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俺の周りに天使の輪  作者: 立川好哉
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第8話 俺と日本刀と幼女

 賢はホームセンターで木の柱と釘を大量に買ってきた。コの字に三本の柱を接続し、二本を脚とした謎の物体を三セットつくった。

 「これは間仕切りだ。俺には余るリビングの広さだから、ここに葵の部屋をつくる」

 横に伸びる柱の二か所に釘を打ち、そこにクリップを引っ掛け、クリップには彼が集めた美少女キャラの布ポスターの端を挟む。薄い布で囲まれた空間の中に押入れの中で眠っていた小さなテーブルを真ん中に置くと、布教用の漫画を置いた。

 「露姫はー?」

 「あの刀、露姫っていうんだ…君が扱うにはあまりにも危ないから、俺が厳重に管理するね」

 恐怖からか忘れ去られているようだが、葵はそのあまりにも危ない露姫を振って桐矢家の玄関ドアを破壊している。遥は真剣に指摘することを諦め、ただ苦笑して見届けていた。

 「さて、ここからは真面目な話をするよ。遥が俺を殺しに来た時は素手、葵が俺を殺しに来た時は刀を持ってきた。『二度あることは三度ある』が俺にも言えることなら三人目の天使が来るし、素手、刀ときたら次はロケットランチャーとか持ってきそうで怖いよ」

 「ロケランは目立つから下界人殺しのときに使う人は滅多にいないわ。安心していいよ」

 少ないけれど存在するロケラン使いを恐れた賢は自分の貧弱な肉体では太刀打ちできないと思い、身体を鍛えることを決意した。文字通り、太刀打ちするのだ。そのためには先ず自分を知るのだ。賢の身体能力で最も秀でているのはアジリティ…敏捷性である。今までの戦闘を顧みると、遥に一瞬で詰め寄ったり、葵の刃を躱したりするなど、瞬発力や反応速度に優れていることがわかる。従って賢が天使に勝つ戦闘の種類は『速攻終戦型』だ。これの究極系は暗殺であり、賢の意欲次第では彼は暗殺者になれる。

 「しかし、いきなり高負荷のトレーニングをするのは危険だろう。先ずは軽めのメニューを組んでみるよ」

 「じゃあ、あおいとおにーちゃんが戦うってのはどうかな!?」

 「キミ、そんなに強くないでしょ。まだ大人じゃないけど俺は男だぞ?キミが三人いても勝てない力量差があるんだよ?」

 根拠のないことを言って威圧してみると、彼女は幼女らしく怖がる仕草を見せた。『レギオン』とか呼ばれる最強クラスの戦士が自分を弱いと思い込ませて奇襲を仕掛けるときのような不穏な空気があったが、葵はただの天使で、レギオンの柱ではなかった。結局、賢は一人でトレーニングをこなした。

 「教えてくれ。さっきのロケラン天使は本当にいるのか?」

 「いるわよ。私のように情に絆されて使命を諦めたり、葵のように力負けして使命を諦めたりした天使はきっと他にいないわ。天界で高位に立つと家族まで優遇されるし、統治者の一個下『賢者ワイス』になれば友人を千回天界一周クルーズに連れて行っても余るくらい金が貰えるから、目指す天使はとても多いの」

 「諦めちゃってよかったの?君たちの幸せのために死んでもいいような気がしてきたけど…」

 「今更あんたを殺す気にはならないわよ。私はあんたと一緒に過ごすほうが大金を貰うより価値があると思ったから諦めたの。葵は?」

 「おにーちゃんの妹になっちゃったから!」

 二人にもはや殺意がないことを確かめた賢は安堵し、自分へ向かう殺意を焚き付ける原因となった天界のルールを粉砕することを目論んだ。

 「統治者って使命を果たしまくった人なんでしょ?超強いってことじゃん。それを倒せば俺が統治者になれるの?」

 この男から絶対に聞くことはないと思っていた『統治者殺し』に驚いた遥と葵。そう、賢の予想通り、天界の統治者は数多くの人間を殺している最強の戦士である。下位の天使である二人には姿を見ることはおろか、声を聞くことすらできない。賢に彼についての情報の一切を教えられないのだ。

 

 「人間を殺すことを使命にするくらいだから、統治者は人間を自分らより弱い存在だと思っているだろう。そこを改めさせてやるかね」

 

 のちに天界に”神速”と畏れられることになる存在は天使の武器”露姫”を手にした。


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