やっぱり断罪されるのですか?
急に苦しみだし倒れたリリー。
私は慌ててリリーの元に駆け寄る。
周りからは悲鳴が聞こえ、人も集まってきていた。
リリーを抱き起すと、口から泡を吹いている。
これって、もしかして毒?
とにかく治癒魔法をかけないと!
私はリリーに手をかざすと“治れ、治れ”と何度も念じる。
お願い!リリー、目を覚まして!
無意識に魔力を込める力が強くなる。
リリー、何でこんなことになったの?
一体何が起こっているの?
私は必死に治癒魔法をかけながら考える。
そう言えばこの時期って、漫画の世界ではエイリーンがリリーを毒殺しようとして、断罪される頃だ!
もしかして…
そう思った時!
「リリー」
「エイリーン」
カルロ様とフェルナンド殿下がやって来た。
「エイリーン、一体何があったんだ?」
カルロ様の問いに私は治癒魔法をかけながら答える。
「わからないの!お茶を飲んだら急に苦しみだして…」
隣ではフェルナンド殿下が必死にリリーに声をかけていた。
「とにかくリリーは医務室へと連れて行く!兄上、後は頼む」
そう言うとフェルナンド殿下はリリーを抱きかかえ、医務室へと向かった。
次の瞬間、私は体を起こしていることが出来ず、倒れそうになったところをカルロ様に受け止められた。
どうやら治癒魔法でかなりの魔力を使ってしまったらしい。
「エイリーン、大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫よ。それよりリリーが飲んだお茶が怪しいわ。もしかしたら毒が入っていたのかもしれないわ」
そう、お茶を飲んだ瞬間、リリーは苦しみだした。漫画では未遂に終わったが、ストーリー通りなら毒が入っていた可能性が高い。
でも一体誰が…
カルロ様が近くにいた護衛騎士にお茶を調べるように依頼をした。毒の種類がわかれば、解毒薬をリリーに飲ませることが出来る。
「でも、もしお茶に毒が入っていたのなら、一体だれが入れたのかしら?」
私の問いに、思いがけない人物から思いがけない言葉が…
「エイリーン、もうそんな演技はやめて!あなたがメイドに指示してリリーに毒を持ったのでしょう?」
そう言ったのはマリアだ。
えっ、マリア、一体何を言っているの?
周りもざわめき始めた。
「エイリーン、あなた最近私に愚痴っていたわよね。“最近フェルナンド殿下を王太子に推す声が出てきている。聖女でもあるリリーと婚約したし、もしかしたらフェルナンド殿下が王太子になるかもしれない”って。あなたフェルナンド殿下が王太子になるのを阻止するために、リリーに毒を盛ったのではなくって?」
マリア、本当に何を言っているの?私そんなこと言っていないわ!
「ベネフィーラ嬢、それはちょっと聞き捨てならないね。エイリーンは僕と結婚できるなら、王妃には興味がないとずっと言っているんだよ。そのエイリーンが、ニッチェル嬢を手にかけるとは思えないな」
カルロ様が反撃をする。
「カルロ殿下にはそう言ったかもしれませんが、エイリーンの本心はそうではないのですよ。それに今日お茶を持ってきたのはエイリーンです。その点を見ても、エイリーンがリリーに毒を盛ったと考えるのが普通では?そうだわ、今日お茶を入れたメイドに真実を聞いてみましょう」
マリアはそう言うと、ステラを呼び出した。呼ばれたステラは震えている。
「申し訳ございません。エイリーンお嬢様にニッチェル様のお茶に毒を入れる様指示され、
毒を盛りました。本当に申し訳ございません」
ステラは泣きながら頭を下げる。ステラまで、一体何を言っているの?
「ほら、メイドもこう言っているわよ。そうだわ。きっとリリーに使った毒を、エイリーンは持っているはずよ。きっとカバンの中に入っているわ」
カバンに毒?そんなもの入っている訳ないわ。なのに、なぜマリアはそんなことを言うの?
「エイリーン、悪いがカバンを見せてもらってもいいかい?」
カルロ様は私に許可を取ると、カバンの中を確認する。すると、見覚えのない小瓶が出てきた。
「ほら、やっぱりエイリーンのカバンに毒が入っていたわ」
マリアが得意そうにそう言った。もう何が何だかわからない。ただ一つ言えるのは、私は今漫画と同じように、断罪されようとしていると言う事だけだ。
私、このまま罪を着せられ、死ぬのかしら。
魔力を使いすぎたせいで、頭がボーっとする。
周りからは
「エイリーン様がリリー嬢を。信じられないわ」
「まさかエイリーン様があんなことするなんて。怖いわね~」
なんて言葉も聞こえる。
私も何か反論しないと…
そう思っているが言葉が出てこない!
どうして?どうしてマリアはそんなことを言うの?私たち友達じゃなかったの?
ほとんど働かない頭の中に浮かぶのは、そんな言葉ばかり…
そんな中、カルロ様が反論する。
「エイリーンがそんなことをするはずがない。エイリーンにはずっと護衛騎士を付けていたんだ。おい、護衛騎士たち、今日エイリーンは何か不審な動きをしていたか?」
カルロ様の言葉と共に、どこからともなく現れる護衛騎士たち。まさか学院内に護衛騎士が付けられているなんて知らなかったわ。
「殿下、報告いたします。エイリーン嬢は特に不審な動きは見られませんでした」
騎士たちの報告に、満足そうなカルロ様。
「ほら見ろ、エイリーンは犯人じゃない!」
「そんなの、家にいるうちにメイドに指示を出しておけば、学院内で怪しい動きをする必要はありませんわ。それにメイドの証言や物的証拠も出てきております。それでもエイリーンをかばうのですか?このままでは殿下もただでは済まなくなりますよ」
マリアがカルロ様まで脅しに入った。悔しそうに唇をかむカルロ様。
このままではカルロ様まで悪者になってしまうわ。何とかしなくては…
でもどうすればいいのかしら?
絶体絶命の大ピンチ!
「もう言い逃れは出来ないわね、エイリーン。護衛騎士たち、エイリーンを連れて行って」
マリアの言葉に、騎士たちが私を連れて行こうと近づいて来る。
「おい、勝手なことをするな!エイリーンは渡さない!」
カルロ様が必死に騎士から私をかばう。
この場合、身分が上のカルロ様の言うことを聞くのが暗黙のルール、護衛騎士たちは私を捕らえることが出来ない。
でもこのままではまずいわ!
そう思った時
「黙って聞いていれば、随分好き勝手言ってくれるじゃないか、ベネフィーラ嬢。俺の妹を侮辱する奴は、誰であろうと許さない!」
私たちの目の前に現れたのは、エイドリアンだ!
漫画の筋書き通り?エイリーンの断罪が始まりました。
そして断罪をしているのは、友達だと思っていたマリア。それもエイリーンは全く身に覚えのない罪で断罪されようとしています。
ちなみに、エイリーンはかなりの魔力を使い、リリーに治癒魔法をかけています。本来であれば意識を失ってもおかしくない状況の中、何とか意識を留めている状態。そのため、思うように反論することが出来ないのです。
※今後少しシリアスな内容が続きますが、よろしくお願いしますm(__)m