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リリーが正式に聖女と認められました

本日2度目の投稿です。

「お嬢様、お嬢様、起きてください!」

朝、私はアンナに起こされていた。


昨日はとっても大変だったのよ。今日は学院も休み…

もう少し寝かせて!


そんな抗議も込めて、布団の中に潜り込む。


「お嬢様、旦那様がお呼びです。起きてください!」


そう言うとアンナに布団をはぎ取られた。

お父様が?何の用だろう。


私は慌てて身支度を整え、お父様の元へと向かう。


「お父様、おはよう。お呼びですか?」


「ああ、エイリーン。昨日の今日で疲れているのにすまない!実は今から王宮に行くのだが、お前も一緒に来て欲しいんだ」


「私も?」


なぜ?


「実は今日、王族と官僚たちが集まって、本当にリリー嬢が聖女か、皆の前で儀式を行うことになっているんだ。ただリリー嬢がお前がいないと嫌だって、駄々をこねているらしい…。そこで急遽エイリーンも一緒に登城することになったんだ」


お父様が申し訳なさそうにそういった。

駄々をこねているって…リリー、あなた小さな子どもじゃないんだから…


まあ仕方がないわね。


「わかりました。すぐに支度をしてくるわ。ちょっと待っていて」


「急がなくていいよ、ゆっくり準備しなさい」


後ろからお父様の声が聞こえた。


そうは言っても、お父様の登城時間はもう迫っているわ。

急がないと。


私は急いで自室に戻り、アンナ達メイドに手伝ってもらい、登城するための身支度を行う。


「お父様、お待たせしました。参りましょう」


まずいわ、お父様の登城時間を随分オーバーしている。

2人で急いで馬車に乗り込む。


「まって、エイリーン、急だったから朝ごはん食べていないでしょ。ここにサンドウィッチを入れておいたから、馬車の中で食べなさい」


お母様がバスケットを持たせてくれた。


「お母様、ありがとう。行ってきます」


馬車は少し急ぎ足で、王宮へと向かった。

王宮までは約15分程度。急いでサンドウィッチを食べる私に、お父様が申し訳なさそうな顔をしている。


何とか王宮に着く前に食べ終わったわ。

馬車の中で食べ物を食べるなんて、本来であればかなり行儀が悪いけれど、今日は仕方がない。


お父様と2人で、儀式が行われる広間へと急いだ。

やはり私たちが最後だったようで、みんなもう着席していた。


「遅くなってしまい申し訳ございません」


お父様が頭を下げる。私もそれを見て頭を下げた。


「エイリーン様~」


この声はリリーね。

リリーは私の方に走ってきて抱き着く。


「王宮内は豪華すぎて落ち着かないし、こんなところに連れてこられるし、偉い人ばかりに囲まれるし、頼れる人と言ったらフェルナンド様だけなのに、あんまり近くにいてくれないし!めちゃくちゃ不安でした~」


そう言いながら泣き出すリリー。

とりあえず落ち着かせないと。


「リリー、来るのが遅くなってごめんね。とにかく席に座ろう。ほら、私もフェルナンド殿下も隣にいるから大丈夫よ!」


優しく声をかけながら、フェルナンド殿下の隣に座らせ、私もその隣に座った。

ちなみに私の反対隣には、カルロ様がいる。


私、この席で良いのかしら…

不安になってお父様を見るが、頷いているので大丈夫なようだ。


全員揃ったところで、陛下が話し始めた。


「今日は急な呼び出しにも関わらず、集まってもらって感謝する。特にエイリーン、急に呼び出してすまなかったな。

実は昨日リリー・ニッチェル嬢が聖女として目覚めた。今日は、聖女が本物かどうか皆の目で確かめてもらうために集まってもらった」


陛下の言葉に周りはざわめき始めた。


そりゃそうだよね。先代の聖女様が亡くなってまだ3ヶ月足らずしかたっていない。

こんなに早く聖女が現れるなんて、珍しい。


「早速だが、リリー・ニッチェル嬢、君が本物の聖女か試させてもらう」


陛下がそう言うと、王宮魔術師が水晶を持ってきた。


この水晶、魔力測定の時に使った水晶だ。確か聖女の場合、虹色に光るのよね。


「ニッチェル嬢、手をかざしてみてください」


戸惑うリリー。

私はリリーの肩に手を置き「大丈夫よ」と伝える。

リリーは私を見ると、覚悟を決めたのか水晶に手をかざした。


すると、水晶が虹色に輝く。

その輝きは今まで見たこともないほど美しいものだった。


「おおぉぉ~~」


周りからも驚きと歓喜の声が漏れる。


「この光は間違いなく聖女様の放つ魔力の光です」


王宮魔術師がはっきりと告げると、陛下も深くうなずく。


「皆の者、リリー・ニッチェル嬢が次の聖女で間違いない」


陛下の言葉と共に、周りから拍手が起こる。


リリーはやっぱり戸惑ったように、キョロキョロと周りを見ている。


これで正式にリリーが聖女と認められたようだ。


「正式に聖女となったリリー嬢、君は男爵令嬢だからあまり詳しいことは知らないかもしれないが、聖女は王族と結婚するのが決まりだ。今いる王族は、王太子のカルロと、第二王子のフェルナンドだ。君はどちらと結婚したいかい?」


ええーーー!

陛下、今この場で聞くの?


お父様を見ても、当たり前と言った顔をしている。


「そんなの決まっています。フェルナンド様です。私はフェルナンド様を心より愛していますわ。」


リリーはにっこり笑って答える。


「フェルナンドだと、次期王妃になれないがそれでもいいのかい?」


陛下ったら意地悪な質問するのね。

リリー、どう答えるのかしら?


「私が次期王妃様ですって?そんなの絶対無理ですわ。やっぱり次期王妃様にはエイリーン様でなくっちゃ!それに、王妃様になるためには、カルロ殿下と結婚しなきゃいけないんですよね。あんな器の小さな男と結婚なんてごめんですわ!」


「ブッ」


今お父様笑ったわよね。

他の官僚たちはポカンとしているし。

カルロ様は、それはそれは恐ろしい顔で、リリーを睨んでいるわ。


王妃様とフェルナンド殿下は笑いを堪えているし…

って、王妃様、あなたの息子バカにされてますよ!

笑っていていいのですか?


言い切ったリリーは、ものすごく満足そうな顔をしている。

この何とも言えない雰囲気を破ったのは、陛下だった。


「リリー嬢の気持ちは存分に理解した。では聖女にはフェルナンドを夫とすることにしよう。新しい聖女が誕生したのだ。民にも報告する必要がある。1ヶ月後に聖女のお披露目を行う。その時に婚約者として、フェルナンドも紹介しようと思うが、異論があるものはいるか?」


異論を唱えるものは誰もいない。

まあ、式典には色々と準備があるし、1ヶ月後が妥当よね。



こうして、無事?リリーは聖女と認められた。


通常聖女は安全の為王宮で暮らすのだが、リリーたっての希望で今まで通りニッチェル家で暮らすことが認められた。


基本的に聖女は国にいるだけで大丈夫なので、日常生活は今までと変わらないと聞いて、リリーは喜んでいた。


聖女に関する議論の後は、昨日のドラゴン事件について話し合われるとのことで、なぜか私とリリー、カルロ様とフェルナンド殿下の4人は追い出された。


当事者を追い出すなんて!と思ったが、ここからは大人の話になるらしい…



「おい、ニッチェル嬢!あんな大勢の前でよくも僕の事、器が小さい男と言ってくれたな!おかげで恥をかいただろう!」


4人になったとたん、カルロ様がリリーに抗議の声を上げた。


「あら、そんな小さいことを気にしていらっしゃったのですか?やっぱり器が小さいじゃないですか」


リリーは軽くカルロ様をあしらう。


「なんだと!こんな図々しい女が義理とはいえ妹になるなんて、なんだか気が重いよ」


「こっちだって、あなたみたいな器が小さな男が義理兄なんて最悪な気分だわ」


「なんだと!」


「何よ!」


2人とも戦闘モードだ!


「2人ともいいかげんにしろ!使用人や護衛騎士たちも見ているんだぞ。少しは状況を理解しろ!」


フェルナンド殿下の言葉で、2人はハッとする。

ここは王宮の通路だ。いくら4人になったとはいえ、たくさんの使用人や護衛騎士たちがいる。


「ごめん…」

「ごめんなさい…」


カルロ様とリリーがフェルナンド殿下に謝っている。


「クスクスクス」

私はその光景が面白くて笑ってしまった。


何で私が笑っているのかわからないようで、カルロ様とリリーは首をかしげている。


喧嘩するほど仲がいいって言うけれど、実はカルロ様とリリーは仲良しなのかもしれなわね。

そう思いながら、笑い続けるエイリーンであった。


儀式を終え家に帰ってきたフィーサー公爵と夫人の会話


「今日無事リリー嬢が聖女と認められたよ。それとリリー嬢はやはりフェルナンド殿下と婚約することになった。お前が心配していた王太子問題だが、リリー嬢ははっきり王妃にはならないと言ったから安心していいぞ」


「それは良かったわ!」


「それにしてもリリー嬢は実に面白い」


「何かあったのですか?」


「カルロ殿下を器の小さい男呼ばわりしたんだ!それも皆の前で」

思い出したように笑うフィーサー公爵


「あらあら、でもリリーちゃんらしいわね」

夫人もクスクス笑っている


「まあ、カルロ殿下はかなり嫉妬深いからな。エイリーンも大変かもしれない」


「あら、エイリーンはカルロ殿下が大好きだから、そんなこときっと気にしませんわよ」


夫人の言葉に、娘大好きフィーサー公爵は複雑な顔をするのであった。


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