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入学式の日を迎えました

ヒロイン登場します。

「お嬢様、朝ですよ、起きてください」

メイドのアンナが起しに来た。


「う~ん、もう少しだけ…」


昨日いろいろ考えていたら中々眠れなかったせいで、まだ眠い。


「お嬢様、入学式早々遅刻するおつもりですか!早く起きてください!」


アンナは布団をはぎ取った。

私の記憶が戻ったばかりの頃は恐怖でオドオドしていたアンナだったが、今ではすっかり逞しくなったもんだ。


仕方がない、起きるか。


私はベッドから起き上がり、冷たい水で顔を洗う。

よし、覚醒してきたぞ。

制服に着替え、改めて鏡の前に立つ。


私は悪役令嬢エイリーン、でも絶対漫画の様にはならない!

絶対に!

そう気合を入れる。


そして家族の待つ食卓へと向かう。


既に両親とエイドリアンは食事をしていた。


「おはよう、エイリーン、今日から貴族学院だね。王妃教育もある程度終わったことだし、学生生活を存分に楽しみなさい」


「ありがとうございます、お父様」


そう、9歳から始まった王妃教育は、2ヶ月前に一旦終了となった。ある程度習得できたということもあるが、貴族学院に通う3年間は、学生生活を楽しんでほしいからと、カルロ様が王妃様に掛け合ってくれたのだ。


カルロ様って本当に優しいわ。そういえば漫画の世界では2人の関係はかなりギクシャクしていたけれど、今のところ良好の様だ。


その点はすでに漫画とは違うのよね。後違う点と言えば、漫画ではカルロ様とフェルナンド殿下2人兄弟だったはずなのに、現実ではソフィア王女が産まれたのよね。


少しずつ物語が変わってきているのかしら?


そんなことを考えながら食事をしていると


「エイリーン、早く食べないと遅刻するぞ」


エイドリアンに声をかけられた。


そういえばエイドリアンとの関係も漫画とは違うわよね。でもその点は私の努力の賜物だけれど…


って、いけない、早く食べないと本当に遅刻してしまうわ!


私は慌てて食事を済ませ、身支度を整えると、エイドリアンが待つ馬車へと急いだ。


貴族学院には馬車で行くのが一般的だ。ただ家庭の事情などで、徒歩で通学する生徒も中にはいる。


「お待たせエイドリアン、待たせてごめんね」


「別にそんなに待っていないよ。それより走ってきた?髪が少し乱れている」


そういうと、エイドリアンが手櫛できれいに髪を直してくれる。


エイドリアンは基本的にとっても優しい。


学園までは馬車で10分程度と、比較的近い。あっという間に貴族学院に到着した。


エイドリアンにエスコートされながら馬車から降りると、カルロ様が待っていてくれた。


「エイリーン、おはよう。制服よく似合っているね。とっても可愛いよ!」


「カルロ様、わざわざ出迎えてくれたのですか!まあ、嬉しい」


私は嬉しくて満面の笑みを見せる。


「エイリーン、俺先行くわ」


私たちのやり取りが恥ずかしかったのか、エイドリアンは1人でスタスタ行ってしまった。

エイドリアンって意外とウブよね。


「僕たちもそろそろ行こう、入学式に遅れてしまうよ」


カルロ様はそういうと、私の手を取って歩き出した。

えぇ~、ただでさえ目立つ私たち。手を繋いで歩いたら、余計見せ物になる。

これはさすがに恥ずかしいわ。



「あの、カルロ様、さすがに学院内で手をつなぐのは恥ずかしいですわ」


そう伝えてみたが


「僕たちは婚約者なんだ。手を繋ぐのは当たり前だろ。さあ行こう」


手を放してもらえず…

私は顔を真っ赤にしながら、入学式の会場となるホールへと向かった。


ホールへと向かう途中、ある少女が目に入る。

肩のあたりまで伸びたハニーピンクのフワフワの髪、サファイアの様なブルーの瞳、間違いない、ヒロインだ。


私はヒロインに釘付けになる。

次の瞬間、ヒロインが転んだ。


そうだわ、この時カルロ様が転んだヒロインを助け、ハンカチを渡すのよ。

これが2人の出会いだわ。

すかさずカルロ様の方を見るが、全くヒロインを見ていない。


あれ?


私は歩みを止めてしまった。


「どうしたの?エイリーン?」


カルロ様に訊ねられるが、何と答えていいかわからない。


無意識にヒロインの方を見ると、カルロ様もヒロインに気が付いた。


「あぁ、あれは確か男爵令嬢の、リリー・ニッチェル嬢だな。転んだのかな?」


そう言ったカルロ様だが、特に助ける素振りは見せない。


中々立ち上がらないヒロイン。周りも見て見ぬふりをしている。


もう!どうして誰も助けないのかしら、ヒロインが可哀そうでしょ!


見かねた私は、カルロ様の手を振りほどき、ヒロインの元へと向かった。


「大丈夫ですか?」


私はヒロインに声をかける。


「はい、ありがとうございます。ちょっと転んでしまって…」


見ると、ひざをすりむいて、泥も付いている。

可哀そうに!


「まあ、膝をすりむいておりますわ。すぐに治療いたしますね」


そういうと、私はすぐにヒロインの膝に手をかざし「治れ」と念じる。

あっという間にきれいに治った。


「よろしければ、このハンカチで泥を落としてくださいませ」


私はハンカチを渡した。


ヒロインは頬を少し赤くし「ありがとうございます」とお礼を言う。

やっぱりヒロインは可愛いわね。


ついつい鼻息が荒くなってしまうわ。


「エイリーン、そろそろ行かないと、本当に入学式に遅れるよ」


カルロ様に手を掴まれ、そのまま引っ張られるように歩き出す。



「なんてお優しい方なのかしら…」


んん?今ヒロイン何か言わなかったか?


声が小さすぎて聞こえなかったが、まあいいか。


それにしてもヒロイン、可愛かったな。私がニヤニヤしていると、カルロ様は立ち止まり、私の方へ向き直した。


「エイリーン、こんなことは言いたくないけれど、治癒魔法はとても貴重なんだよ、だれかれ構わず使うものじゃない。君は少し使い過ぎだ。もうちょっと考えて使わなきゃダメだよ。わかった?」


ん?カルロ様はヒロインに治癒魔法を使ったことがお気に召さない?なぜだ…



とりあえずカルロ様、怒っているようなので謝っておこう。


「ごめんなさい、これからはもっと考えて使う様にするわ」


「わかってくれたらいいんだよ、さあ行こうか」


私が謝ったことで納得したのか、満足そうにしている。

そして、なぜか私の腰に手を回し、歩きはじめた。


近い!近すぎるわ…

カルロ様のいい匂いがするし、周りも生暖かい目で見ているし…


私は恥ずかしくて下を向いて歩く。


それにしてもヒロイン、可愛かったなぁ!

あんな可愛い子、どう考えてもイジメたりなんてできない。


それに…カルロ様とヒロインの出会いも微妙だったし。昨日あれだけ悩んででたのに、なんだかバカみたいね。


でもまだ物語は始まったばかり、どう転ぶかわからない。

気を引き締めていかなくっちゃ!


一般的に治癒魔法はとても貴重です。

それはある程度魔力を持った人しか使えないうえ、魔力量の消耗が早くすごく疲れてしまうから。


でもエイリーンは魔力量も高く、長年にわたり魔力アップ訓練を行っているため、多少の治癒ならビクともしません。


逆に、魔力量アップにつながるからラッキーっと思っているくらいです。

(ちなみに14歳時エイリーンの魔力量は余裕で黒です。下手するとエイドリアンより高いかも…)


そのため、ことあるごとに治癒魔法を使うエイリーン。


怪我を治してもらった人は、「自分なんかに治癒魔法をかけてくれるなんて、なんて優しい人なんだ」と、エイリーンに好意を抱く人がほとんどです。



実際ジーク殿下も、治癒魔法でエイリーンに恋してしまいましたしね。


そんなエイリーンを間近で見ているカルロ様は、いつかエイリーンを誰かに取られるのではないかと、気が気ではないのです。


ついに今回、治癒魔法を控えるように言われましたが、さてエイリーンは守れるのでしょうか(;'∀')

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