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真実が明らかになりました

本日2回目の投稿です

「う~ん…」

私はゆっくりと目を開く。

見覚えのある天井。

ここは…私の部屋?


私、確か断罪されそうになったところを、エイドリアンが助けてくれて、それで…

マリア、そうだ!マリアはどうなったのかしら。


私は起き上がろうとするが、まだ体が思うように動かない。


「お嬢様!お目覚めになられたのですね」


目に涙を浮かべたアンナに抱きしめられた。泣きはらしたのか、目が真っ赤だ。


「お嬢様、申し訳ございません。私があの日お腹を壊さなければこんなことにならなかったのに!」


アンナは謝りながら泣き続ける。


「アンナのせいじゃないわ。だから気にしないで」


私は出来るだけ笑顔でアンナに伝えた。そう、アンナのせいではない。何もかも気づかず、のほほんと生きていた私のせいだ。


「今奥様を呼んできますね」


そう言うと、アンナは出て行った。しばらくすると、バタバタと走る音が聞こえたと思うと、ドアが「バン」と開いた。


「エイリーン、目覚めたのね。良かったわ!」

お母様は泣きそうな顔で私を思いっきり抱きしめた。お母様にも随分心配かけちゃったわね。


「お母様、私はどれくらい眠っていたの?マリアやリリーはどうなったの?」


「丸1日眠っていたわ。リリーちゃんやマリアちゃんの事は私にもまだわからないの。お父様やエイドリアンなら知っているだろうけれど…」


お母様が言葉を濁す。


「エイドリアンは?今どこに?」


「エイドリアンは今王宮よ。今回の事件はカルロ殿下とエイドリアン2人が責任者として動いているの」


お母様がそう教えてくれた。カルロ様とエイドリアンが動いているなら、詳しいことはエイドリアンに聞くのが一番ね。


「お母様、エイドリアンが帰ってきたら、私の部屋に来るように言って」


「わかったわ。それよりエイリーン、まだ体調は戻っていないんでしょう?さあ、ゆっくり休んで」


お母様はそう言うと、私に布団をかけてくれた。

とにかく今は体力を回復されるのが大切ね。そう思い、私は再び眠りについた。


でも、エイドリアンはその日もその次の日も、公爵家には帰ってこなかった。一体いつになったら帰ってくるのだろう。


居てもたってもいられない私は、何度もお父様に王宮へ行きたいとお願いするが、のらりくらりとはぐらかされ、結局許可は下りない。


一体どうなっているのかしら!


事件から1週間後、やっとエイドリアンが帰ってきた。なぜかカルロ様も一緒に!


「エイドリアン、お帰りなさい!カルロ様もいらっしゃい!」


私は2人を出迎える。色々と忙しかったのか、なんだか2人ともやつれた様にも見える。


「エイリーン、久しぶり!元気になったようで良かったよ」


カルロ様はそう言うと、私を強く抱きしめた。もちろん、私も抱きしめ返す。そう言えば1週間も会わなかったことなんて、婚約してから今まであったかしら?


「エイリーン、ただいま!中々家に帰れなくてごめんね。あの後色々あってね、やっと一段落したから、報告もかねて一度帰って来たんだ。父上からもエイリーンが物凄く気にしていると聞いていたからね」


「それで、リリーとマリアはどうなったの?」


私は早速気になっていたことを聞く。


「まあ落ち着いて。とにかく居間でゆっくり話そう」


エイドリアンに言われた通り、私たちは居間へと移動した。


まず話し出したのはカルロ様だ。


「エイリーン、まずニッチェル嬢だが、あの後すぐに目覚めたよ。ニッチェル嬢が飲んだ毒は猛毒で、ものの数分で死に至らしめるものだった。でも君が治癒魔法をかけたおかげで、毒のめぐりが遅くなっただけでなく、弱毒したため一命をとりとめたんだ」


「そう、リリーは目覚めたのね。良かったわ!」


「今はもう元気にしているが、フェルナンドが心配していてね。とりあえずしばらくは王宮で生活することになっている」


そうか、リリーは王宮に居るのね。でも元気ならよかったわ。


「後、ベネフィーラ嬢なんだが…」

カルロ様は言いにくいのか、言葉を詰まらせた。


「私は大丈夫よ。もう覚悟はできているわ。だから知っていることをすべて話して欲しい」


多分極刑は免れないだろう。これだけのことをしたのだから。

でもせめて真実が知りたい。なぜマリアはあんなことをしたのか…


「カルロ殿下、ここからは俺が話すよ。ベネフィーラ嬢はあの後全てを話したよ」

エイドリアンはマリアの供述を淡々と話してくれた。


エイドリアンの話をまとめると、ベネフィーラ侯爵は自分の娘であるマリアを王妃にしたかったらしい。ただ、カルロ様とフェルナンド殿下の王太子争いが激化していた為、どちらが王太子になるか見極めていたらしい。


そんな中私がカルロ様と婚約したことで、王太子はカルロ様になった。娘を王妃にするという夢を諦めきれなかったベネフィーラ侯爵は、フェルナンド殿下に近づこうとしたり、フェルナンド派を密かに増やそうしたらしい。でも我がフィーサー家を敵に回すことを恐れた他の貴族からの協力は得られず、失敗に終わったとのこと。


そこで思いついたのが娘のマリアに私を近づかせて、油断したところをうまく暗殺しようとしたらしい。


そう、あのドラゴンの襲撃事件は、ベネフィーラ家によって引き起こされたのだ。ベネフィーラ侯爵は、他国から闇の魔術師を雇い、ドラゴンの子供を生け捕りにした。その子供のにおいが付いたものを使って、あの森に母親のドラゴンを誘導したらしい…


そして前日に私たちに渡したブレスレット。あのブレスレットにも子供のドラゴンのにおいを付けていたらしい。それも私のブレスレットにだけ…


「だからあのドラゴンは、私を必要以上に追いかけてきたのね」

自分の子供を必死に探すために…


「ああ、ドラゴンは特に自分の子供のにおいに敏感だからね。何とか子供を取り戻そうと、あの母ドラゴンも必死だったんだろう」


ひどいわ!子を思う母の気持ちを利用するなんて…


「それで、子供のドラゴンはどうなったの?」


私の問いに、エイドリアンは首を横に振る。きっと殺されてしまったのだろう…

何とも言えない空気が部屋を流れる。


正直あまりにも衝撃的な話で、私は耳を塞ぎたかった。でも、それでも真実を聞かなくては、そう思った。


「エイドリアン、私は大丈夫だから、最後まで洗いざらい話して」


私の言葉に、エイドリアンも覚悟を決めたように話し始める。


ドラゴンを使って私を殺そうとしたものの、失敗してしまっただけでなく聖女まで誕生ししてしまった。焦ったベネフィーラ侯爵は、今回のリリー毒殺と私への罪の擦り付けを思いついたらしい。


確実にマリアを王妃にしようと考えるなら、私とリリーは間違いなく邪魔な存在だ。2人まとめて葬れるこの作戦は、きっと最善の策だと考えたのだろう。


そこで白羽の矢が立ったのが、メイドのステラだ。ステラをまず公爵家に忍び込ませ、事件当日毒を盛り私に指示されたと証言させることにしたらしい。

そのためには、私にべったりのアンナが邪魔だった。だから当日、腹痛を起こすよう朝食に下剤を混ぜたとのこと。


そう、アンナの腹痛もステラの仕業だったらしい。そして当日、事件を起こしたという訳だ。


「ベネフィーラ侯爵家の地下からは、今回毒に使われた薬草が見つかったよ。さらにドラゴンの子供の遺体の一部、他にも他国の闇取引の帳簿や脱税の証拠まで見つかった。随分と色々やらかしていたようだ」


エイドリアンはあきれたようにそう言った。


「ねえ、エイドリアン、事件の前日私に最近何か変わったことはないか?て聞いてきたわよね。それってもしかして、マリアの事だったんじゃないの?」


私はここ最近ずっと気になっていたことを聞いた。


「エイリーンは勘が良いね。実はドラゴンの捜査をしていた時、たまたまベネフィーラ侯爵が闇の魔術師と取引をしている話や、隠れて猛毒の葉を購入しているという、良くない話が入ってきてね。

まあ、あの時はまだ噂程度だったから、俺や父上も動くことが出来なかったんだ。なんだか嫌な予感がして、あの日エイリーンに何か変わったことはないかと聞いた。

まさかこんなことになるなんて。俺がもっと早く調査していれば、エイリーンに辛い思いをさせずに済んだかもしれないのに、ごめんね。エイリーン」


エイドリアンは辛そうに謝る。


「エイドリアンのせいじゃないわ。そもそも私の無実を証明し、助けてくれたのはエイドリアンよ。助けてくれてありがとう。カルロ様も私を信じてかばってくれてありがとう。私、とても嬉しかったわ」


漫画では私を断罪する側に回っていた2人。そんな2人が私を助けるために必死に動いてくれた。その事に関しては、ものすごく嬉しい。


「エイリーン、ありがとう」


エイドリアンもカルロ様も嬉しそうに笑った。


「それで、マリアはどうなるの?」


「父親に指示されたとはいえ実行に移したからね。彼女は父親共々極刑に処せられることになったよ。ベネフィーラ侯爵家は御家取り潰しも決まった」


「そう…」


分かっていたこと。それでも実際言葉で聞かされると、やはりやりきれない気持ちになる。私の記憶の中には優しいマリアしかいない。最後に酷いことを言ったマリア、でもその瞳には何とも言えない感情が読み取れた。


「ねえ、マリアに会えないかしら。私どうしてもマリアの気持ちを確かめたいの」


このままお別れなんて嫌!マリアが本当はどう思っていたか自分の耳で聞きたい。それがどんなに残酷な言葉だったとしても。


「残念だが、ベネフィーラ嬢に会うことは出来ない」


カルロ様が申し訳なさそうにそう言った。


「そう…」


仕方ないこと、罪人に会うのはそう簡単なことではないのだから。


「マリアの刑執行はいつ行われるの?」


「2日後だよ」

2日後、そんなに早く…


カルロ様とエイドリアンは、私に全てを話すと「まだやらなければいけないことが残っているから」と言って一旦王宮へと戻った。


私は王宮へと戻る2人を、ただ見つめることしかできなかった。


カルロ様とエイドリアンは、エイリーンに全てを話すかどうか随分悩みました。

でもきっと自分たちが話さなくても、どこかで耳にするかもしれない。

それにエイリーンにずっと真実を隠しておくことは無理だと考え、全てを話したようです。



後2~3話シリアスな内容が続きます。

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