転生
この時、初めて俺はアシュラ・レイオードという鬼になったんだろう。
目が覚めた時、目にしたのは何か赤黒い物体だった。声とも呼べぬような奇妙なうめき声で“ソレ”が生き物だと判別できた。その物体が手、だろうか?その手を俺に伸ばしてくる。
俺は動けなかった。体が一切いうことを聞かないのだ。
その物体は俺の頬に手を当て、宥める様に数回往復すると力尽きたように動かなくなった。
俺の体はいまだ動いてくれない。それにしても、あれは何がしたかったのだろうか。見た目はとても不気味で人によっては嫌悪感すら湧きそうなものを、なぜか俺は親しみを覚えたのだ。あの手で触れられた途端、安堵さえした。
とはいえ、いい加減状況を確認したい。
俺は確か学校にいたはずだ。HRも終わり、これから帰ろうした矢先のこと、何か眩いものが教室全体を包み込むように覆い、俺は意識を飛ばした。あの光は何だったのだろう。...正体はわからずともあの光が原因だろう。意識がかすむ寸前に見えたもの。教室を包み込むと同時に何かの刻印のようなものが教室の床一面に広がった、アニメや漫画であるような魔法陣だ。
俺が状況把握に努めているとどこからか足音が聞こえてきた。
あいにくと俺の体が動かないので首を回し、辺りを窺うこともできない。だがその足音の正体は俺の正面にその姿を現した。
白衣を着た男だ。その顔は青白く、隈が目立つせいか端正な顔なのに酷く不健康な容貌に見えた。そしてその雰囲気。目の焦点が合っておらず、俺を正面から見ているはずなのに視線が合わない。白衣のポケットに手を突っこんだまま男は口を開いた。
「…やはり、肉体と魔力が持たなかったか。」
男は赤黒い物体に視線をやり呟いた。
「…時間が経ちすぎていたんだ、いくら天使という種族でも鬼の血を引く赤子を胎の中で隠し通すことは至難の業だったんだ。それにあの上位天使どもの呪いも、肉体と精神、魔力を損なった原因だろう」
俺を抱き上げると、近くそのまま立ち尽くしていた。
何かが俺の頬を滑り落ちた。
…泣いている?
男が俺を抱えたことで俺は自分の体が縮んでいることに気が付いたが、それどころでない。
鬼の血をひく赤子?天使?
分からない事が多すぎる。
いい加減にキャパオーバーだ。自分の思考に限界が来たのか、俺は意識を飛ばした。
次に目が覚めた俺はとにかく自分の状況を把握するためにあの白衣の男をよく観察するようになった。さいわいなのか、不幸なのかはわからないが、男は目が覚めた俺のそばを離れる事は滅多になく、俺は俺の情報を知ることが出来た。
まず、俺は人間でない。鬼という特殊な種族であり、その特殊な種族の血にさらに特殊な天使の血が混じった混血であるということ。そして、やはりあの赤黒い物体は今世の俺の母親だということ。母親の種族は天使であり、元々はあのような姿でなく天使の種族にふさわしいとても美しい容貌をしていたと男は語った。
男の名前はカーランド・ジョーカーというらしい。はぐれの研究者であり、カーランドの研究所には多くの種族の検体が存在している。まあ人型の検体なんてものがある時点でこの研究が異端なのは明らかだ。
この男がなぜ何らかの組織に属している研究者ではく、個人で研究しているのかはわからないが、人の形をした生き物を検体にしている時点で理由はお察しというものだろう。
カーランドの研究所は個人で行っている割には他の研究者も多くいて、研究所ではいつもどこからか悲鳴が聞こえてくる。この声で実験体がどのような扱いを受けているかが想像できた。
ただなんの研究をしているかはまだ分からない。
数多くいる種族の中でも俺は特に希少な実験体であるようだ。いや、希少以上だ。多分この世界に天使混じりの鬼は俺しかいないのではないだろうか。俺にも過酷な実験が施されると覚悟していたが何故かいつまでたっても俺は実験には使われなかった。
…俺がまだ幼いからだろうか?
種族ゆえにか俺の体はとても頑丈で、採決をするためにか俺の肌に針を刺そうとして、針の方が折れてしまったときは俺も血液を採ろうとした職員も唖然としてしまった。
俺が想像以上に頑丈な肉体を有しているからか、その様子を観察していたカーランドは喜んでいた。
…カーランドのことはよくわからない。
この1ページを書くのにも頭使うな、、、
小説投稿は初めてなので絶対誤字脱字あるはず!