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冷たい石壁に手を着きながら静かに通い慣れた道を進む。
バリバリと齧る音は枝か骨か。地下の冷たい空気が肺を冷やし、吐き出す吐息は地下を暖めるには心許ない。
小声で合図を送ると、背後より振りかぶり首筋へと樫の杖を打ち付ける。追撃は必要無く、同じく構えていた杖を静かに降ろす三人。そして素早く身包みを剥がすと勘定を終わらせ荷物を纏めた。
「昨日の予定は?」
「後30G」
「ゴブリン七匹も!?」
「誰よ、風邪引いて寝込んでた人は……」
「(#^ω^)あ?」
「(´・ω・`)お?」
その小競り合いはいつものことであり、フユハとマニエルは微笑ましく二人を見守っている。
地下一階で小銭を稼ぐ四人はゴブリンを見つけては追い回し、スライムを見掛けては立ち去り、スケルトンと遭遇すればドロップアイテムを祈りながら浄化、そしてコボルトを見付けたら逃げるか本気で襲い掛かる日々を送っていた。
しかし慣れとは恐ろしい物で、四人は朝から夕までゴブリン狩りをすることにやや飽きが来ており、時折チラチラと地下二階への順路が気になりつつあった…………。
「ね、ねぇ……物は相談なんだけどさ……」
珍しく歯切れの悪いフランシス。普段の強気は何処へやら、横の方を眺めてはやや早口な口調で話を続けた。
「地下二階……行ってみないかな?」
その言葉に一人は首を振り、一人は遺書を取り出し、一人は静かに観ているだけだった。
「そろそろ良いんじゃない……かなぁ?」
「コボルトですら大苦戦してるのに?」
「で、でもその分経験値もお宝も良い物が……!」
「死んだら元も子もないわよ?」
「……た、確かにそうだけど……さ…………」
「でも、フランシスの気持ちは分かるわ。私も正直このままココでセコセコとするつもりは無いわ……でもそれがいつなのかは判らない」
「ち、地下二階は盗賊やゾンビや冒険者崩れが彷徨く恐ろしい所だと聞いてます……!!」
震える手で遺書を書き、マニエルがガタガタと生まれたての小鹿の如き動きで歩み寄る。
「通常のパーティなら万全の装備でLv.3位から地下二階が適正とされているわ」
「なら私達は……?」
「5は欲しいわね。いや……6?」
「7は欲しいかと……」
「10……」
地下二階へのタイミングを議論する四人。四人とも意見が分かれるが慎重派程高いレベルを要求していた。
直ぐにでも行きたいフランシス。
Lv.6は欲しいリゼリア。
せめてLv.7まで粘りたいフユハ。
Lv.10あっても心配なマニエル。
「……先ずは帰って職業写真でも撮りましょう。久々だから多少はレベルも変わってるでしょうよ」
四人はダンジョンから戻り、ギルドへ立ち寄った後いつものカフェテリアへ向かった。終始無言であったが各自飲み物を一口飲むと誰からともなくギルドで撮った職業写真を開け始めた。
名前 リゼリア 名前 フユハ
職業 白魔道士 職業 白魔道士
Lv. 5 Lv. 4
STR 5 STR 3
INT 8 INT 14
VIT 5 VIT 4
AGI 7 AGI 7
LUC 8 LUC 7
スキル 無し スキル 無し
名前 フランシス 名前 マニエル
職業 白魔道士 職業 白魔道士
Lv. 4 Lv. 5
STR 2 STR 3
INT 11 INT 10
VIT 2 VIT 7
AGI 10 AGI 6
LUC 12 LUC 8
スキル 無し スキル 無し
「「…………」」
四人は絶句した。
「これで地下二階行けると思う人……?」
リゼリアの問いに手を上げる者は居らず、彼女等は未だ暫くゴブリン狩りを余儀なくされた。




