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魔力量を上げるのは難しいです

朝のすがすがしい空気が気持ちいい~


ニコニコしている私を見て、メイドのリラが苦笑い。

「お嬢様、今日から魔力量を上げる訓練が始まるのがそんなに嬉しいんですか?」


「そりゃそうよ、この日をずっと待っていたんだもの」


そう、今日から魔力量アップの訓練が始まるのだ。エイドリアンの騎士団の関係で、週に2回しか受けられないのが残念だ。


別にエイドリアンがいなくてもいいんだけどな…そんなことを考えてながら準備を始める。


ちなみに今年14歳になった専属メイドのアンナは、貴族学院に入学したため、代わりにアンナの叔母に当たるリラが私のお世話をしてくれている。


貴族としての常識を学ぶ場でもある貴族学院は、14歳になった貴族の子供は必ず入学しなければならない。そのためアンナも入学したというわけだ。


最初アンナは貴族学院に通いながらメイドの仕事もしたいと申し出てくれたが、お父様が勉強に専念した方が良いとアンナを説得した。


ただアンナの家庭の事情も考慮し、貴族学院が休みの日は、私の話し相手として来てもらっている。もちろん、お給金は今まで通り渡している。


アンナは申し訳ないと断っていたけれど、今まで私がアンナにつらく当たっていたことを思えば、当然だと言って受け取ってもらっている。


そういえばもうすぐアンナの誕生日よね。今年は何をプレゼントしようかな。

そんなことを考えながら準備をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。


「エイリーン、準備できたかい?魔術師の先生がいらしたよ、早く訓練場に行かないと」


いけない、もうそんな時間か。私は呼びに来てくれたエイドリアンと一緒に、急いで訓練場へと向かう。


基本的に伯爵以上の貴族の家には、魔力を高めるための訓練場が屋敷内に備え付けられている。特に魔力量の多いフィーサー家の訓練場は非常に立派で、ちょっとやそっとの魔力では壊れない。


訓練場に着くと一人の魔術師が待っていた。年は20代くらいの優しそうな男性。


「お待たせしてすみません」エイドリアンの言葉にあわせ、私も頭を下げた。


「とんでもございません。フィーサー家の方の訓練のお手伝いをさせて頂けるなんてとても光栄で、少し早くついてしまいましたから気にしないでください。私は魔術師のブライアンです。どうぞよろしく」


魔術師の先生はブライアンというのか。しっかり覚えておこう。


「では早速訓練を始めたいのですが、訓練を始める前に覚えておいてほしいことがあります。そもそも魔力量を上げるためには、魔力を使うことが大切です。


特に限界ギリギリまで魔力を放出することで、より魔力量を高めることができます。ただし無理は禁物です。魔力を使いすぎると、命を落とすこともあるのでその点は気を付けてください。」


魔力は使えば使うほど上がるのか。それは知らなかったわ。ちなみに魔力にはケガや病気を治す“治癒魔法”と、敵を炎や氷などで攻撃する“攻撃魔法”の2種類ある。


治癒魔法はケガをした部分に手をあて、“治れ”と頭の中で念じればOKなので比較的簡単らしい。ただ攻撃魔法は頭の中でイメージして放出するため、訓練が必要とのこと。


ただ普段の生活ではあまり魔力を使うことがないため、平民はもちろん貴族の女性もあえて魔力アップを目指す人は少ないらしい。


先生にも

「エイリーン様は女性なのに魔力量アップを目指すなんてすばらしいです」

と感心されたくらいだ。


早速攻撃魔法を行ってみることになった。

まずは先生がお手本を見せる。ここから50mほど離れた的を目掛け、炎を放出する。

見事的中!さすが先生。


次はエイドリアンの番。エイドリアンも難なく的を命中させた。

そしていよいよ私の番。

的をしっかり見つめ、頭の中で“炎よ出ろ”と念じる。すると炎がぼふっと現れ、的へと飛んで行った。見事命中!


「お2人ともお見事です。さすがフィーサー家のお子様たちだ」


次は炎を放出し続ける訓練。

長時間放出させることで、魔力は一気に消耗し体への負担は大きいが、確実に魔力量を上げられるとのこと。


先生からは「無理だと思ったらすぐに止めること」といった注意を受け、エイドリアンと並んで炎を放出させた。


さすがエイドリアン、私の炎の倍ぐらいの量を放出している、でも私だって負けないわよ、もっともっと放出できるんだから!

私は頭の中で強く念じた。“もっともっと炎よ、出ろ”


「エイリーン様、もうお止めください、それ以上は危険です」

先生の言葉が聞こえたけれど、まだまだ大丈夫。無視して放出していると、なんだか頭がフラフラしてきた。


あっ、ヤバいかも!そう思った時には時すでに遅し!私は意識を飛ばしたのだった。






「…リーン、エイリーン」


誰かが私の名前を呼んでいる。重い瞼を上げると、そこには目に涙を浮かべ私の手を握っている両親と、不安そうな顔でこちらを見ているエイドリアンの姿が目に入った。


辺りを見渡すと、どうやら私の部屋のようだ。なんだかまだ頭がボーっとする。私どうしたんだっけ?そうか、魔力量を上げる訓練を受けていた時に、倒れたんだ。


「エイリーン、目覚めてよかったわ、一時はどうなるかと思ったのよ」


「エイリーン、あと少しで魔力の使い過ぎで命を落とすところだったんだ。でも意識が戻って本当に良かった。」


命を落とす?えっ?私そんな危なかったの…カルロ様に出会う前に死ぬなんて、笑い話にもならないじゃない。


「だから私は魔力アップの訓練を受けさせることを反対したんだ。大体1日目でこんなことになるなんて、あの魔術師は一体何をしていたんだ。あいつはもうクビだ」


お父様!何を言っているの?


「そうですね父上、あの魔術師はダメです。エイリーンを守れないような魔術師は辞めてもらいましょう」


エイドリアンまで!そもそも先生は私の暴走を止めた、それを無視したのは私なのに!この二人は一体何を言っているの。


「お父様、エイドリアン、少し落ち着いて。先生は悪くないわ。エイドリアンも見ていたでしょ、先生は魔力の放出を止めるよう私に言ったわ。それを無視したのは私よ。先生は全く悪くないわ。クビだなんて言わないで!」


「でもエイリーンを守れなかったのは事実だし」

「やっぱりクビだな」


お父様とエイドリアンは口をそろえてクビを主張している。こうなったら奥の手だ。


「だから悪いのは私だって言っているでしょ。私はブライアン先生から訓練を受けたいの。もし先生をクビにしたら、もう二人とは一生口きかないからね」


そういって、私はそっぽを向いた。


「エイリーンそれは困る、わかった。今回は見逃そう、でも次エイリーンに何かあったらその時はクビにするからな」


一生口きかないが聞いたのか、とりあえずブライアン先生のクビは繋がったようだ。

それにしてもお父様はともかく、エイドリアンまであんなこといいだすなんて、一体どうしちゃったのかしら。



その後私は魔力の使い過ぎで2日間寝込んだが、無事魔力量を上げる訓練を受け始めることができた。訓練復帰初日、ブライアン先生にはめちゃくちゃ謝られたけれど、悪いのは私なんだから。そういって私もブライアン先生にしっかり謝った。


エイドリアンはどこか不満げな顔をしていたが、まあ気にしないことにしよう。


ちなみにブライアン先生の訓練はとても楽しかった。最初は魔力調節がうまくできなかったけれど、次第にコツを掴んでいき、半年が過ぎたころには先生から「エイリーン様は魔術師の素質がありそうです」と言われるくらい、魔力量がアップしたのだった。


次回いよいよ王太子登場です!

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