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無事家に帰ってきました

「ガタン」


何かの衝撃で目を覚ました私。

そっか、馬車の中で寝てしまったんだわ。


「エイリーン、起きたのかい?今ちょうど公爵家に着いたところだよ」


カルロ様に優しく話しかけられる。


「私寝ちゃったのね。ごめんなさい」


「謝る必要はないよ、さあ、馬車から降りよう」


カルロ様はそう言うと、再び私を抱き上げて馬車から降りた。


「エイリーン!エイドリアン!」


お父様とお母様が私たちの方に駆け寄ってきた。後ろには心配そうな使用人たちが待っていた。

もちろん、アンナも控えている。


「ドラゴンが出たって聞いて心配したんだよ。怪我はないかい?殿下もわざわざエイリーンを送って下さり、ありがとうございます」


そう言うと、お父様はカルロ様から私を受け取ろうとするが、もちろん渡さないカルロ様。


目の前で火花が飛んでいるようにみえるが、気のせいよね。


「婚約者を送るのは当然だよ!エイリーン、部屋までは僕が運ぶから安心してね!」


そう言うと、カルロ様は公爵家の中に入ってきた。


「カルロ様、ありがとう。でも今からお父様とお母様に今日あったことを話さないといけないわ。だからここで大丈夫よ!怪我はエイドリアンが治してくれたから、もう歩けるし。それに、あなたも国王陛下に報告しなければいけないでしょ」


それにもう王宮の馬車がカルロ様を迎えに公爵家に来ているし。

聖女も誕生したのだ。

王太子のカルロ様がいつまでもここにいる訳にはいかないはず。


「エイリーン、怪我って!あなた怪我をしたの?大丈夫なの?」


お母様が心配そうに私の手を握る。

もちろんまだカルロ様に抱かれている状態でだ。


「大丈夫ですわ。お母様、心配させてごめんなさい」


私はお母様を安心させようと、出来るだけ笑顔で答える。


「カルロ様、本当にもう大丈夫ですわ!送ってくれてありがとう」


私の言葉に、カルロ様はしぶしぶ降ろしてくれた。


「エイリーン、今日はゆっくり休むんだよ、おやすみ」

そう言うと、私のおでこにキスをし、ギューッと抱きしめる。


カルロ様、お父様もお母様もエイドリアンも使用人たちまで見ていますわ。


周りからの生暖かい視線をひしひしと感じるわ。


カルロ様から解放された私は真っ赤だ!

さすがに家族の前でのイチャイチャはまだ慣れないわね!


カルロ様は馬車に乗り込むと、窓から手を振っている。

私もとりあえず手を振り返して見送った。


「エイリーン、今日は疲れただろう!話は明日にしてゆっくり休みなさい!」


「いいえ、今日話しておきたいの。私は大丈夫よ!だからお願い」


とにかく聖女が誕生したこと、ドラゴンの事。今日中にしっかり話しておかないと!


「わかったよ、とにかく湯あみだけでもしておいで!お腹もすいているだろうから、食事の後にゆっくり話そう」


確かに服はドロドロだし、お腹もすいたわ。


私は自室に戻ってまず湯あみをすることにした。


自室に戻ると、アンナに抱きしめられる。


「お嬢様、ドラゴンが出たと聞いたときは心臓が止まるかと思いました!でも無事でよかったです」


アンナは自分の服が汚れることも気にせず、泣きながら抱きしめてくれた。


「ありがとう、アンナ。心配かけてごめんね!私に抱き着いたせいであなたの服も汚れてしまったわ。着替えてきて。湯あみは別の者に…」


「いいえ、大丈夫です。お嬢様の湯あみは私が行います!」


私が言い切る前に、アンナに言い切られてしまった。

そして有無も言わさず、バスタブへと入れられ体を洗われる。


傷があるといけないからと、ゆっくり丁寧に洗ってくれるアンナ。

この心使いが嬉しいわ!


「ありがとう!アンナ」


私がお礼を言うと


「いえ、当然のことですわ」

と言う。でもなんだか嬉しそうだ。


湯あみの次は夕食だ。

朝から何も食べていないのでお腹ペコペコ。


食堂に着くと既にお父様とお母様、エイドリアンもいた。

エイドリアンもきっと朝から何も食べていないはずなのに、待っていてくれたのね。


「みんな揃ったし、頂こうか」


お父様の一言で、食事開始。

余程お腹が空いていたのね。とにかく無言で食べ続けた。それにしてもうちの料理人たちは本当に天才だわ。


何を食べても美味しいんだもの。

無言で一気にデザートまで平らげてしまった。


ふと周りを見ると、私の食べっぷりに両親は目を丸くしている。

エイドリアンは私と同じくお腹が空いていたようで、まだ夢中で食べていた。


少し恥ずかしかったけれど、仕方ないわよね。


食事も終わり、私たちは今日の出来事を両親に話す為、居間へと向かう。


メイドが紅茶を入れてくれたので、それを一口飲む。

落ち着くわ。


「エイドリアン、エイリーン今日は大変だったね。ドラゴンが出たとのことだが一体何があったんだい?」


「私とリリーが山を散策していると、急にドラゴンが目の前に現れたの。本当に急に!でもカルロ様やエイドリアンたちに助けられ、何とか逃げたんだけれど、みんなとはぐれちゃって」


私は今日会ったことを話す。


「はぐれた先にもなぜかドラゴンが来て、私は氷魔法でドラゴンの顔面を凍らせて2人で逃げたんだけれど、それでもドラゴンが追いかけてきたの」


「そういえば俺たち騎士団と先生でエイリーンたち生徒を逃がしたんだが、エイリーンとニッチェル嬢がいなくなると、ドラゴンはどこかへ飛んで行ってしまったな」


エイドリアンは顎に手を当て、考えるように話している。


「エイリーンと俺の話をまとめると、ドラゴンはエイリーンたちを狙っていた様にもみえるのですが、父上はどう思いますか?」


「ドラゴンが特定の人間を狙うということはあまり考えられないが…ただ2人の話を聞いていると、確かにエイリーン達を狙っていた様に感じる。それになぜあんな場所にドラゴンがいたのかも気になるな。とにかくこの件に関しては至急調査させよう!」


お父様も顎に手を当てて考えている。

さすが親子だ。しぐさがよく似ている。


「1つ聞きたいんだが、そこまで執拗に追いかけられて、良く無事でいたな?ドラゴンはどうしたんだ」


お父様が不思議そうに聞いてきた。


「その件なんだけれど、実はリリーがドラゴンを倒したの。私がやられそうになった時、聖女の力が目覚めて、それで一撃で」


あれはかなりびっくりした。本当に一撃で倒してしまったのだから!


「なんだって、リリー嬢が聖女様だと!」


お父様が叫ぶ。隣でお母様も口をあんぐり開けてびっくりしている!


「そうよ、リリーの額に聖女の紋章が浮き出た直後に、ドラゴンを倒したの。そのあと額の紋章は消えたけれど、左腕にはくっきり紋章が浮き上がっていたわ」



「そういえば、さっき王宮から明日至急集まって欲しいと連絡があった。まさか聖女様が誕生したという話だったとは」


お父様は納得したようにうなずく。


「じゃあ、リリーちゃんが次の聖女様なのね。よかったわ!」


お母様が安どの表情を浮かべる。


「確かにニッチェル嬢が聖女ということであれば、まずカルロ殿下を選ぶことはないでしょうね。あの2人はエイリーンを巡って対立していますし。それにフェルナンド殿下と交際しているようなので、間違いなくフェルナンド殿下との結婚を選ぶでしょう」


エイドリアンの言う通りだろう。

リリーはフェルナンド殿下にぞっこんだ!

間違っても今のリリーなら、カルロ様を選ぶことはないだろう。


「でもフェルナンド殿下がリリーちゃんと結婚することになったら、またフェルナンド殿下を王太子にって声も出てくるんじゃないかしら?」


お母様が心配そうにそう言った。


「まあ、出てくるかもしれないが、カルロ殿下のお披露目も終わっているし、余程の事がない限り大丈夫だろう」


お父様もそう言う。

それでもお母様は心配そうだ。


「お母様、私は特に王妃になりたい訳ではないわ。カルロ様と結婚できるなら、王妃だろうが平民だろうがなんでもいいのよ」


私がそう言うと、複雑そうな顔でお母様も微笑む。

公爵家の娘が平民になるなんて…って思ってるんだろうな、きっと。


「とにかく今日は疲れただろう。明日の学院は臨時休校らしいから、2人ともゆっくり休みなさい」


お父様に言われ、私もエイドリアンも自室へと向かう。


「エイドリアン、今日は本当にありがとう」


私は自室に入ろうとしているエイドリアンに声をかける。


「別に俺は何もしていないよ。今日は色々なことがあって疲れただろ、ゆっくり休んで。おやすみ、エイリーン」


そう言うと、笑顔で自室に入っていた。


「おやすみ、エイドリアン」


自室に戻ると、寝具に着替えベッドに入る。

今日は本当に色々あって疲れたわ。


漫画にはなかったドラゴンが現れるなんて、一体何が起こっているのだろう…

でもリリーは少し時期は早いが、漫画通り聖女として目覚めたし…

少しずつ物語が変わってきているのかしら。

ダメだ、疲れすぎて頭が働かない。


明日もう一回頭を整理してみよう!

そう思いながら眠りについたエイリーンであった。


エイリーン達の父でもあるフィーサー公爵は、全ての騎士のトップでもある、総騎士団長です。いわば武のトップですね。


国と治安関係は基本的に騎士団が行っているので、今回のドラゴン事件は、総騎士団長でもあるフィーサー公爵が指揮をとるようです。


ちなみに王宮魔術師も実はフィーサー公爵の管轄です。そのため、エイリーン達の魔力の先生を自由に選ぶことが出来たのです。


ちなみにエイリーンの母親は、侯爵令嬢です。彼女も魔力量が非常に高く、学院を卒業したら王宮魔術師になる予定でした。

でも、学院在学中にフィーサー公爵からの猛アプローチを受け、卒業後すぐに結婚することになったのだとか。



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