もう1人友達ができました
本日2回目の更新です。
入学式当日に、ヒロインと友達になるという奇跡?をおこした私。
順調にリリーとの仲を深めていっている。
とにかくリリーは私に負けず劣らずポジティブ。
男爵令嬢と身分は低いけれど、物怖じすることなくはっきり物事を言う。
そう…
はっきりと…
「ニッチェル嬢、悪いが今からエイリーンと一緒にお茶をする予定なんだ。今日は遠慮してもらえないか?」
「あら、カルロ殿下、エイリーン様は私とお茶をするんですよ。ねぇ、エイリーン様!
今日は今庶民の間で流行しているお菓子を作ってきたんです。一緒に食べましょう。」
「エイリーンがそんな庶民のお菓子を食べる訳がないだろ!エイリーン、隣国から珍しい紅茶を手に入れたんだ、僕と一緒に飲もう」
貴族学院に入学してからというもの、事あるごとに言い争っているカルロ様とリリー。
なんだかなぁ…
「わかりました、では今日は3人でお茶にしましょう」
私の提案に明らかに嫌そうな顔をする2人。
あぁ…なんだか疲れるわ。
「たまにはいいじゃない?ねっ、さあ2人とも座って」
しぶしぶイスに座る2人。
「今日は天気がとてもいいわね。風が気持ちいいわ」
「そうですわね。エイリーン様。誰かさんがいなければもっと気分が良いのに…
そうだわ、私の作ったお菓子、ぜひ食べてみて」
リリーに勧められ、お菓子を口に含む。
これは!サクサクしたパイ生地の中にカスタードクリームがたっぷり挟んであって、めちゃくちゃ美味しい!
「リリー、これとっても美味しいわ。サクサクのパイ生地とクリームの相性抜群ね!」
「エイリーン様にそんなに褒めてもらえるなんて、作った甲斐があったわ」
嬉しそうに頬を緩ませるリリー。
「カルロ様、このお菓子とっても美味しいわ、カルロ様もぜひ食べてみて!」
私がカルロ様に勧めるが
「僕は良いよ、それよりこの紅茶飲んでみて!とっても美味しいよ」
そう言われ、メイドが入れてくれた紅茶を飲んでみる。
「まあ、なんて風味豊かで美味しいのかしら、味も香りも素晴らしいわ!」
「そうだろう!中々手に入らない紅茶なんだ。エイリーンの為だけに取り寄せたんだよ」
カルロ様は満足そうだ。
「せっかくだからリリーも飲んでみて!とっても美味しいわよ」
リリーに勧めてみるが
「私はそのような紅茶はちょっと…」
そう言うとカルロ様を睨みつけたリリー。カルロ様もリリーを睨んでいる。
はぁ~、本当に疲れるわ…
この日以来、エイリーンは絶対2人を同時にお茶に誘わないと誓ったのであった。
そんなある日、授業が終わりお昼ご飯を食べに行こうと思ったのだが、リリーがいない。
いつも必ず誘いに来るのに。
「リリー、どこへ行ってしまったのかしら?」
心配になり、リリーを探しに行こうとしたのだが…
「エイリーン、今日はニッチェル嬢と一緒じゃないだね。じゃあ僕と一緒にお昼ご飯を食べよう」
嬉しそうにカルロ様が話しかけてくる。
推しからの誘い、ものすごく嬉しいけれど…でも、リリーが気になる。
「ごめんなさい、ちょっと先生に呼ばれていて…また今度一緒にお昼を食べましょうね」
「それなら仕方ないね。また今度」
そう言うとカルロ様は去って行った。
ごめんなさい!カルロ様、でもきっとリリーを探しに行くなんて言うと、カルロ様は強引にでも私を食堂に連れて行くだろう。
嘘も方便って言葉もあるし、許してね、カルロ様!
カルロ様と別れ教室を出た私は、リリーを探し出した。
1年生の教室や中庭にもいない。後リリーが行きそうな場所ってどこかしら?
なんとなく足が向かった先は、校舎の裏。
まさか、こんなところにはいないわよね
そう思っていたのだが…
いた!
でも…これって…
私の目に映ったのは、漫画の世界でエイリーンの取り巻きをしていた令嬢3人に囲まれているリリーの姿。
何やら言い争いをしているようだ…
「あなた、いくらエイリーン様がお優しいからってちょっと調子に乗りすぎではなくって」
「そうよ、カルロ殿下にも、ひどい言葉を投げつけているそうじゃない?」
「本当にどういう教育を受けてきたらこんな図々しい娘に育つのかしら」
まぁ、なんて酷いことを!まるで漫画の世界のエイリーンみたいね!
あっ、エイリーンはもっと酷かったか…
「黙って聞いていれば好き勝手言ってくれるじゃない!私はエイリーン様の許可を得て友達になったのよ、あなた達にとやかく言われる筋合いはないわ。
それと、確かに私はあなた達のような、平気で人の悪口を言うような教育は受けて来ていないわね」
リリー、強い!さすがヒロインだわ。
「なんですってぇ~!黙って聞いていればいい気になって!」
令嬢の1人が大きく手を振りかざした。どうやらリリーを叩こうとしているようだ。
いけない、感心している場合じゃないわ。止めなきゃ!
私は急いで4人の元へ向かう。
「何をなさっているのかしら、あなた達」
私はリリーと3人の取り巻きの間に入った。
「エイリーン様、これは違うんです」
「何が違うの?リリーは私の大切な友達よ、リリーを侮辱する人は、我が公爵家をもバカにしていると私は捉えます。それでもかまわないなら、続きをどうぞ」
そう私が言うと、3人は真っ青な顔をして「すみませんでした」と言って、走って行ってしまった。
この光景、昔見た様な?
「エイリーン様、もしかして私を探しに来てくれたんですか?」
リリーは嬉しそうに訊ねてきた。
「ええ、姿が見えなかったから心配で」
私がそう言うと、「嬉しい、ありがとう」そういって抱き付いてくる、リリー。
なんだか犬みたいね。でも可愛いわ。
「少し遅くなってしまったけれど、お昼ご飯にしましょ。お腹空いたでしょ。せっかくだから今日はここで食べない?あそこにベンチもあるし」
私の提案に嬉しそうにうなずくリリー。
ベンチに向かおうとしたその時だった。
「あの、私もご一緒してもよろしいですか?」
誰かに声をかけられたのだ。
声の方向を向くと、そこには1人の女の子がいた。
確かこの子、同じクラスの…
「マリア・ベネフィーラと申します。突然すみません」
ベネフィーラ侯爵家と言えば、我がフィーサー家の次くらいに権力のある家。
もし私がいなければ、カルロ様の婚約者は彼女がなっていたかもしれない。それくらい身分の高い女性だ。
「公爵令嬢と男爵令嬢、身分を気にせず仲の良い2人を見ていて、ずっと羨ましいなって、私も仲良くできたらと思っていたんです。
私内気で、中々友達が出来なくて。身分が高いので色々な人が話しかけてはくれるのですが、ほとんどが政治的な理由というか…
私も本当のお友達が欲しいんです!だからお願いします」
深々と頭を下げる、ベネフィーラ嬢。
私とリリーは顔を見合わせ、うなずく。
「ベネフィーラ様、ぜひ私たちとお友達になっていただけると嬉しいですわ。ねぇ、リリー?」
「もちろんです、私の事はリリーとお呼びください」
「では私の事はエイリーンと」
私たちの言葉に、ぱっと笑顔になったベネフィーラ嬢。
「ありがとうございます。では私の事をマリアとお呼びください」
「よろしくね、マリア。後敬語も無しね」
その後私たち3人は、ベンチに座り仲良く昼食を食べた。
マリアは侯爵令嬢なのに、とても気さくで面白い。なぜ今まで友だちが出来なかったのか、本当に不思議なくらいだ。
そういえば、マリアは漫画の世界では出てこなかったな。私が忘れているだけかもしれないが、特に悪い子ではないのだから、あまり気にする必要はないわよね。
新しく出来た女友達!増々学園生活が楽しくなりそうね。
リリーとカルロ様、なぜか異様に仲が悪い。
まさに犬猿の仲。
漫画の世界ではあんなにリリーを愛していたのに…
出来れば2人には仲良くしてもらいたいけれど、カルロ様がリリーを好きになるのは嫌。
複雑な気持ちを抱いているエイリーンです。
また、今回新たに友達に加わったマリア嬢。
茶色の髪に紫の瞳の可愛らしい女の子です。
一人っ子ですが、従兄弟を養子に迎えているため、義理の弟がいます。




