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メルシアお姉さまの弟はとても可愛いです

私はメルシアお姉さまに連れられて、王都でも有名な魚料理店へ来た。

お店の中には大きな生簀があり、たくさんの魚が泳いでいる。


前世では魚が大好きだった私。そう言えば、エイリーンとして生まれてからは、魚料理ってあまり食べたことなかったわね。どんな料理が出てくるのかしら?


メルシアお姉さまが王族ということもあり、個室に通された私たち。

しばらくすると料理が運ばれてきた。魚のムニエル、魚のアヒージョ、魚のオーブン焼きなど、これでもかというくらい魚料理が並ぶ。


「さあ、エイリーン食べましょ。とっても美味しいのよ!」


メルシアお姉さまが魚料理を取り分けてくれた。私、食べられるかしら。不安に思いながらも、オーブン焼きを口に含む。


美味しい!ムニエルもアヒージョも何を食べても美味しい。


「メルシアお姉さま、どのお料理もとっても美味しいわ」


「そうでしょ。シュメリー王国はとにかく魚が美味しいのよ。王宮でも色々な魚料理を出す予定だから、いっぱい食べてね」


得意そうに話すメルシアお姉さま。デザートは、海をモチーフにした青色のゼリーだ。味はソーダに近い感じで懐かしい味がした。


アレクサンドル王国にはソーダ味が存在しないから、前世で食べて以来だ。久しぶりにしっかり食事をし、大満足の中王宮へと向かう。


王宮に着くと、カルロ様が飛んできた。後ろにはエイドリアンもいる。


「エイリーン、お帰り!急にメルシア王女に連れられて出かけたから心配したよ」


「心配かけてごめんなさい!メルシアお姉さまに海を見せてもらったの。その後は魚料理をご馳走になったわ。とっても美味しかったのよ」



「そうよ。エイリーンは魚料理が気に入ったようで、残さず全部食べたわ」


メルシアお姉さまの言葉に、カルロ様とエイドリアンが目を丸くする。


「エイリーン、ご飯が食べられるようになったのかい?」


「ええ、メルシアお姉さまのおかげでね」


カルロ様の問いかけに、笑顔で答える。


「良かった!このままエイリーンがご飯を食べなかったらどうしようと、心配していたんだ」


カルロ様は嬉しそうに私を抱きしめる。エイドリアンも安心した顔をしている。


「2人とも心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」


私は2人に微笑みかけると、エイドリアンが頭を撫でてくれた。


「とりあえずみんな揃ったことだし、私の家族を紹介しなきゃね。さっ、中へ入って」


メルシアお姉さまに案内され、王宮の中に入る。やはり王宮だけあって、アレクサンドル王国の王宮に負けず劣らず美しい。


私たちは応接室の様な場所へと案内された。


「ちょっとここで待っていてね」


そう言うと、メルシアお姉さまは出て行ってしまった。


この応接室もとても立派だ。人魚の彫刻まで飾られている。

しばらくすると、メルシアお姉さまが戻ってきた。


「お待たせしてごめんね。紹介するわね。私の父と母、そしてこっちが弟よ。」


メルシアお姉さまの後ろから入ってきたのは、この国の国王陛下と王妃様、そして水色の髪に金の瞳をした7~8歳くらいの少年だ。


「カルロ殿下、エイドリアン、エイリーン嬢、ようこそシュメリー王国へ。遠いところからよく来てくれたね。せっかく来てくれたんだ。ゆっくりして行ってくれ」


国王陛下の挨拶にすかさず反応したのはカルロ様だ。


「お久しぶりです、国王陛下。本日は私まで急遽お世話になり、申し訳ございません。お心遣い、大変感謝いたします」

さすが王太子のカルロ様。他国の国王陛下にも物おじせず、しっかり挨拶しているわ。そんな姿も素敵ね!


「みんなよく来てくれたわね。カルロ殿下とエイリーンちゃんは、王太子就任式以来ね。あの頃は2人とも12歳で、まだとっても可愛らしかったのに、もうこんなに大きくなったのね。いつもアレクサンドル王国では娘がお世話になっていたみたいで、礼を言わせて頂くわ。本当にありがとう」


王妃様も私たちに挨拶をしてくれた。それにしても、王妃様はメルシアお姉さまにそっくりね。髪の色だけでなく、顔もよく似ている。そうだ、私も挨拶をしないとね。


「お久しぶりです。皆様お元気そうで何よりですわ。いつもメルシアお姉さまにお世話になっているのは、私の方です。本当にお姉さまには良くしていただいて感謝しています」


そう、今回の事でも本当にメルシアお姉さまにはお世話になったわ。


「ありがとう、エイリーンちゃん。あの子あんな性格でしょ!みんなに迷惑かけていないか心配していたの!それにしても、改めてみると本当にエイドリアンにそっくりね。双子ってこんなにそっくりなものなのね」


おかしそうに笑う王妃様。どうやら性格もメルシアお姉さまに似ているようだ。


「メルシアには姉が1人いるんだけれど、既に嫁いで今いないのよ。今度紹介するわね。この子はメルシアの弟のライリーよ」


ライリー王子は恥ずかしいのか、王妃様の後ろに隠れている。私は軽くしゃがみ、ライリー王子に話しかけた。


「初めまして、ライリー王子。私はエイドリアンの双子の妹、エイリーン・フィーサーと言います。仲良くしてね」


私が挨拶をすると、クリクリの金色の瞳と目が合った。なんて可愛いの!ソフィア王女も可愛いけれど、また別の可愛さがあるわね。


「エイリーン?髪の色も瞳の色もエイドリアンと一緒だ!本当にそっくりだ!ねえ、エイリーン、僕がお庭を案内してあげる。一緒に行こう!」


ライリー王子はそう言うと私の手を取り、走り出した。


「エイリーン、こっちだよ。早く早く!」


そう言いながら私の手を引くライリー王子。活発なところがやはりメルシアお姉さまとよく似ている。


「ここがお庭だよ!凄いでしょ」


王宮のお庭は水をモチーフにしているのか、大きな噴水がいくつもあり、その周りには美しい花々が咲いている。


「本当に素敵ね」


「そうでしょ、奥にはもっとキレイなお花が咲いているんだよ」


ライリー王子に手を引かれ、さらに奥まで行くと、虹色に光るバラが咲き乱れていた。太陽の光の角度によって、様々な色に変化するバラ。今まで色々なバラを見て来たけれど、ここまで美しいバラは初めてだわ。


「エイリーン、見てこのバラ。シュメリー王国にしか咲かないバラなんだよ」

得意そうにライリー王子が説明してくれる。


「せっかくだからこのバラの前でお茶を飲もうよ。あっちにベンチと机があるんだ。」


ライリー王子が指をさした方を見ると、バラをモチーフにした可愛らしいベンチと机が並んでいた。


ライリー王子が先にベンチに座り、向かいに私が座ろうとしたのだが、「エイリーンは僕の隣だよ」と王子に言われ、隣に座る。


メイドが準備してくれたお茶とお菓子を食べながら、ライリー王子と色々な話をした。王子は今年8歳、今まさに婚約者を探しているのだと言う。


「ねぇ、エイリーンが僕のお嫁さんになってよ。メルシア姉さんがエイドリアンのところにお嫁に行くんだから、代わりにエイリーンがこっちにくれば完璧じゃない?」


何が完璧かよくわからないけれど…私にはカルロ様がいるし、第一歳が離れすぎているわ。


「ライリー王子の婚約者になれたら素敵だけれど、私には婚約者がいるから、残念ながら王子の婚約者にはなれないわ。ごめんなさい」


私は素直に謝る。


「知っているよ。あの隣にいた金髪のお兄ちゃんでしょ。でもあのお兄ちゃんより僕の方がずっとステキだよ」


「私は王子より7歳も年上ですよ。王子が大きくなるころには、私はもうおばさんになっているわ」


自分で言ってみたものの、おばさんは無かったかしら。やっぱりお姉さんくらい?


「僕は年齢なんか気にしないよ。それに僕の事王子じゃなくて、ライリーって呼んで」


上目使いでお願いするライリー王子。やばい!めちゃくちゃ可愛い!


「ライリー様」


ついリクエストに答えてしまった。


「エイリーン大好き」


私が名前を呼ぶと嬉しそうに抱き着いてきたライリー様。なんて可愛いのかしら。つい「私も大好きですわ」と言ってしまった。


「じゃあ僕と結婚してくれる?」

金色の目をウルウルさせて見つけてくる。こんな可愛い顔で見つめられたら、断れないじゃない…


私がどうしようか考えていると、ふいに誰かに腕を引っ張られ、ライリー様と引き離された。


「ライリー王子、エイリーンは僕の婚約者で、いずれアレクサンドル王国の王妃になる事が決まっているんだよ。だから残念だけれど、君とは結婚できないんだ。ごめんね」


カルロ様は私を抱き寄せると、ライリー様に向かってそう言い放った。


「僕だっていずれ王様になるんだ。だから僕と結婚してもエイリーンは王妃になれるよ!エイリーンを放せ」


ライリー王子はそう叫ぶと、カルロ様の向こうスネを蹴り飛ばした。「痛い」と叫び、うずくまるカルロ様。通称、弁慶の泣き所を蹴られたカルロ様。めちゃくちゃ痛そうだ。


「カルロ様、大丈夫ですか?」

私はカルロ様に治癒魔法をかけようとしたのだが…


「エイリーン、今のうちに逃げよう」


ライリー様はそう言うと、私の手を取って走り出す。


「おい、待て」

後ろからカルロ様の叫び声が聞こえる。


「待つわけないだろ!」そう言いながらライリー様は嬉しそうに走る。


と、その時。


「ライリー、いい加減にしなさい」


目の前には怖い顔をしたメルシアお姉さまと、苦笑いのエイドリアンがいる。


「ライリー、お客様になんてことをするの。あれでも一国の王太子なのよ。きちんともてなさなきゃダメでしょ!」


メルシアお姉さま、カルロ様の事「あれでも」呼ばわりですか!


「だってあいつが僕からエイリーンを取ろうとしたんだ」


ライリー様も抗議の声をあげる。


「だからと言って人を蹴っていいと思っているの?カルロ殿下に謝りなさい」


さらに強い口調で怒るメルシアお姉さま。泣きそうになるライリー様。そこに助け舟を出したのはエイドリアンだ。


「まあまあメルシア。ライリーはまだ8歳なんだ。あんまり怒ったら可哀そうだよ。そうだ、ライリー、俺が肩車してやるよ。」


エイドリアンはライリー様を抱き上げ、自分の首の上に乗せた。


「わぁ~、高い高い!」


さっきまで泣きそうだったライリー様も上機嫌だ。やっぱりまだ子供ね。


「エイドリアン、ちょっとかがんで」


エイドリアンに指示を出すライリー様。


「エイリーン、ちょっとこっちに来て」


私は言われるまま、エイドリアンに肩車されたライリー様に近づく。と、次の瞬間。


「ちゅ」


ほっぺたに柔らかい感覚が。そう、ライリー様にキスされたのだ。


「これでエイリーンは僕のものだ」


満足そうなライリー様。固まる私。


「このクソガキ、エイリーンになんてことするんだ!」


隣で怒り狂うカルロ様。

これから約2週間、これは前途多難かもしれないわね…


メルシアお姉さまの弟、ライリー様。どうやらエイリーンを気にいったようです。

カルロ様、また新たなライバル?登場で、少しイライラしているみたい。


それにしてもカルロ様、日に日に残念になっている気がするのですが、気のせいでしょうか…



~もしリリーがこの場に居た時のカルロ様とのやり取り~

(完全な妄想です、スルーしていただいてOK)


「8歳の子供に焼きもち焼くなんて、カルロ殿下はどれだけ器が小さいんですか!」


「君だってソフィアに焼きもち焼いて、よく喧嘩しているだろう。ソフィアはまだ3歳だぞ!恥ずかしくないのか!」


「だってあの子が私からすぐにフェルナンド様を取ろうとするんですよ。私のこと意地悪聖女って呼ぶし!」


「だからって3歳の子供に、生意気王女はないだろう!あの後ソフィア泣いていたぞ!」


「ウソ泣きに決まっているでしょ!すぐに騙されるんだから!」


ソフィア王女と仲良くなろうと試みたリリーだったが、毎回暴言を吐かれるのでもう開き直ったようです。最近ではソフィア王女とよくフェルナンド殿下を巡って激しい火花を散らしているようで…


周りも苦笑いで見守っています。

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