平和な日々に感謝です
本日2回目の更新です!
聖女様が亡くなった次の日、学院に行くとカルロ様が既に待っていた。
今日はお昼ご飯を一緒に食べられない日なので、朝早めに来て会うことになっていたのだ。
いつものように、カルロ様に手を引かれ、中庭へとやってきた。
早朝ということもあり、人はまばらだ。
カルロ様と向かい合わせに座る。
「エイリーン、今日は大事な話があるんだ、君も公爵から聞いていると思うが、昨日聖女が亡くなった」
「ええ、聞いておりますわ」
「それで…早くて半年、遅くとも数年後には新しい聖女が誕生する。エイリーンも聞いているかもしれないが、聖女は基本的に王族と結婚する決まりになっている」
「ええ、昨日父から聞きました」
「こんなことは言いたくないのだが…新しい聖女がもし王妃になる事を望んだら…」
カルロ様は黙ってしまった。
きっとこの先の言葉を言えば、私が傷つくと思っているんだわ。
「カルロ様、昨日父から全て聞いています。もし聖女様が王妃になる事を望んだ場合、私との婚約を解消し、聖女様がカルロ様の婚約者になるのだと」
私はカルロ様の目をみてはっきりという。
「そのことなんだが、もし…もしそうなった場合は、僕は王太子を第二王子に譲ろうと思っている」
「カルロ様!」
「もともと僕は王太子になりたかった訳ではないんだ!だから王太子に未練なんかない!
エイリーンを失う方が僕には辛い。このことは父上や母上には既に昨日話してある」
「陛下や王妃様はそれを承諾されたのですか?」
「ああ、最初は渋っていたが、最後は了承してくれたよ。それに僕がどれほどエイリーンを好きか、2人とも知っているしね。父上も母上も、もし聖女が王妃を希望しても、出来るだけ回避できるよう全力を尽くすと言ってくれたしね」
カルロ様はそこまで考えていてくれていたのね。
「でも、エイリーンは?もし僕が王太子を第二王子に譲ることになれば、僕は家臣になる。そうなったとしても、付いて来てくれるかい?」
カルロ様が不安げに私に問いかける。
「そんなの決まっていますわ。もちろん、カルロ様に付いて行きます!そもそも私も王妃になりたかったから、婚約したのではありません。カルロ様をお慕いしているから婚約者になったのです。たとえカルロ様が平民になっても、私は付いて行きますわ!」
私がそう答えると急にカルロ様が立ち上がった。
どうしたのかしら?
そう思った瞬間、腕を引っ張られそのままカルロ様の胸へダイブ!
そのままギューっと抱きしめられた。
「エイリーン、ありがとう。ありがとう」
カルロ様が何度もお礼を言う。
「カルロ様、お礼を言うのは私のほうですわ。私を選ぶと言ってくれてありがとう」
私もお礼を言い返す。
きっと周りにいる人たちはびっくりしているかもしれない。
でも、今はそんなことを気にしていられない。
私の為に、カルロ様は王太子の椅子を捨ててもいいと言ってくれたんだ。
多分、そんなことにはならないと思うが、何より気持ちが嬉しい。
絶対この人を幸せにするわ!本当は魔王との最終決戦の洞窟で、自分の命に代えてもカルロ様を助けようと思っていたけれど、やめた。
私も生きたい。生きてカルロ様と幸せになりたい。絶対2人で生き残って見せるんだから!
しばらく抱き合っていたのだが、ふいにカルロ様の体から引き離された。
「ずっとこうしていたいけれど、そろそろ授業が始まる時間だね」
そう言うと、どちらともなくお互い手を絡ませて、教室へと向かう。
もう手を繋ぐのも随分なれた。誰に見られても平気だ。
教室に入ると、マリアが駆け寄ってきた。
「エイリーン、大丈夫?聖女様が亡くなったって聞いて、私心配で…」
侯爵令嬢でもあるマリアは、きっと私の置かれている状況を知っているんだろう。
「ありがとう、マリア。でも大丈夫よ、今その件でカルロ様とも話をしたし」
私は笑顔で答えた。
「その様子だと大丈夫そうね。良かった。安心したわ」
マリアは本当に友達思いで優しい。
本当にマリアと友達になれて良かったわ!
そしてその日の放課後、やっとリリーを捕まえることが出来た。
昨日のお昼、フェルナンド殿下の元に行ってから、中々時間が取れなかったが、やっと放課後3人でお茶をする時間を確保することが出来たのだ。
「それで、フェルナンド殿下とどうなったの?」
私はリリーを早速問い詰める。
私の勢いに、マリアは苦笑いしている。
「うん、ありがとう。お陰様で、恋人同士になれたわ」
真っ赤な顔をして嬉しそうに話すリリー。
え~~~、もう恋人同士になったんかい!
漫画ではカルロ様の絡みもあって、中々恋人に発展しなかった2人。
なのに、もう恋人同士になったの?
早すぎでしょう!
「良かったわね、リリー、頑張った甲斐があったわね」
マリアが嬉しそうにリリーを祝福している。
おっといけない、私も祝福しないとね。
「本当に!泣きながら私たちの元に来たときはどうなる事かと思ったけれど、良かったね。リリー」
「2人ともありがとう。でも2人がいなかったたら、私きっと諦めていたわ。本当にありがとう」
リリーが深々と頭を下げる。
「そんなこと気にしないで。私もリリーが幸せになってくれると嬉しいもん」
私がそういうと、マリアもうなずいた。
「それにしてもあのフェルナンド殿下の心を開くなんて、リリー、すごいじゃない」
マリアがリリーを茶化す。
「本当よね、リリーすごい!」
私も茶化してみた。
「もう、2人とも止めてよ!」
リリーはさらに真っ赤な顔をして否定している。
その姿を見て、私たちは笑う。
その後も私たち3人は、話に花を咲かせた。
この何でもない日々がきっと、幸せなんだろうな。
これから聖女誕生・断罪(ないと良いのだが)・魔王復活と色々な事件が私たちを待っている。
でも、みんながいたらきっと乗り越えられる、そんな気がする。
今はこの平和な日々を、存分に楽しんでおこうと思うエイリーンであった。
カルロ様は何があってもエイリーンを選ぶようですね。
エイリーンも2人で生きていくことを決意しました。
リリーとフェルナンド殿下も無事?恋人同士になりました。
後はマリアだけ??
次回からリリー視点です。
3話ほど続きます。
よろしくお願いしますm(__)m