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シュメリー王国の公爵令嬢は素直じゃないです

シュメリー王国に到着したその日は、国王陛下を始め今回紹介してくれた王族たちと私たちで、簡単な宴が行われた。


ライリー様は私とエイドリアンにべったりだ。元々はエイドリアンにかなり懐いていたライリー様。そんなエイドリアンにそっくりな私にも、必然的に懐いたらしい。


今回の宴もたくさんの魚料理が並ぶ。あら、あれ前世で見覚えがあるわ。もしかしてお刺身?


私が見つけたのは、奇麗に裁かれたお刺身だ。そばにはお醤油によく似た調味料も置かれている。


早速食べてみる。

美味しい!本当にお刺身だわ。この調味料もお醤油によく似ているし。欲を言えばワサビがあるともっと良かったのにね。


「エイリーン、お魚好きなの?僕が食べさせてあげる!はい、アーンして」


隣で食事をしていたライリー様が、フォークに刺した刺身を差し出してきた。私は差し出された刺身をパクリと食べる。


「ライリー様が食べさせてくれた魚は特別に美味しいわ。ありがとうございます。ライリー様!」


私の言葉に嬉しそうなライリー様。「もっと食べて!こっちも美味しいよ」と次々と私の口に魚を放り込むライリー様。


そんな様子に、ものすごく不満げな顔で見ているカルロ様の視線が刺さるが、気づかないふりをしておこう。


「ライリー様、ありがとうございます。もうお腹いっぱいで食べられませんわ」


「じゃあ今度はエイリーンが僕に食べさせてよ」


ライリー様は嬉しそうに口を開く。

可愛い!本当に可愛いわね!

私はライリー様のリクエストに答え、食べやすい大きさに切った魚を口へと運んだ。


「うん、おいしい!エイリーンが食べさせてくれた魚は格別に美味しいね」


嬉しそうに笑うライリー様。本当に天使みたい!


楽しい宴は終わり、私たちはそれぞれ客間に案内された。さすが王宮の客間、めちゃくちゃ広い!でもこの部屋、とってもメルヘンね。ベッドはディズニープリンセスが使うような、可愛らしい造り。天盤やカーテンまで付いている。


それに部屋自体ピンクを基調としている。ちなみにフィーサー家の私の部屋は、白を基調にしたシックな造りだ。さすがに落ち着かないわね。


先に部屋で待機していたアンナも苦笑いしている。そう思いながらも、湯あみをし、ベッドに入った。長旅で疲れていたこともあり、なんだかんだでぐっすり眠った私。意外と平気なものね。


翌日、メルシアお姉さまたちと朝食を取る。


「今日は第一王女でもある私の姉と、姉の姪が遊びに来ることになっているのよ」

メルシアお姉さまはそう言うと、なぜか私の方へ近づいてきた。


「実はね、今日来る予定の姉の姪はライリーの一番有力視されている婚約者候補なの。でもなぜか2人は仲が良くなくてね…」


メルシアお姉さまがこっそりと教えてくれた。そうか、ライリー様の婚約者候補か。どんな子なんだろう。ちょっと楽しみね。


食事が終わり、ティータイムを楽しんでいた時、メイドが呼びに来た。どうやら第一王女とその姪が到着したようだ。私たちは2人が待つ応接室へと向かう。


部屋に入るとそこには、水色の髪を腰まで延ばした美しい女性と、濃い青色の髪にピンクの瞳をした可愛らしい女の子が待っていた。


「カルロ殿下、エイドリアン。お久しぶりね。あなたがエイリーンちゃんね。初めまして。私は第一王女でメルシアの姉の、エレノアよ。この子は主人の姉の子供のエマ。仲良くしてね」


エレノア様が私に挨拶をする。私も挨拶をしようとした時



「私は公爵令嬢のエマよ。身分がとっても高いんだから。私の様な身分の高い子と仲良く出来るなんて、光栄と思いなさい!」


エマ様が得意げに話す。それにしても、何なのかしら。この子は…


「ちょっと、エマ。エイリーンはアレクサンドル王国の公爵令嬢で、王太子の婚約者よ!身分だけならあなたより高いくらいなんだから。失礼なことを言うのはやめなさい」


すかさずメルシアお姉さまが反撃する。とにかく私も挨拶しなきゃね。


「初めまして。エレノア様、エマ様。私はエイリーン・フィーサーと申します。どうぞ仲良くしてくださいませ」


王妃教育で培った渾身のカーテシーを決める。


「あなたも公爵令嬢なの!なら普通に仲良くしてあげるわ!よろしくね」


あくまでも上から目線なのね…。顔は可愛いのに、勿体ないわね。

エイドリアンやカルロ様も若干引いているし…


その時、ドアがバンっと開いた。


「エイリーンみーつけた!ねえ、一緒に遊ぼって、何でエマがこんなところにいるんだよ」


嬉しそうに入ってきたライリー様だったが、エマ様を見つけるとあからさまに嫌そうな顔をする。


「おばさまに連れられて仕方なく来たのよ!あなたこそ何でここにいるのよ!ノックもせず入ってくるなんて、本当にマナーがなっていないわね」


2人はにらみ合っている。そう言えばエマ様は、ライリー様の婚約者候補って言っていたな。確かにこの雰囲気だと、2人の関係はあまりうまくいっていないのかしら?


「エイリーン、エマなんか放っておいて一緒に遊ぼう。エイドリアンも一緒に行こうよ!」


ライリー様が私とエイドリアンの手を掴んで、引っ張っていこうとする。

私は何気なくエマ様を見た。なんだか寂しそうな顔をしているような気がする。

もしかして…


「じゃあみんなで遊びましょう!大勢の方が楽しいわ」


もう少しエマ様を観察してみたい、そう思って提案してみる。

私の言葉に嫌そうな顔をするライリー様だったが、エイドリアンやメルシアお姉さまも賛同したので、エレノア様を除く6人でお庭に行くことになった。


庭に着くと嬉しそうに「何して遊ぶ?」と聞いて来るライリー様。まだ8歳、無邪気で可愛いわ。


「そうだわ!かくれんぼをしましょう」


私の提案に、ライリー様たちは首をかしげる。シュメリー王国にもかくれんぼは浸透していないのね。


ちなみに、アレクサンドル王国にもかくれんぼは無かったが、私がカルロ様やエイドリアンに教えたことで、少しづつ広まりつつある。


私はかくれんぼのルールを説明した。まずは私が鬼をして、みんなに隠れてもらう。

さてと、そろそろ良いかな?王宮の庭は広いから探すのはきっと大変と思ったけれど、みんな隠れ慣れていないのね。あっという間にみんなを見つけた。


こうして何度もかくれんぼをしていたが、さすがに疲れた。私とメルシアお姉さまとエマ様はお庭でお茶を飲みながら休憩。カルロ様とエイドリアン、ライリー様は木刀を使って打ち合いをしている。


「あれだけ遊んでまだ木刀を振り回しているなんて、ほんと男ってタフよね」

メルシアお姉さまがつぶやく。確かに、元気よね…


ちなみに今はカルロ様とライリー様が打ち合いをしている。カルロ様、8歳相手に結構本気出している。


「エイリーンには悪いけれど、カルロ殿下って大人げないわね。子ども相手にムキになってるわ」

メルシアお姉さまがそうつぶやく。うん!大丈夫よ。私も同じことを思っていたから。


ライリー様はカルロ様に押されながらも、必死に木刀をふるっている。ふとエマ様を見ると、目を半分覆いながらも真剣に見つめていた。


小声ではあるが「ライリー頑張れ」と聞こえる。やっぱりエマ様って…


次の瞬間、ライリー様がバランスを崩し、カルロ様の木刀がライリー様を捉えた。

カルロ様の勝ちだ。


「もう、何やっているのよライリー!情けないわね」

エマ様が叫ぶ。


「うるさい!エマは黙ってろよ」


ライリー様も負けじと叫んでいる。

「何よ、心配してあげてるのに…」


小声でエマ様がつぶやいたのを、私は聞き逃さなかった。


「そろそろ王宮に戻りましょう」


メルシアお姉さまの呼びかけで、みんなが王宮へと戻っていく。


「メルシアお姉さま、エマ様と少しお話しても良いかしら?エマ様もいい?」


「ええ、大丈夫よ。エマも良いわよね?」


「別にいいですわよ」


よし!許可が下りたわ。

私はエマ様の方を向き、気になっていたことを口にする。


「ねえ、エマ様。間違っていたらごめんなさい。もしかしてエマ様は、ライリー様の事好き?」


私の言葉を聞いた瞬間、茹でたこの様に真っ赤になったエマ様。


「わっ私があんなマナーもなっていないような男を、すっ好きな訳ないじゃないの!」

完全に動揺している。間違いなく好きなんだろう。きっと素直になれないタイプね。可愛いわ。


「そう、じゃあ私がライリー様と婚約しても問題ないわよね。だって私も公爵令嬢だもの」


「それはダメよ!絶対ダメ!!」

私の言葉にすぐさま反応するエマ様。


「どうしてダメなのかしら?私もあなたと同じ公爵令嬢よ」


まだ小さな女の子に、これはちょっと意地悪だったかしら?


「だって…だって…あなた私たちよりだいぶ年上でしょ!それに、そうだ!婚約者もいるじゃない!そうよ、あなたには婚約者がいるわ!!だから、ライリーと婚約なんて出来ないわ!!」


凄い勢いで私に詰め寄るエマ様。

あまりの勢いに笑いが込み上げる。


「クスクス、エマ様は本当にライリー様が好きなのね」


「だから、好きじゃないわよ!それに、女は愛された方が幸せになれるってお母様が言っていたわ。もし、万が一私がライリーを好きでも、絶対私からは言わないんだから!」


エマ様は顔を真っ赤にして叫んでいる。

素直じゃないわね!


「そんなこと言っていると、ライリー様を他の女の子に取られてしまうわよ」


私の言葉に目を丸くするエマ様。


「あなたは良いわよね。王太子にめちゃくちゃ好きでいてもらっているもの。あなたには私の気持ちはわからないわ」


エマ様はそう言うと俯いてしまった。


「う~ん、確かにエマ様の言うことも一理あるわね。でも私は婚約する前からカルロ様が大好きだったの!まあ、色々な事情があって婚約したのだけれど、婚約者になってからは毎日毎日カルロ様が大好きという気持ちを伝えたわよ」


そう、それはもう周りがドン引きするくらいにね!


「だって、言葉にしないと相手には伝わらないでしょ。だから本当に毎日の様に伝えたわ」


「あなた、そんなことして恥ずかしくなかったの?」


「確かに恥ずかしいと言えば恥ずかしいわね。周りからもドン引きされていたし。でも好きなものは好きなんだもの。それを伝えない方が私は嫌だったの」


「あなた…変わっているわね」

確かに変わっていると言われればそうかもしれない。私の場合、前世からの推しが婚約者なのだ。愛するなと言う方が無理である。


「エマ様も勇気を出して自分の気持ちをライリー様に伝えてみたらどうかしら?」


「そんなの無理よ。だってライリーは私の事嫌っているもの」


泣きそうな顔をする、エマ様。


と、その時


「エマ、もう帰る時間よ。エイリーンちゃん、エマの相手をしてくれてありがとう」


エレノア様がエマ様を迎えに来たのだ。


「エマ様、またゆっくり遊びましょう」

私の言葉にうなずくエマ様。


エレノア様に手を引かれ、帰っていくエマ様を見て、もう少し素直になってくれたらと思うエイリーンであった。


第一王女のエレノア様に連れられてやって来たエマ様。見た目はめちゃくちゃ可愛いのですが、周りから公爵令嬢としてチヤホヤされて育てられたため、少し我が儘です。


プライドも高めなので、素直になれないタイプ。

そんなエマ様は、ライリー様と同じ8歳です。


※最近色々と忙しく、執筆の時間があまりとれずにいます。1日1回の更新は死守していきますので、これからもどうぞよろしくお願いしますm(_ _"m)



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