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先代の聖女様が亡くなりました

カルロ様に素直に気持ちを伝えて以降、週3回お昼を一緒に食べられるようになった。


さらに出来るだけ毎日会いたいというカルロ様の意見を聞き、お昼を一緒に食べられない日は、早朝か放課後どちらか時間を作るようにした。


今まで遠ざかっていた王宮にも休日はよく足を運ぶようになった。なぜか王妃様から頻繁にお茶に誘われるのも、私が王宮に足を運ぶようになった理由でもある。



ちなみに今日はカルロ様が生徒会の集まりなので、マリアと一緒に中庭でお昼を食べている。


リリーはフェルナンド殿下の元へ毎日行っているので、お昼は2人だ。

私がカルロ様とお昼を食べるときは、マリアは1つ上の従姉妹と食べているみたいなので


「気にしなくていいよ」


と、マリアは言ってくれる。本当にマリアは優しく友達思いだ。



「そういえばマリアは婚約者とかいないの?」



私が以前から気になったことを聞いてみる。

令嬢の場合幼い頃から婚約者が決まっている場合も多い。特に身分の高い侯爵家ともなれば尚更だ。


「実はまだいないのよね。でもその辺りは父に任せているから」


あら、まだいないのね。まあ、マリアは可愛いから、きっと色々なところから縁談の話はきているんだろうけど、きっと侯爵が厳選しているのね。

私は勝手に納得する。



「エイリーン様、マリア様」

ん?この声は、リリー?


私とマリアは声のする方を振り向くと、泣きそうな顔のリリーが立っていた。


「どうしたの?リリー。一体何があったの?」

私が問いかける


「私、毎日毎日フェルナンド殿下のものに通っていたでしょ。私が一方的に話していることが多いんだけどね、今までフェルナンド殿下は特に拒絶される素振りを見せなかったの。でも…でも今日は…」


泣き出すリリー。私とマリアはリリーの背中を優しくさする。


「“毎日毎日迷惑だ。もう来ないでほしい”って言われちゃったの」


ワーっと声を出して泣き出すリリー。


このシーン漫画で見たことあるわ。確かリリーがフェルナンド殿下の元へ向かうことで、良くない噂が流れたんだわ。確か“フェルナンド殿下をたぶらかそうとする売女!”みたいな噂だったような気が…


その噂を知ったフェルナンド殿下が、リリーを守るため、あえて突き放すのよね。


でも…その噂流したのって、漫画の世界ではエイリーンだったわよね。私そんな噂流していないわよ…


それにしても、このままではいけないわ!

私は泣きじゃくるリリーの両肩に手を乗せると、リリーに問いかける。


「それでリリーはどうしたいの?このまま諦める?」


私の言葉に、リリーは一瞬泣き止んだ。


「私…諦めたくない。1ヶ月以上フェルナンド殿下と過ごして、とても居心地が良かった。

この人と一緒にいたいと思ったの。でも…」


「だったらやることは決まっているじゃない!リリー、あなたの魅力は諦めないところよ。フェルナンド殿下に、今の気持ちしっかり伝えておいで。もしダメだったら、その時は私とマリアがしっかり慰めてあげるから。ね、マリア」


私の問いに、マリアもうなずく。


「ありがとう、エイリーン様、私、きちんとフェルナンド殿下に気持ちを伝えてくる」


そう言うと、リリーは走ってフェルナンド殿下のもとへと向かった。

大丈夫だよ、リリー。だってあなたはヒロインなんだから!


その日の午後、リリーとフェルナンド殿下、2人そろって授業を欠席した。

これはうまくいったかな?



放課後、私はカルロ様と一緒にお茶を楽しんでいた。

その時、カルロ様専属の騎士がやってきた。



「殿下、お取込み中失礼いたします。至急王宮へと戻るよう陛下から連絡が入りました。今すぐ馬車へお乗りください」


ただ事ではない様子だけれど、何かあったのかしら?


「何かあったのかい?」


カルロ様も私と同じことを思ったのだろう。騎士に聞いている。


「私も詳しいことは…」


「わかった、すぐに戻ろう。エイリーン、ごめんね。僕は急いで王宮に戻らないといけなくなった」


「私は大丈夫ですわ。カルロ様早く行って」


私がそう言うと、カルロ様は私を軽く抱きしめると、走って行ってしまった。


一体何があったのかしら?


カルロ様が帰ってしまったので、私も家へと帰ることにした。


家に帰って夕食の時間になったので、食卓へと向かったがいつもいるはずのお父様がいない。


遅いのかしら?

もしかしてカルロ様が急に王宮に呼び戻されたことと、何か関係があるのかしら?


「お母様、お父様は?」


気になってお母様に聞いてみる。


「今日は帰りが遅くなるみたいよ。何か王宮でトラブルでもあったんじゃないかしら?」


お母様も知らないようだ。

一体何があったのかしら?


食事も終わり、お母様とエイドリアンと一緒にティータイムを楽しんでいた時、お父様が帰ってきた。


「ただいま、実はみんなに大事な話があるんだ。悪いがすぐに書斎に来てくれるかい?」


やっぱり何かあったんだわ。



私たちは書斎に入ると、お父様とお母様、向かいに私とエイドリアンがそれぞれ座る。


「実は今日、聖女様がお亡くなりになったんだ」


ついに来た!私は心の中で叫ぶ。


「えぇ、随分急ね!ご病気だなんで聞いたことなかったし、確か聖女様はまだ58歳のはずよ!」


お母様が驚いたように言った。確かこの国の平均寿命は70歳程度。そう考えると比較的若めだ。



「昼ごはんを召し上がった時まではお元気だったそうなんだ。ただその後メイドが様子を見に行ったときには、お亡くなりになっていたらしい」


「まぁ、本当に急だったのね。でもなぜこのタイミングで…」


お母様が意味深な言葉をつぶやく。

お父様も深刻な顔をしている。


「父上、聖女様が亡くなったということは、魔族は大丈夫なのでしょうか?」


さすがエイドリアン、聖女様が結界を張っているため、今は魔族は入り込めない。

でも聖女様が亡くなった今、どうなるんだろう?


「それは大丈夫だ。聖女様が亡くなっても5年は結界をそのままキープできる。通常次の聖女様が現れるまで、半年~3年程度だから、その点は問題ない。ただ…」


お父様が言葉に詰まる。

一体何を悩んでいるのかしら?


「ただ、何ですか?父上」


「聖女様は通常10代の女性がなる事が一般的だ。そして、新しく誕生した聖女様は、王族と結婚するのが決まりなんだ」


「ということは、カルロ殿下かフェルナンド殿下と結婚するということですか?」


「そうなるな」


「でもカルロ殿下は婚約者のエイリーンがいますよね?ならフェルナンド殿下と結婚されるのでは?」


「いや…そうとも限らない…聖女様が王妃になる事を望めば、エイリーンとの婚約は破棄され、新たに聖女様がカルロ殿下の婚約者になる。実際そういった聖女様も過去にいたとのことだし…」


あぁ、それで漫画の世界のエイリーンはリリーを毒殺しようとしたのか。

漫画ではその辺を詳しく書いてくれなかったから、あまり深く考えていなかったけれど。


なるほどね!


「そんな…それではエイリーンがあまりにも可哀そうだ!」


エイドリアンが机を叩いて怒っている。

私の為にありがとう、エイドリアン。でも、聖女はリリーだから大丈夫よ。

彼女はフェルナンド殿下を選ぶはず。

多分…


って、言いたいけれど言えないのが辛いわよね。


「もちろん先代の聖女様の様に、生涯独身を貫かれる方もいらっしゃるから、一概には言えない。ただ、可能性があるというだけの話だ」


お父様もお母様もエイドリアンも辛そうな顔をしている。

ここは何とかしないとね。


「お父様、お母様、エイドリアン、私の為に色々悩んでくれてありがとう。でも、私は大丈夫よ。もしお父様の言う様に、最悪な事態になったら、その時また考えましょう。まだ新しい聖女様も誕生していないのに、今からそんな話をするなんてナンセンスよ」


「そうだね、エイリーン。ただ…可能性としてそうなることもあると、心に留めておいてほしい」


「わかったわ、お父様」


私は出来るだけ笑顔で答える。


でも漫画では結局カルロ様と私は婚約破棄をした。ということは…

ダメダメ、悪いことを考えるのは止めましょ!


とにかくリリーが聖女として目覚めるのは、1年の終わり。まだ半年以上もある。

今考えても仕方がないわ。

私はリリーを信じよう!

そう心に誓ったエイリーンであった。


王妃様はなんだかんだカルロ様を気にかけている様で、頻繁にエイリーンをお茶に誘うという名目で王宮に呼び出しているようです。


やっぱり、自分の子供には王妃様も甘いようですね。



ちなにみ先代の聖女様。当時唯一の王族でもあったカルロ殿下のおじい様との結婚話もでたのですが、実はカルロ殿下のおじい様は大の女好きだったとか…


こんな女好きと結婚するくらいなら、独身を貫くわ!と言うことで、独身を貫いたそうです。


カルロ様、おじい様に似なくてよかったね!


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