恋の終わりと、始まり 6
"会って話がしたい"
もちろん既読スルー。
既読を付けると、
"ごめん" だの、
"許してほしい" だの、
永遠それの繰り返し。
会って話をしなければ。そう思うものの、冷静な判断ができなくなる自分が怖い。
ラブラブとまでは言い難い期間だったけれど、付き合いが長いぶん、情も未練もまだまだたっぷり残ってる。
この歳で彼氏がいなくなると焦るんだ。周りの友達は幸せな家庭を築いてる人が多いから。
独身。
アラサー。
彼氏なし。
考えただけでもサムくて震える。
はぁぁぁー……。
年齢的にも最後の恋だと思ってた。
もちろん私だって人並みに、結婚も考えてたし……。
許す? それとも別れる?
今会えば、浮気男を簡単に許してしまいそうで。
本当にそれでいいのか、もう少し考える時間がほしい。
そんな余裕はないのだけれど。
とにかく、会うに会えないこの現状が、宙ぶらりんでどっちつかず。
だから元は男のオネエに相談したのに、おもしろネタ提供扱いされるし、ディスられるし。
はぁー、どうしよ。
「んもー。さっきから、うるさいスマホね」
「すみません先生。電源落とします」
アキラ先生の機嫌を損ねてしまい、慌ててスマホの電源を落とそうとしたら……。
「いいのよ。もう今日は仕事辞めるわ」
握っていたGペンを放り投げ、立ち上がったアキラ先生は寝室へ向かって歩き出した。
「……えっ? 困ります!」
ここで辞められたら本当に困る。
今週中に校正を終らせて校了しないと印刷が間に合わなくなってしまう。
何が何でも今日は1ページ、もぎ取って帰るつもりで来てるんだ。
クソつまらない話を聞かせてしまったけれど……。
「アキラ先生ー!!!」
寝室のドアをガンガン叩きながら叫ぶけれど、返ってくる返事はなし。
やだ、どうしよう。
こんなこと今まで一度もなかった。
脱線、脱線でマイペースではあったけど、仕事を途中で投げ出す人じゃなかったのに。このままでは月刊C-ielのAKIRAのページに穴が空いちゃうよ。
「はぁぁぁー……」
担当として失格だ。私。
犯してしまった失敗に、溜息をつきながらドアの前にへたり込む。
すると……、
「下間ちゃんの馬鹿力でドアが壊れちゃうでしょ。うるさいわね」
「……えっ? 嘘っ!」
不機嫌そうに部屋から出てきた人物を上から下へ流し見して、また下から上へ視線を送る。
私はそれを、二度も繰り返した。