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フェルナンド殿下が気になる~リリー視点~

本日2回目の投稿です。

家に帰ると早速両親とお兄様に、今日できた友達のことを話す。


「リリー、今なんて言ったんだい?」


お父様、耳が悪くなったのかしら。


「だから、エイリーン・フィーサー様と友達になったって言ったのよ!」


「「「え~~~」」」


3人はまるでオバケでも見たかのように、それはそれは驚いている。


「エイリーン様は、とっても優しいのよ!私が「お友達になってください」って言ったら、快く承諾してくれて。後ね、私が転んだら治癒魔法で治してくれたのよ。ホントもう女神様なの!」



私は今日あったことを嬉しそうに話す。



「リリーからエイリーン様に、友達になって欲しいと言ったのかい?」


お父様が聞き返す。

本当にお父様、耳が遠くなったのね。


「そうよ」


「なんてことを…」


お母様はその場に倒れこみ、お父様とお兄様は頭を押さえている。


「リリー、自分より身分の高い人には、こちらから話しかけてはいけないと教えたでしょう?男爵令嬢が公爵令嬢に友達になってくれなんて、前代未聞だわ」


「あ~、それ王太子とエイリーン様のお兄様にも言われたわ」


さらに頭を抱え込むお父様。

「やってしまったことは仕方がない…最悪、御家取り潰しになるかもしれないが、それもまた仕方がないこと」


「えっ?どういうこと?」


「リリー、貴族社会はお前が思っているよりずっと闇が深い。もし今回の事で、公爵家からクレームが来たら、私はもう男爵ではいられないんだよ」


「なぜ?友達になってって言うことがそんなにいけないことなの?」


私は真っ青な顔になる。


「まあ、クレームが来ると決まった訳ではない、とりあえず様子を見よう」


お父様はそういうけれど…

私、とんでもないことしちゃったのかしら!



そして次の日。私は重い足取りで学院へと向かう。

すると、校門の前で、エイリーン様の兄、エイドリアン様が待っていた。


「ニッチェル嬢、ちょっといいかな?」


げっ、私に文句を言いに来たのかしら。

やっぱり御家取り潰し?


そう思っていたのだが…


「昨日は酷いことを言ってすまなかった。エイリーンは俺の大切な妹だから、つい言いすぎてしまった。本当にすまないと思っている。どうかエイリーンと仲良くしてやって欲しい」


エイドリアン様はそういうと深々と頭を下げ、去って行った。

えっ、謝られたの?

私は拍子抜けしたと共に、御家取り潰しは免れたのだと理解し、ホッとした。


それにしてもさすがエイリーン様のお兄様、とっても紳士的な人ね。


私はルンルン気分で教室へと向かう。

そこにはエイリーン様が!


「リリーおはよう」


エイリーン様から声をかけて来てくれた。

やっぱり私の事を友達と認めてくれたのね。


「エイリーン様、おはよう」

私も挨拶をした。


そしてその日のお昼も、放課後もエイリーン様と一緒に過ごした。

とにかくエイリーン様は優しいだけでなく、とても面白い。

一緒にいると、とても楽しい。


でも…

エイリーン様の近くには、いつもあの感じの悪い王太子がいる。


私がエイリーン様と一緒にいるのに、すぐに連れて行こうとするし。

あれでも本当に王太子なのかしら、器が小さいったらありゃしない。


だから私はあえて、エイリーン様と王太子が一緒にいるところを邪魔したりもする。


でもなぜか、エイリーン様は器の小さい王太子が大好きなんだとか!

全く理解できない!



そしてもう1人友だちができた。マリア・ベネフィーラ侯爵令嬢だ。


こちらもかなり上流貴族だが、エイリーン様に負けず劣らずとっても優しい。

私って本当に良い友達に恵まれたわよね。


マリア様と友達になってからは、休日3人で遊ぶことも増えた。

時にはお互いの家に行ったりもした。フィーサー公爵家もベネフィーラ侯爵家もとっても立派。

それに2人のご両親もとっても良い人なのよ。


特にエイリーン様のご両親なんて


「いつも娘と仲良くしてくれてありがとう。うちの娘は同性の友達がいなかったから、あなたが友達になってくれてすごく喜んでいたよ」


とおっしゃってくれた。


それにエイリーン様のご両親は、夜会などでうちの両親と出会うと必ず話しかけて下さる様だし。


お父様なんか

「いや~、フィーサー公爵は本当に気さくな人だ」

なんて言っているくらい!


御家取り潰しなんて騒いでいたのは一体誰よ!


そんな楽しい日々を送っていたある日。忘れ物をして教室に戻ると、1人の少年がいた。


美しい銀髪、宝石のような赤い瞳にはどこか寂し気な雰囲気を漂わせている。


第二王子、フェルナンド殿下だわ。


男爵令嬢の私でも第二王子の生い立ちは知っている。


それにしてもなんて悲しそうな瞳をしているのかしら…

私はその場を動くことが出来なくなってしまった。


「ガタ」

しまった。ついうっかりカバンを落としてしまった。

ふと、フェルナンド殿下と目が合う。


初めてしっかりとフェルナンド殿下を見たが、とても美しい顔をしているなぁ。

そんなことを考えている間に、フェルナンド殿下は教室を出て行ってしまった。


その日以来、私はフェルナンド殿下が気になって仕方がない。


お昼休みや放課後、隙を見てはこっそりフェルナンド殿下の後を付けたことも何度かある。


ストーカーではないわよ。

後を付けてわかったのだが、フェルナンド殿下はいつも校舎の裏側の少し奥にある、ベンチに座っていることが多い。


この場所は屋根も付いているので雨風も防げる。だから天候に関わらず、毎日ここに来ているみたい。


誰も来ないこの場所で、フェルナンド殿下は何を考えているんだろう…


気になって仕方がない。

いっそのこと話しかけてみようか?


でもフェルナンド殿下と王太子の関係は良くない。

エイリーン様は王太子を心から愛してる。


もしも私がフェルナンド殿下に近づいたら、エイリーン様はどう感じるだろう…


エイリーン様にも嫌われたくない、でもフェルナンド殿下も気になる。


あ~~、どうすればいいのよ!



今もエイリーン様とマリア様とお昼を一緒に食べているけれど、全く話が入らない。


「リリー、どうしたの?あなたも悩み事?」



エイリーン様の言葉で、ハッと我に返る。

いけないわ。せっかくの楽しい昼食タイムなのに。



エイリーン様とマリア様は悩みがあるなら聞くと言ってくれている。

どうしよう…フェルナンド殿下の事言ってもいいかな…

でも、せっかく聞いてくれたんだもの、思い切って言ってみよう。


私はフェルナンド殿下が気になっていることを、2人に話す。

エイリーン様、どんな反応を示すかしら…


そんな不安をよそに、エイリーン様は「リリーがフェルナンド殿下を気になるのなら、そうすればいい」と言ってくれる。


でも…


「エイリーン様は私がフェルナンド殿下と仲良くしても、平気なの?だって…カルロ殿下の事もあるし…」



私はずっと気になっていたことを口にしてみた。目を丸くするエイリーン様。


「リリー、私に気を使ってくれたのね、ありがとう。でも私もフェルナンド殿下の事は気になっていたのよ。だから私の事は気にせず、あなたが思うように行動して!あなたならきっとフェルナンド殿下の支えになれるわ」



エイリーン様はそういうと、優しく微笑んでくれた。

そうだ、エイリーン様はそういう人だ。


誰にでも優しく誰にでも気を使える人。あの器の小さな王太子じゃあるまいし。エイリーン様は私がフェルナンド殿下と仲良くしたからと言って、とやかく言う人じゃないわ。



私はエイリーン様に背中を押され、俄然やる気が出てきた。

よし、早速明日から、フェルナンド殿下と仲良くなる為に行動を起こさなくっちゃ!


エイドリアンは次の日、リリーに謝りましたね。

彼は身分で差別する人間のことが嫌いです。


それにもかかわらず、身分が低いリリーがエイリーンに友達になって欲しいと言ったことを批判してしまいました。そのことを後になって気づき後悔したのです。


※実際はエイリーンに小言を言った時、「エイドリアンは身分で友達を選べって言うの?」という一言で気づいたようです。


彼は自分が間違ったことをしたときは、身分に関係なく頭を下げることが出来る素敵な人です。


余談ですが

エイドリアンには婚約者がいます。

相手は隣国でもあるシュメリー王国の第二王女です。


彼が13歳の時、たまたま視察に付いて来ていた第二王女がエイドリアンに一目ぼれ。

熱烈アプローチの末、見事エイドリアンを落としたのです。第二王女はエイドリアンより2つ年上。


結婚するまではお互い自国で生活するという約束なので、中々会うことが出来ない2人。

でも休みを利用して、第二王女はよくアレクサンドル王国に遊びに来るので、エイリーンとも仲良しです。



ちなみにフィーサー家では政略結婚はあまり考えておらず、「子供たちは好きな人と結婚を」というスタンスです。


たまたま2人共身分の高い相手を捕まえただけ!

そう、たまたまです。



次回もリリー視点です。

よろしくお願いします。


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