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救世主エイドリアン

エイドリアンは私たちの前に現れると、迷わず私に近づいて来る。


「エイリーン、顔色が悪いな。大丈夫か?とにかく後は俺に任せろ!お前の無実は俺がしっかり証明してやるから」


そう言うと、私の頭を撫でる。


漫画でのエイドリアンは私の断罪の確たる証拠を付きつけ、破滅へと導いた張本人。でも今は、私を守ろうとしてくれる、心強い兄。


でもエイドリアン、ここまで嘘の証拠を並べられている今、どうやって私の無実を証明するつもりなのかしら。


「エイドリアン様、今エイリーンの無実を証明するとおっしゃいましたけれど、一体この状況でどうやって証明するつもりですの?まあ、エイリーンが罪人になればフィーサー家もただではいられないでしょうから、必死なのはわかりますがね」


マリアはエイドリアンをあざ笑うかのようにそう吐き捨てた。

もう私の知っているマリアはどこにもいない…



「ベネフィーラ嬢、俺は家の為にエイリーンを助ける訳ではない。エイリーンは俺の大切な妹だからだ。エイリーン、かつて俺を助けてくれたよな、今度は俺がお前を助ける番だ」


「エイドリアン?」


私いつエイドリアンを助けたかしら?全然記憶にないんだけれど。


エイドリアンはマリアを睨むと、今度はカルロ様の方を向いた。


「カルロ殿下、この学院のいたる場所に、録画型魔道具を設置してあります。魔道具は約3日間記録することが可能です。その魔道具の映像を分析すれば、きっと新たな情報が手に入ると思うのですが」


録画型魔道具って監視カメラみたいなものよね?そんなもの漫画では出てこなかったわ。それにこの国にはそんなもの無かったはずよ。どういうことかしら?


「エイドリアン、録画型魔道具なんてものは初めて聞いたのだが…」


カルロ様も同じことを思ったようだ。


「フィーサー家に来ている王宮魔術師と一緒に私が開発しました。そして学院長の許可を得て、少し前から学院に設置したのです。万が一揉め事が起こった時の決定的な証拠になると思って」


エイドリアンはそう言うとマリアを再び睨む。

フィーサー家に来ている魔術師と言えば、私たちの魔力の先生、ブライアン先生の事よね。いつの間にそんな開発をしたのかしら。


「なるほど!確かに映像なら確実な証拠になる。エイドリアン、早速魔道具を回収し、分析を行ってくれ。先生や騎士たちにも頼もう」


「ありがとうございます。私たちだけではかなり時間がかかるので、手の空いている魔術師を手配してもらえると助かります。」


「わかった」

カルロ様は近くの護衛騎士を呼び、王宮から魔術師を至急手配するよう指示を出す。


「とにかく映像の分析が終わるまで、僕とエイリーン、ベネフィーラ嬢は待機し、それ以外の生徒はとりあえず解散ということで…」


カルロ様がそう言いかけた時、エイドリアンが言葉をかぶせた


「カルロ殿下、もしかすると、現場に居合わせた生徒からの証言が必要になるかもしれません。そこの令嬢3人、君たちも残ってくれるかな?後、ニッチェル嬢が倒れた時、近くにいた生徒も残れる人は残ってくれ」


エイドリアンが指示を出すと、すぐに映像の分析の為に騎士たちを連れどこかへ行ってしまった。でもなぜエイドリアンはあの令嬢3人を名指しで残したのかしら。


あの3人と言えば、いつもリリーに嫌味を言っていた噂好きの伯爵令嬢たち。

あの子たちには逆に帰って欲しかったんだけれどな…


「エイドリアンの言う通り、君たち3人の令嬢と他に残れる生徒は残ってくれ」


カルロ様がそう言うと、3人の令嬢の他にも8名ほどの生徒が残った。そこへ、先生がやってきて私とカルロ様、マリア、その他残った生徒たちは、学院長室へ誘導された。


「エイリーン、体は大丈夫かい?僕が学院長室へ運ぶから安心して」


カルロ様は私を抱きかかえ、学院長室へと向かった。

初めて入る学院長室はかなり広く、奥には会議が出来るような場所があった。

私たちはそこに案内され、映像の分析を待った。


私は魔力の使い過ぎで、頭がボーっとしている。

そんな中でも、リリーは大丈夫なのか、マリアはなぜ私を陥れるようなことを言ったのか、そのことばかり考えていた。


カルロ様はそんな私をずっと、抱きしめていてくれている。どれくらい時間がたっただろうか…

外が薄暗くなり始めたころ、エイドリアンが先生や王宮魔術師と一緒に学院長室に入ってきた。


「カルロ殿下、学院長先生、映像の分析が終わりました」


エイドリアンの言葉に、カルロ様が食いつく


「それでエイドリアン、映像はどうだったんだ?」


「カルロ殿下、落ち着いてください」

エイドリアンはそう言うと、マリアの方を向いた。


「ベネフィーラ嬢、メイドを使いニッチェル嬢に毒を盛ったのは、やはりあんただったんだな」


エイドリアンの言葉に、マリアがビクッと震えた。


「な…何を言っているの?証拠はあるの?証拠は!」


マリアも反論する。


「そうだな、証拠は必要だな」

エイドリアンはそう言うと、魔道具の映像を映し始めた。


そこにはマリアがフィーサー家のメイドのステラに、毒の入った瓶を渡している映像が映し出された。


その映像には声もしっかり録音されており


“いい、これをリリーのお茶の中に入れるのよ”


“でもマリア様、たとえエイリーン様に罪を着せたとしても、私は実行犯として裁かれてしまいます”


“前にも言ったでしょ、どさくさに紛れてあなたは逃がしてあげるから大丈夫よ。あなたは隣国でゆっくり家族と暮らせばいいから。いいわね、エイリーンの指示で毒を盛ったって言うのよ!失敗は許されないわ!しっかりやりなさい”


そんなやり取りがしっかり聞こえる。

ステラもマリアと共犯だったんだ。


「他にも証拠はある。これはベネフィーラ嬢が、エイリーンのカバンに毒の入った瓶を入れている映像だ」


続々と流れる証拠映像に、周りもざわめき始める。


「ちなみにもう1つ確認したいことがあります」


そう言ったのは王宮魔術師の1人。


「これは、フィーサー嬢のカバンに入っていた毒の瓶です。フィーサー嬢、申し訳ございませんが少しだけこの瓶に魔力を込めていただいてもよろしいですか?」


私は言われた通りに魔力を込めるが、特に何も変化がない。


「では次にベネフィーラ嬢、魔力を込めてみてください」


魔術師の指示に従い、マリアが魔力を込めると、ふわりと光を放った。


「これは、この瓶に触った人のみ反応するようになっています。ということは、フィーサー嬢は触っておらず、ベネフィーラ嬢は触ったということになりますね」


魔術師が説明してくれた。

前世で言う指紋認証みたいなものだ!



「ちなみにカルロ殿下も魔力を込めてもらえますか?」

カルロ様が魔力を込めると、やはりふわりと光を放った。


確かにカルロ様も私のカバンから毒の瓶を取り出すときに触っていたわね。


「さあ、ベネフィーラ嬢、もう言い逃れは出来ない。ニッチェル嬢に毒を盛り、エイリーンに罪を着せようとしたのはあんたで間違いないな!」


エイドリアンが強い口調でマリアに詰め寄る。


悔しそうに唇を噛むマリア。


「そうよ…私よ!私がやったのよ」


その言葉に周りはさらに騒めく。


「騎士たち、ベネフィーラ嬢を連れて行け」


エイドリアンの言葉に、護衛騎士たちが動く。


「待って、お願い待って」

私はとっさに叫んでいた。


「ねえ、マリア、何か理由があったのよね。何でこんなことをしたの?ねえ、私たち友達だよね?」


私は感情を抑えられずマリアに叫ぶ。

もう何が何だかわからない。でも、きっと何か理由があって仕方なくこんなことをしたんだ。そうに違いない。


「理由?そんなものはないわ!そもそも私はあなたを友達だと思ったことは一度もないわ。私はあなたを利用するためだけに近づき、お友達ごっこに付き合ってあげただけ」


そう言うとマリアは、護衛騎士に連れられて学院長室を出て行った。


「嘘…嘘よ。そんなの私は信じないわ!だっていつも私とリリーの事心配してくれてたじゃない」


私はそれでもマリアに叫び続ける。

嘘だ!嘘だ!嘘だ!


「エイリーン、落ち着け!」


カルロ様とエイドリアンが私を必死になだめるが、私は興奮して周りが見えなくなっていた。


嘘だ!!!!!

その瞬間、無意識に魔力を放出した私は、魔力の使い過ぎで意識を失ったのだった。


~事件後カルロ様とエイドリアンの会話~


「エイドリアン、よく映像型魔道具を学院に設置しようと思ったね」


「エイリーンは良くも悪くもよく目立ちますから。中には快く思っていない者もいるでしょう。何かあった時の保険にと思って以前から開発していたんですよ」


「なるほど、もう一つ聞きたいんだが、なぜ令嬢3人を名指しで残したんだ?あの令嬢たちは噂好きで有名だぞ」


「だから残したんです。きっと今回の事件は学院中の噂になる。たとえエイリーンが無実だったとしても、親の力でベネフィーラ嬢に罪を擦り付けたという者もいるでしょう。そんな中、あの3人に真実を自分たちの目で確認させることで、次の日にはエイリーンは無実の罪を着せられたうえ、友達に裏切られた悲劇の女性になるんですよ」


「なるほど、あの3人なら間違いなく自分たちが見た事実を、得意げに話すだろうからな」


「普段は厄介な令嬢たちだが、使い方によっては十分利用できるということです」


「悔しいが今回はエイドリアンに助けられたよ。僕だけならきっとエイリーンを助けられなかった。ありがとう!」


「いいえ、エイリーンは血を分けた大切な妹です。妹を助けるのは当然の事。お礼などいりません」



「(クソ、こいつやっぱりあんまり好きになれん…)」

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