人間狩りに行こう
「今日は、どこで狩りをする」
男は向かいに座る長身の男に言った。
「どこでもいいよ」
ガラス越しに視線が女を追いかけている。
キャリアウーマンっぽいOL。
「俺は近場がいいなあ。
みんなみたいに山に行くのは面倒だし」
今は狩りのシーズン皆こぞって山に行く。
狩りと言っても、今ブーム、『鬼滅の刃』の鬼狩りではない。
「渋谷にしよ」
「定番だけどスクランブル交差点?」
「うん、人通りが多くて面白いよ」
「映えるし」
撮った画像はSNSにアップする。
一部では人気のようだ。
「人間狩りにはピッタリ」
隣の席の女はスマホを捜査する手を止めた。
彼女は顔を動かさず、二人の外国人に視線を向けた。
二人はスクランブルでスマホを構えた。
動画や画像をいっぱい撮った。
二人はお互いの作品を見せ合う。
「この子いいね」
「いい。バズるかな」
「でも、狩りっていうのかな」
「分からん。
紅葉狩りって、ただ紅葉を見に行くだけだろう」
「そう、でも人間狩りって言った方が
人間観察よりツウっぽいだろう」
「ぽい」
「日本語って難しい」
二人はそろって声を上げた。