カルロ様はとっても素敵な方です!
「カルロ様って本当に素敵だったのよ。とっても優しいし声も素敵だし、私がバランスを崩した時もしっかり受け止めてくれて!もう最高だったのよ」
私はクネクネ体をうねらせながら、昨日の出来事をアンナに話していた。
今日は貴族学院が休みなので、メイドのアンナが私の話し相手として来てくれているのだ。
実は私は貴族の友だちというものがいない。
どうも貴族令嬢のうわさ話や自慢話が好きになれず、オリエンダル侯爵家のお茶会以降、数えるほどしか出ていない。
そのため仲の良い友達が出来ず、色々と相談できるのは、今やアンナくらいなのだ。アンナとは今では姉妹のように何でも話し会える仲になったと、私は思っている。
「それは良かったですね。お嬢様はお優しくて本当に素敵な方ですから、きっと殿下もお嬢様の魅力をご理解いただけたのでは?」
「それはどうかしら…」
何といっても私は悪役令嬢だからなぁ。でも少しでもカルロ様と仲良くなれたら嬉しいな、もちろん、仲良くなれるよう努力はするつもりだけれど…
あっ、そうだ、今日はアンナに渡さなきゃいけない物があるんだった。
「アンナ、少し早いけれどお誕生日おめでとう。これ、プレゼント」
そう、3日後はアンナの誕生日だ。前世の記憶が戻って以来、アンナはもちろんお世話になっている使用人たちにも、毎年必ず誕生日プレゼントを渡している。
最初は仲良くなるために贈っていたが、最近ではプレゼントを選ぶのも楽しみの一つ。プレゼントを渡すとみんなすごく嬉しそうな顔をする。その笑顔を見ると私まで嬉しくなるのだ。
今回アンナには、クローバーのチャームがついたシルバーのブレスレットだ。今王都で流行っているらしい。
「お嬢様、ありがとうございます。とってもかわいい、大切にしますね」
アンナは嬉しそうに早速ブレスレットを腕につけてくれた。
アンナとたわいもない話を楽しんでいると、ドアをノックする音が。
“コンコン”
「失礼いたします。お楽しみのところ申し訳ございません。お嬢様、旦那様がお呼びです。」
お父様が?何だろう?まさかカルロ様との婚約の話?それにしても早すぎない?
「ごめんね、アンナ、お父様に呼ばれたからちょっと行ってくるね」
アンナに断りを入れ、早速にお父様の待つ居間へと向かった。
居間に入るとお父様とお母様、エイドリアンもいた。
私は空いているソファーに腰をかけた。
「アンナとのティータイムを邪魔して悪かったね。でもどうしても急ぎで話さなければいけないことが出来たんだ」
お父様がそういうと、私の方をまっすぐ見た。
「エイリーン、急なんだが王妃様からエイリーンをぜひ第一王子の婚約者にしたいとの話があってね。もちろん、エイリーンが嫌なら断っても良いんだよ」
待ってました~~!
でも昨日の今日ってえらい早くないか…
「父上、俺は反対です。こんなことは言いたくないのですが、今王宮では第一王子を王太子にしたい王妃派と、第二王子を王太子にしたい派閥が激しく対立していると聞きます。
このタイミングで王妃様が第一王子との婚約話を進めてきたということは、エイリーンを使って第一王子を王太子にしようと企んでいるのが見え見えです。」
「確かにエイリーンと第一王子が婚約すれば、第一王子が王太子になるのはほぼ決まりだろうな」
「それに第一王子は第二王子に比べ、勉学・剣の腕・魔力量、何をとっても劣っているうえ、口下手で人との関わりが苦手と聞いています。もしエイリーンが第一王子と婚約し王太子妃となったら、後々エイリーンが苦労するのは火を見るより明らかです。」
おうおう、エイドリアン君よ!黙って聞いてれば、よくもカルロ様のことを悪く言ってくれたわね。許すまじ!!
「エイドリアン、それは違います。確かにカルロ様は第二王子と比べれば勉学や魔力量は劣るかもしれません。でもそれ以上にカルロ様はお優しく、気遣いの出来るお方です。
見た目が素敵なのはもちろん、声もしぐさも何をとっても尊いのです。あの胸板も、ほのかに香る香りもすべてが素敵なのです」
とにかく私はいかにカルロ様が素敵かを、延々とエイドリアン(+両親)に語り続けた。途中からエイドリアン(+両親)が残念なものを見るような目になっていたが、まあ気にしないでおこう。
「…というわけで、いかにカルロ様が素敵で魅力的で尊いお方ということを理解していただけましたか?」
しばらく沈黙が続いた後
「エイリーンはカルロ殿下のことがとっても好きなのね」
「いいえお母様、好きなんて単純なものではありません。もはや崇拝しております」
興奮してついお母様に詰め寄ってしまったわ。もうドン引きの世界ね…
「とにかくエイリーンは第一王子と婚約したいということでいいのだな」
「はい、もちろんです。喜んでお受けいたしますとお伝えくださいませ!!!」
若干引かれてはしまったが、これで私がカルロ様をとてつもなく大切に思っているということを、家族にはしっかり伝わったようだ。
次の日お父様は王妃様のところへ行き、婚約をお受けする旨を伝え、私は晴れてカルロ様の婚約者になることができた。
本当はその日のうちに伝えてもらいたかったのだが、なぜかぐったりしているお父様を見たら、さすがにお願いすることはできなかった。
何はともあれ、無事カルロ様の婚約者になれたのだから良しとしよう。