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フユハが辿り着いた村は酷く寂れており、道行く人の目に生気は無く、まるで廃退した砂の村のようであった。
「ようやく到着だ。お疲れさま」
フェルールが寂れた村の一角にある、太陽のマークが描かれた小屋を指差した。
「ギルドに他のメンバーが既に待機している。良かったら挨拶してくれないかい?」
促され扉を潜った先、フユハの目に飛び込んで来たのは片腕を無くした青年が。そして、椅子に項垂れるように座り込み、靴の音で顔を上げた青年の目には、包帯が巻かれていた。
「……紹介しよう。同じパーティーで白魔道士を務めていたセレンだ」
セレンと呼ばれた青年は、椅子にかけてあった古めかしい杖を手に取ると、ゆっくりと立ち上がり杖を持ちながら手を掲げた。
「……フ、フユハ……です」
フユハの声を聞いたセレンは、懐から手帳を取り出し、机に置いてペンで何やら小さく文字を書いた。
─この方は?─
それを見たフェルールが「ああ……」と一言漏らし、少しだけ考える素振りを見せた。
「彼女は……お前を治して貰う為に隣街から呼んだんだ」
そしてフユハの方を向くと、それまでに無い真剣な眼差しで語り始めた。
「フユハ……我々の目的は三つ。そのうちのどれか一つを満たすまで、どうか力を貸してくれないか?」
「……その三つとは、一体……」
「一つは【新たな白魔道士、もしくはそれに準ずるメンバーを見付ける】一つは【この村にあるダンジョンからとあるアイテムを見付ける】そしてもう一つは【セレンの体を治す】だ…………」
「少し、宜しいでしょうか…………?」
「ああ……セレン。少し診て貰うと良い」
青年が再び椅子に腰掛けると、フユハはそっと包帯の上から手を当てた。
「快癒!」
フユハの手から何処か懐かしさを思わせるような温もりが溢れ出し、青年の体を包み込む。
「どうだセレン?」
「…………」
青年は静かに首を振った。
「そんな……」
フユハは肩を落としたが、フェルールがそっと優しく声を掛ける。
「いや、仕方ないさ。セレンはその怪我を負ってから時が過ぎすぎたんだ。怪我も塞がり、新しい体になってしまったんだ……」
フユハは荷物から、一冊の本を取り出した。それはリーゼットから貰ったシスターリースの叡智の結晶の写本であり、フユハの師匠、お手本となる物であった。
付箋の貼られたページより先、まだフユハの技術、そして魔力の届かぬ高みの中に、その文言は存在した。
“時折「古傷を何とかしてくれ」と、来る奴がいる。出来ないことは無いが、疲れるし面倒だから四割増しで摂ってやれ”
“腕や脚の欠損は、治癒と言うよりは蘇生に近い類いの呪文を必要とする。当然失敗すればリスクを伴う。ぼったくるべし”
“あまりこういう事は書き残したくないが、治癒よりも蘇生の方がより深い所に働きかけるので完全体に戻りやすい。一度殺してから復活させた方が良い時もある。ただし、絶対にミスは許されない。相手が払えない額を提示すべし”
フユハが蘇生の項目に目を通す。しかし今のフユハでは書かれた内容を理解するに至らず、詠唱も複雑で手を出すには躊躇われる内容であった。
「すみません……どうやらこの本によると、呪文による治癒は可能らしいのですが、今の私では実力が足りないようです……」
「そうか……ありがとう。それが分かっただけでも前に進めそうさ」
フェルールは青年の肩に手を置き、優しく撫でた。
「なら、ダンジョンにお目当てのブツを採りに行こうか。明日、行けるかい?」
「はい」
その日、フユハはフェルールの家に泊まり、何処か知らない場所を彷徨う夢を見続けた。




