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王妃教育はものすごく大変です

公爵令嬢の私と婚約したカルロ様は、王妃様の思惑通り無事?王太子に内定した。通常王太子が決まると、他国の王族を招待し、盛大なお披露目を行うことになっている。



ただカルロ様はまだ9歳。成人として認められる12歳になってから、お披露目は行われることになった。このお披露目の時に、私もカルロ様の婚約者として正式に発表されることになっている。



そのため、今私はカルロ様の婚約が内定した状態なのだ。そしてカルロ様の王太子内定に伴い、始まったのが王妃教育。未来の王妃になるため、私は毎日王宮に通い、王妃教育を受けている。


この王妃教育、はっきり言って尋常ではないほど厳しい。もちろんフィーサー家でも、公爵令嬢としてそれなりの教育を受けてきた。でもそんな教育とは比べ物にならないほど、厳しいのだ。



とにかく覚えることが多い。例えば、交流国とよりよい関係を築くために必要不可欠な、言葉と歴史だ。


1か国語でも大変なのに、10ヶ国以上ある言葉と歴史を覚えるのだから、頭がパンクしてしまう。まあ言葉と言っても、あいさつ程度の基礎的な部分だけなんだけど、それでも大変だ。


そして笑顔の練習や、お茶の飲み方などのマナー。ちょっとでも角度が違ったり、笑顔が引きつっていると厳しく注意される。


今まで実家で大事に育てられてきた私は、怒られ慣れていないこともありかなり辛い。でもそんな王妃教育の中で、唯一楽しみな時間が存在する。それは、婚約者でもある推しのカルロ様とのティータイムだ。


王妃教育が終わる時間に合わせ、カルロ様がお茶に誘ってくれるのだ。カルロ様も王太子に内定してかなり忙しいはずなのに、わざわざ私の為に時間を作ってくれる。


なんて優しいのかしら!!



今もカルロ様とお庭でティータイム中。

「先生ったらひどいのよ!

“もっと柔らかい笑顔はできないのかしら。ただでさえ吊り目で印象がきつそうなのに、そんな引きつった笑いでは相手に怖がられてしまいますわよ”

ですって。吊り目は生まれつきなんだからどうしようもないじゃない。そう思わない?」


「それはひどいね、エイリーンのちょっと吊り上がった瞳、僕は結構好きだけどな」


「まあ!カルロ様がそう言ってくださるのなら、この吊り目も悪くはないですわね」


カルロ様は相変わらずとっても優しい。

最初の頃はお互い緊張してうまく話せなかったけれど、最近はだいぶ普通に話せるようになってきた。まあ、ほとんど私が話しているんだけどね。


「そうだ、エイリーン、今日は時間があるし、僕の秘密の場所を教えてあげる。付いてきて」


そういうとカルロ様が私の手を取って歩き出した。向かった先は王宮の図書館。奥方に進むと、1つの本棚の前で立ち止まった。


「図書館が秘密の場所ですの?」


「違うよ。まあ見てて」


目の前の本棚に手をかけたカルロ様は、横にスライドさせた。そこには秘密の通路が!


「ここは王族だけが知っている秘密の通路だよ」


「まあ、そんな大切な情報、私が知ってもよろしいの?」


「もちろん、エイリーンはいずれ王妃になるのだから、問題ないよ」



再びカルロ様は私の手を取り、通路を進んだ。通路の奥の扉を開けると、そこは王宮の裏側。王宮は小高い丘の上にあるため、そこからは王都が一望できる。


「まあ、なんて素敵な景色なのでしょう!」


「ここはほとんど誰も来ないからね、僕も1人になりたい時にはここに来るんだよ。エイリーンもいつでも来てもいいからね」



「カルロ様、こんな素敵な場所を教えていただき、ありがとうございます。でもカルロ様と2人の時に来るようにするわ」



2人だけの大切な場所。なんて素敵なのかしら。そんな夢のような時間を過ごした数日後。今日も私は王妃教育を受けていた。





「エイリーン様、背筋が曲がっておりますわ。カップの角度も良くありません」

今日はティータイムのレッスンだ。王妃にもなると色々な人とお茶をすることも多い。もちろん優雅にスマートに行わなければならない。


今日も私は、教育係に注意を受けていた。

「そうではありません、何度言えばわかるのですか?そんなことでは立派な王妃にはなれませんよ。あなたがきちんとできないと、王太子殿下が恥をかくことにもなるのですよ!!」


そんなことわかっているわよ…でもできない物はできないのよ。

そう思ったら、ぶわっと涙が込み上げてきた。


「人前で泣くのではありません!そんなことでは王太子殿下の婚約者は務まりませんよ」


そういわれて、私は涙をぐっと我慢する。

「今日は少し早いですが、これでレッスンは終了します。もう少しご自分のお立場をしっかり考えてくださいね」

と言うと、教育係は部屋から出ていった。



私も部屋を出たものの、このままカルロ様に会う気にもなれない。無意識に歩いていると、以前カルロ様に教えてもらった秘密の通路の前に来ていた。


確かあの場所は人がほとんど来ないって、カルロ様が言ってたっけ…今は1人になりたい…


私は隠し通路を通り、王宮の裏側へとやってきた。私の気分とは裏腹に、外は青空が広がっている。王都が一望できる位置に備え付けられている、小さなベンチに腰を下ろした。


私だって頑張っているのに…

そう思うと涙が込み上げてきた。ここは誰もいない、泣いても良いよね。そう思ったらもう止まらない。声を上げてワーワー泣いた。


「私だって一生懸命やっているのよ!あんな言い方しなくていいじゃない。まだ9歳の子供なのよ」

大きな声で泣きながら叫ぶと、気持ちいい。


「私だってカルロ様の為に頑張りたい。だってカルロ様が大好きだもん、でも…できない物はできないのよ~。そもそも人間なんだから泣いたっていいじゃない。先生のバカ~」


しばらくワーワー泣き、大きな声で叫んだら、少しスッキリした。

心地よい風とお日様が気持ちいい…





「…リーン、エイリーン、起きて、こんなところで寝ていると風邪ひくよ」


体が揺れている…この声はカルロ様?

パチッと目を開けて見上げると、そこにはカルロ様が!

どうやら泣きつかれてベンチで眠ってしまったようだ。


「中々来ないから心配したんだよ、ここにいたんだね」

カルロ様が優しく微笑んでいる。この笑顔、癒される~


「勝手に来ちゃってごめんなさい」


「エイリーンが来たい時にいつでも来てもいいんだよ、そのためにこの場所を教えたんだから。さあ、ティータイムにしよう。今日は珍しいお茶を取り寄せたんだ」


「まあ、それは楽しみですわ」

私は差し出された手を取って、いつものティータイムの場所へと歩き出した。


温かくてがっしりとしたカルロ様の手!こんなところまで探しに来てくれるなんて、本当にカルロ様は優しい。そんなカルロ様を絶対死なせたくない!


辛いこともあるけれど、カルロ様の為にもっと頑張らないと!そう決意を固めるエイリーンであった。


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