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俺の周りに天使の輪  作者: 立川好哉
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第88話 未来を破れ!

 ピラー・オブ・オールドマンの35層。海抜140mの円形のフロアに、二つの台座があった。窪みは二人の武器とぴったり一致している。二人が導きに従うと、奥の扉が重厚な音をたてて開いた。その先は空。

「どういうことっすか」

「この先にじじいがいるんだろう。でも足場がないね」

 賢が扉の向こうへ手を伸ばしてみると、見えるはずの腕の先が見えなくなった。どうやらこの扉は門で、別の領域に接続している。ならば恐れる必要はなく、賢は飛び降りるような勢いで門を抜けた。それに続いて渚も門を抜けようとしたが、あることを閃いて退いた。

「これ、片方持ってっても通れるんじゃね?」

 二つの武器によって二つの部分を持つ扉が開いた。片方の武器が左右どちらかの門の開閉を担っているとすれば、片方を台座から外しても扉は完全に閉じない。渚は自分の天門鍵ではなく圧倒的威力を持つプライマルハーツを台座から外し、半分だけ開いた門を抜けた。


 雲上を思わせる透き通る空間。じじいは訪問者に背を向けていた。賢の呼びかけで振り返った彼は、賢の隣の人が持っているものを見てギャグマンガのように目玉を飛び出して驚いた。

「なんで武器を持っているんだね!?」

「え、だって半分開いてれば通れますし...あなたはどうか知らないっすけど、わたしら身体小さいんで」

「えぇ...これは予想外だ。儂と賢が一騎打ちをして、賢が勝てば未来を託そうと思っていたのだが...これでは賢に相応しい試練にならん」

「一騎打ちの前に教えて欲しい。じじい、あんたは何者だ?」

 じじいは低く笑って答えた。

「お前の未来」

「...やっぱりか。俺の人生に云々言えるのは俺のすべてを知っている俺自身だけだからな」

 じじいは頷いた。

「儂はお前の後悔でできている。過去に遡り、お前が後悔しないように助言をするのが儂の役割だ。そのため、夢世界の一部に儂の領域を構築し、お前を誘ったのだ...まあ、仲間がついてきたようだが」

「えっと、わたし余計でした?」

 じじいは首を横に振って否定した。

「お前は比類なき力を誇るにもかかわらず、すべてを一人で抱え込もうとしない。それは傲慢に屈していない証だ。力を得ても仲間を頼ること、友和と協調を築いてきたお前はこの旅でも忘れていなかった。今回選ばれたのが渚だったというだけで、賢にかかわる人物なら誰でもここに入る権利を持つ」

「そんな大きなイベントのお供に選ばれて光栄っす」

「いやいや、このじじいの独善的なイベントだからね?」

 賢はこのイベントについて大事だとは思っていなかったが、渚の認識はそうではなかった。渚とともに剣を持って来た賢を見たじじいは深く息を吐き、こう言った。

「お前が剣を持たず一人でここに来るようだったら容赦をするつもりはなかったが...儂がお前に対して抱く懸念はどうやら杞憂に終わるようだ。ただまだ儂はお前の覚悟を見せてもらっていない」

 じじいは両手を天に掲げ、夢世界の意思と符号を合わせた。

 

「リグレットハーツ!」

 

 黒の瘴気がその周囲で揺らぐ銀色の剣がじじいの手に収まった。プライマルハーツの数倍はあろうその大剣は、賢にかつてない緊張をもたらした。


「剣を取れ、賢!己が未来を切り拓くのはお前、それを支えるのは仲間の心、プライマルハーツだ!!」



 未来を決めるのに相応しい、瞬きすら忘れる熾烈な決戦だった。初めて会った時、容赦なく自分の股間を蹴ることで勝利を得たクズ男は今、プライマルハーツという心を武器にしてあまりにも大きな未来と戦っている。渚は思わず目から流れた雫を拭えなかった。徐々に視界がぼやけてゆく―


 最後に見たのは、砕けた大剣と僅かに笑む老人だった。


 朝陽が昇り、賢と渚は同時に目を覚ました。

「ちょ、なんで手を繋いでるんすか!?」

「うお、なんでだ!?ってかなんで渚は泣いてるんだ!?」

「ふふ」

 先に起きていた紬はいつものように朝食を作った。ただし賢の目玉焼きだけ出来が悪かった。

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