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不思議なもの
帰りに家の近くの野原に行った。
何もないから行きたくなった。
何もなかったはずの野原。
一番小さな木の根元にそれはあった。
別に興味があるわけでもない。
ただあまりに珍しいそれは、真っ黒だった。
何時間経ったのかは、知らない。
ただ、ずっと見つめていた。
だから、少しだけ今日の事を話したくて、ひたすら語りかけた。
それは、静かに聞いてくれた。
学校の帰りには、必ず野原に行くようになった。
僕が話しかける事で、毎日色が変わった。
本当は何もしなくても色が変わるのかもしれない。
でもそんな事は気にならなかった。
この世で唯一、僕の全てを知っているものになった。