似合っている。
その後私たちは、この1ヶ月お互いどのように過ごしたのかを話した。
カルロ様に仕事を押し付けられたフェルナンド殿下は、毎日忙しくリリーはあまり構ってもらえなかったらしい。
「本当にカルロ殿下には、恨みしかないわ!!」
そう言ってプンプン怒るリリー。こうやって怒る姿を見るのも久しぶりね。
「そうだわ、リリー、明日予定ある?」
「明日ですか?もちろん空いているわよ」
「ならちょっと付き合ってほしい場所があるの、良いかしら?」
「もちろん!」
「よかった!じゃあ明日また迎えに来るわね。出来るだけ暗めの服を着て来てね」
私の言葉で、何かを察したリリー。
「わかったわ」というと、少し寂しそうな顔をした。
「じゃあ、また明日ね」
私はリリーに別れを告げ、伯爵家を後にしたのだった。
エイリーンがみんなの為に選んだものは真珠でした。シュメリー王国の街で真珠を見つけ、「コレだ」と思ったエイリーンは、たくさんの真珠を買い込んだとか…あとはシュメリー王国のお菓子や置物なども買ったようです。