カルロ様とかくれんぼをしよう
ストックが切れたので、しばらく1日一回更新になりますm(__)m
カルロ様と2人並んで歩いているなんて、夢みたい。それに、カルロ様は私の歩幅に合わせて歩いてくれている、なんて優しいのかしら。エイドリアンとは大違いね。
そんなことを考えているうちに、お庭に着いた。
さすが王宮。お庭というより庭園だ。めちゃくちゃ広い。それに色とりどりの花が並んでいる。中には見たこともないような花まで咲いている。
「わぁ~、なんてきれいなのかしら」
私が感激していると
「エイリーン嬢は、お花が好きなのですか?」
カルロ様が話しかけてきた。これって私に話しかけているのよね。なんて幸せなのかしら!あら、いけない!質問に答えなきゃ
「ええ、好きですわ、特にバラが好きです」
「バラなら奥にたくさん咲いているから、行ってみましょう」
そういうと、カルロ様は奥に向かって歩き始めたので、私も付いていく。奥にはそれはそれは見事なバラが咲き誇っていた。オリエンダル侯爵家のバラ園も素敵だったけれど、王宮のバラも本当に見事だ。
バラに見とれていると、土の上で何かが動いているのに気が付いた。気になって近づいていくと、小鳥が倒れていた。
羽根を怪我して動けないんだわ、まだ生きているかしら?そう思って小鳥を拾い上げた。
「どうかしたのかい?」
カルロ様が不思議そうに尋ねてきた。
「小鳥が怪我をしてしまったようで、でもまだ温かいから生きているみたいですわ。かわいそうに、すぐに治してあげるわね」
私は小鳥の羽根に手をかざし“治れ”と念じた。そうするとみるみる怪我は治り、小鳥は元気よく飛んで行った。
私の行為に目を丸くしてみていたカルロ様。
「私こう見えて治癒魔法が得意ですのよ」
と、自慢げに言ってみる。令嬢が治癒魔法を使うのが珍しかったのかしら?そう思っていると
「エイリーン嬢は優しいんだね」
優しい?私が?カルロ様に褒められるなんて、ヤバい、嬉しい。でも優しいと言えばカルロ様の方でしょう。
「優しいのは殿下の方ではございませんか?」
「僕が?」
「はい、さっきもずっと私の歩調に合わせて歩いてくれていたではありませんか。そういった気配りができる殿下は、優しいですわ」
そういうと、カルロ様はさらに目を丸くして固まっていた。あら?私おかしなこと言ったかしら?
「カルロ殿下、エイリーン様、お茶の準備が整いました」
どうやらメイドがお庭の一角にお茶を飲めるスペースを準備してくれたみたいだ。せっかくなので、2人並んでお茶を楽しむ。王宮のお茶はホントおいしいわ。
一息お茶を楽しんだ後…暇ね。カルロ様は何も話さないし、この沈黙は辛い…
カルロ様と仲良くなるにはどうすれば良いのかしら。そうだわ、一緒に遊べばいいのよ。前世では初めて会った子とも一緒に遊んだら、帰りにはもうすっかり仲良くなっていたし。
でも何して遊ぶ?鬼ごっこはドレスだから走れないし…そうだわ、かくれんぼが良いわ。
「殿下、今からかくれんぼをしましょ!」
「かくれんぼって、なんだい?」
カルロ様はかくれんぼを知らないのか…
とりあえず私はかくれんぼの簡単なルールを説明する。
「つまり鬼に見つかったら負けということだね」
さすがカルロ様、理解するのが早いわ。
「そうです、ではまずは私が鬼をしますから、殿下は隠れてください、30秒数えたら探しますので、それまでに隠れてくださいね」
そういうと私は目隠しをして、数え始めた。
30秒数え終わった私は、早速探し始める。どこかな~っと園庭を歩いていると
一人の護衛騎士と目が合い、さっとそらした。
そこだな護衛騎士に近づいていくと、やっぱり茂みの中にカルロ様が隠れていた。
「殿下みぃつけた~」
「もう見つかっちゃったか…」
「次は殿下が鬼ですよ」
そういって私は速足で、隠れる場所を探した。周りを見渡すと、お花とお花の間にちょっとしたスペースを見つけた。ここにしよう。早速隠れる!
でも…護衛騎士がついてきている
「ちょっとあなたがそこにいたら、殿下にばれるでしょ。あっち行って」
「ですが…」
「いいから行って!」
私の強い口調に諦めた護衛騎士は、少し離れた場所に移動した。
そもそもカルロ様も護衛騎士が近くにいたからバレたのだ。護衛騎士のせいでばれたらたまんないもんね。
しばらくするとカルロ様が探しに来たが、うまく隠れているおかげか、中々見つけられないようだ。次第に焦ってきたのか、「エイリーン嬢、エイリーン嬢」と叫びだした。ちょっと可哀そうかなっと思っていると、先ほどの護衛騎士がカルロ様に目で合図を出している。
その合図をみて、カルロ様がこっちにやってきた。
「エイリーン嬢見つけた」
あの護衛騎士、チクったわね。
「殿下、護衛騎士に聞くなんてずるいですわ!」
私が抗議の声をあげると、バツが悪そうに頭をかいていた。その姿も素敵ね!なんて思っていると、あれ?出られない。
お尻が隙間にすっぽりはまってしまって、私は出られなくなってしまったのだ。
いつまでたっても動かない私に、カルロ様は心配そうに
「どうしたの?大丈夫?」と声をかけてくれる。
まさかお尻がはまって出られないなんて、恥ずかしくて言えない。顔を真っ赤にしてうつむいていると、「僕につかまって」と言って、カルロ様が手を差し伸べてくれた。
その手を掴むと、力強く引っ張られ、お尻は無事抜けたが、バランスを崩しそのままカルロ様の胸の中へダイブ!
不可抗力とはいえ、カルロ様の胸の中に納まっている、ヤバい、まだ未完成ながらも鍛えられた胸板、それになんだかいい匂いがする。もう私いつ死んでも構わないわ!なんてうっとりしていると
「すまない」
真っ赤な顔をしたカルロ様によって、突き放されてしまった。
「いえ、こちらこそ助けていただきありがとうございました」
カルロ様につられて、私まで赤くなってしまった。そんななんとも言えない空気を破ったのが、お父様だ。
「エイリーン、中々戻ってこないから迎えに来たよ、さあ帰ろう」
お父様の後ろには、王妃様もいる。
ちっ、もうちょっとカルロ様と一緒にいたかったのに…まあ仕方ないか。
「王妃様、殿下、今日はとっても楽しかったです。ありがとうございました」
「こちらこそありがとう。またいつでも遊びに来てね」
王妃様がにこやかに答えてくれた。王妃様とカルロ様に頭を下げ、お父様と帰ろうとしたその時
「エイリーン嬢、今日はとっても楽しかったよ。またぜひ遊びに来てほしい。それと…もしよかったら、殿下じゃなく、名前で呼んで欲しい…」
カルロ様の方を振り返ると、真っ赤な顔でうつむいていた。
「カルロ様、またお会いできるのを楽しみにしておりますわ」
私が叫ぶと、カルロ様が嬉しそうに笑った。あ~、この笑顔、ホント癒されるわ~。
帰りの馬車の中でお父様に「随分殿下と仲良くなったみたいだね」と言われた。
「そうね、カルロ様はとっても素敵な人よ」というと、なんとも言えない顔をしていたが、気にしないことにしておこう。
今日は本当に素敵な1日だった。なんといってもカルロ様に会えたし、声を聞けたし、触れられたし、笑ってくれたからだ。もうすべてが愛おしい。私は幸せをかみしめながら、家路についたのだった。