カルロ様に何かプレゼントを贈りたいです
本日2回目の更新です!
何とかストックできました!
シュメリー王国に来て2週間が過ぎた。あれからエマ様とライリー様は、相変わらず口喧嘩をしているが、以前より明らかにいい雰囲気だ。時折2人で楽しそうにおしゃべりしている姿も見かけるようになった。
王妃様やエレノア様は「ライリーとエマが急に仲良くなったわ!」と、とても嬉しそうにしている。このままいけば、ライリー様の婚約者はエマ様で確定かな!
そして私は今、メルシアお姉さまの元へ向かっている。そう、ある相談をするためにだ。
「メルシアお姉さま、ちょっと相談したいことがあるのですが、今いいかしら?」
中庭でお茶を飲みながら本を読んでいたメルシアお姉さまに声をかける。
「あらエイリーン。どうしたの?」
私はメルシアお姉さまの向かいに座った。
「私の友達のマリアの件で、今回カルロ様やエイドリアンには本当に迷惑をかけちゃったの。だから2人に何かお礼がしたくて。ねえ、何がいいかしら?」
「う~ん、そうね!あの2人ならきっと何でも喜びそうだけれど。そうだ、今から街に出てみない?何か良いものが売っているかもしれないわ」
メルシアお姉さまはすぐにメイドに馬車の手配を指示した。本当に行動力が早くてびっくりするわ。
さすがにドレスで街に出ることは出来ないので、シンプルなワンピースに着替える。2人で馬車に乗り込み、早速王都の街へと向かった。
まず最初に入ったのは、可愛い雑貨がたくさん売っているお店。う~ん、イマイチ2人に似合いそうなものはないな!
その後も何件か見て回るが、コレだ!という物は見つからなかった。
しばらく街を歩いていると、ショーウィンドーに飾られた可愛らしい珊瑚のブレスレットが目に付く。
「ねえ、メルシアお姉さま、このお店見てみたいわ」
私の言葉に、メルシアお姉さまもうなずく。2人でお店の中に入ると、たくさんの珊瑚のアクセサリーが並んでいた。どうやら、珊瑚の専門店の様だ。
「珊瑚はね、シュメリー王国では付けている人に幸運をもたらすと言われているのよ」
そうなのね。そう言えば日本でも珊瑚は人気のパワーストーンだったような。確か魔除けの効果があったような気がするわ。
もうすぐ魔王も復活する予定だし、よし!珊瑚のアクセサリーを贈ろう!珊瑚の色は赤が良いわね。だって赤は私の髪の色だもの。
「メルシアお姉さま、私珊瑚のアクセサリーを贈ることにするわ。もちろん、色は赤でね」
「それは素敵ね。じゃあ、どれにする?」
私はお店の中の商品をくまなく見て回る。う~ん、これと言った物が見つからないわ…
考え込んでいると、お店の人が声をかけて来た。
「何かお探しですか?」
「実は大切な人にプレゼントを贈りたいのですが、これと言った物が見つからなくて…」
私は正直にお店の人に話した。
「それでしたら、ご自分で作ってみてはいかがですか?うちは裏の工房で、手作りアクセサリーも作れるんですよ」
なるほど、それは良いわね。
「それ素敵ね」
メルシアお姉さまも食いつく。
「ぜひ作らせていただけたら嬉しいです」
「では今から工房に案内しますね」
裏の工房へと案内された私たち。工房にはいくつかの机とイスが並んでいて、アクセサリーを作るための道具も置かれていた。私たちは案内されたイスに座った。
「ねえ、エイリーン。エイドリアンのプレゼントなんだけれど、私に作らせてくれないかしら?私たちまた離れ離れになるでしょ。だから私も何か贈りたいなって思ったの」
確かに明後日には私たちは帰国する。そうなると、また2人はしばらく離れ離れになってしまうものね。
「わかったわ!じゃあ、エイドリアンのプレゼントはメルシアお姉さまが作って渡してあげて」
「ありがとう!エイリーン!なんだか楽しくなってきたわね」
しばらくするとお店の人がやって来た。
「お待たせしました。まずはどのアクセサリーになさいますか?」
そうね、ネックレスやブレスレットなら毎日付けてもらえそうね。
「私はブレスレットにするわ」
メルシアお姉さまが答える。ブレスレットか、なら私もブレスレットにしよう。
「私もブレスレットでお願いします」
「お2人ともブレスレットですね。では次に珊瑚を選んでください。珊瑚は赤・ピンク・オレンジ・白・青などがありますよ」
珊瑚って赤のイメージがあったけれど、結構いろいろな色があるのね。
「私はオレンジと赤が良いわ。赤はエイドリアンの髪の色、オレンジは私の瞳の色ですもの。“離れていてもずっと一緒よ”というメッセージを込めてね」
メルシアお姉さまは、頬を赤く染めながら赤とオレンジの珊瑚を手に取った。2人の色か。素敵ね。よし、私もそうしよう。
「じゃあ、私もカルロ様の瞳の色と同じ青と、私の髪の色の赤にするわ。後アクセントに白も使おうかしら」
「次はデザインなのですが、どんな感じにしますか?」
お店の人が色々なタイプのブレスレットを見本に持ってきてくれた。あっ、これ前世で付けていたパワーストーンのブレスレットによく似ているわ。
私は珊瑚を数珠状に繋げていくタイプのブレスレットを作ることにした。メルシアお姉さまも同じタイプのものを作るみたいだ。
早速作り始める、数珠状に繋げるだけだから簡単かと思ったけれど、色の組み合わせが結構難しいわね。そう思いながらも、どんどん繋げていく。
隣ではメルシアお姉さまも、「あーでもない、こーでもない」とブツブツ言いながら作っている。その表情は真剣そのもの。珊瑚を繋ぎ合わせ、最後の留め具部分は、お店の人に手伝ってもらい、何とか完成した。
完成したブレスレットは可愛らしく梱包してもらった。カルロ様気にいってくれるかしら!メルシアお姉さまも同じようなことを考えているのか、ニヤニヤしている。
意外と制作に時間がかかってしまったようで、もう日が暮れかかっていた。私たち2人は急いで馬車に乗り込み、王宮へと戻った。
食事の時、カルロ様とエイドリアンに今日はどこに行っていたの?と聞かれたが「内緒!」と答えておいた。せっかくならサプライズで渡したいものね。
次の日、私は早速カルロ様を呼び出した。
「カルロ様、明日アレクサンドル王国に帰るでしょ?だから最後にもう一度海を見たいんだけれど、付き合ってくる?」
「もちろんだよ!早速行こう!メルシア王女やライリーに見つかると面倒だ!」
カルロ様は私の腕を掴んで、アレクサンドル王国専用の馬車へと乗り込む。行先はもちろん、シュメリー王国に着いた初日にメルシアお姉さまと行った、王族専用の海だ!
「本当にこの海はキレイね。見ているだけで、心が癒されるわ…」
私のつぶやきに、カルロ様もうなずく。もしかすると、もう二度とこの場所には来れないかもしれない。来年の今頃には、魔王との戦いが終わった頃。もしかしたら私はこの世にいないかもしれないわ。
もちろん、私も生き残るために最善を尽くすつもりだけれど…
「カルロ様、知っている?シュメリー王国では、海の向こうに死者の国があるんですって。もし私がカルロ様より先に亡くなったら、海に会いに来てくれる?」
私の言葉に一瞬大きく目を見開くカルロ様。
「エイリーン、そんなことは言わないでおくれ!僕より先に死ぬなんて」
物凄く悲しそうな顔をするカルロ様。いけないわ!つい海を見ていたら、ネガティブな言葉を言ってしまった。
「ごめんなさい、カルロ様!私変なことを言ってしまったわね!今の言葉は忘れて!」
私の言葉に、まだ少し寂しそうな顔をしているカルロ様。私、カルロ様を不安にさせるためにここに来たわけじゃないのに、何しているのかしら…
「そうだ、カルロ様、実はね。カルロ様にプレゼントがあるのよ。マリアこのことで随分迷惑をかけたでしょ。だから、そのお礼も込めてね」
私は、昨日メルシアお姉さまと一緒に作った珊瑚のブレスレットをカルロ様に渡した。
「エイリーンから?それは嬉しいな。開けてもいいかい?」
「ええ、もちろんよ」
嬉しそうに開けるカルロ様。
「これは、珊瑚のブレスレットだね!」
「そうよ、昨日メルシアお姉さまと一緒に作りに行ってきたの。赤は私の髪の色、青はカルロ様の瞳の色よ。「いつでもどこにいても、私たちは一緒よ」という意味も込めて、私たちの色をブレスレットにしたの」
メルシアお姉さまの言葉をマネした部分はあるけれど、その点は伏せておこう。
「珊瑚はね、付けている人を幸せにしてくれるんだって。だから、カルロ様も外さずずっと付けていてくれたら嬉しいな」
「ありがとう、エイリーン。もちろん、ずっと付けるよ」
そう言うと、カルロ様は私を抱きしめてくれた。
私はそんなカルロ様を、押しのけ腕から抜け出す。
そして、カルロ様をまっすぐ見つめた。
「カルロ様、いつも私の側に居て、私を守ってくれてありがとう。いつも私を信じてくれてありがとう!辛い時、ずっと側にいてくれてありがとう。私は昔も今もこれからも、ずっとカルロ様が大好きです!これからもずっとずっと私の側に居てください!」
エマ様と話していて感じた事。そう、私は最近カルロ様に自分の気持ちを伝えていなかった。昔はあんなに毎日気持ちを伝えていたのに。だから、今回今の自分の気持ちをカルロ様に伝えようと思っていたのだ。
でも、いざ言葉にすると、やっぱり恥ずかしいものね。昔の私ってある意味本当にすごいわ!
私は急に恥ずかしくなって、うつむいてしまう。
「エイリーン、ありがとう!ねえ、僕の方を向いて」
私は恐る恐るカルロ様の方を向く。すると、カルロ様の顔がどんどん近づいてきて…
唇に柔らかい感触が!今カルロ様と…キ、キスしている!
「本当は結婚式までとっておこうと思ってたんだけれど。ごめんね、我慢できなくて!エイリーン、僕の方こそどれだけエイリーンに助けられたか。僕もエイリーンが大好きだよ」
カルロ様はそう言うと、私を思いっきり抱きしめた。私も抱きしめ返す。波の音が心地いい。きっと周りには護衛騎士たちが控えているだろう。
でも今はそんなこと気にしていられない。私はただ、カルロ様の温もりを感じながら、幸せをしっかり噛みしめたのだった。
エイドリアン&メルシアの場合
「エイドリアン、明日帰国するでしょ!だからね、これあげる」
「ありがとうメルシア、開けてもいいかい?」
うなずくメルシア
「これは珊瑚のブレスレットだね」
「そうよ、昨日エイリーンと一緒に作りに行ってきたの!本当はエイリーンがエイドリアンに贈る予定だったんだけれど、どうしても私が贈りたくて、エイリーンにお願いして代わってもらったの」
「赤とオレンジ!俺とメルシアの色だ!」
「そうよ!離れていてもずっと一緒だよって言う気持ちを込めているの!」
顔を赤くしてうつむくメルシア
そんなメルシアを抱き締めるエイドリアン
「ありがとうメルシア!正直またしばらく君に会えないのは辛い!でもこのブレスレットが、俺たちを繋いでくれてると思うと耐えられそうだ!」
「エイドリアン!」
「メルシア!どんなに離れていても、ずっと君を愛しているよ!」
「エイドリアン!私も!私も愛しているわ!」
しばらく抱き合う2人!
※エイリーンがカルロ様にブレスレットを渡している時と、同時刻の出来事です!