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俺の周りに天使の輪  作者: 立川好哉
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第80話 謎解きの地

 暗い森を抜けたときの少女たちの歓喜は言葉にせずとも表情から読み取れた。報酬のように明るく開けた草原の先には煉瓦造りの建物があり、入り口には最終試練とある。これをクリアーすれば無事にホテルに戻れるということで、脚が疲労している賢たちには最後の踏ん張りどころである。

 ゲートが開いてその中へ進むと、さっそく大きな壁があった。他に進める道はない。つまりこの壁をどうにかしなければならないが、物理的にブチ破るという攻略法が全員一致で却下されるほどの分厚い相手である。

「どっかにしかけがあるんだよ」

 小柄な葵が足元を詳しく探ると、少しずれた色の違う煉瓦が一つだけあった。それをどかしてみると、白いボタンが露わになった。

「これが壁をどかすボタンかな」

 賢が押してみると壁が左右にずれ、進路が示された。冴えたアイディアに救われたと思って先を行こうとした。賢が脚をどけた途端に壁が近づき、閉じた。なるほど、押しているときのみ開くようだ。賢が脚をどけてから先に進むまでに壁は閉じる。

「ってことは誰か一人はここで押してなきゃいけないってこと...?」

 自己犠牲の精神を試しているのか。賢は率先してその役を引き受けたが、それは受け入れられなかった。煉瓦の重さではボタンを押し続けられないから、やはり一人がここを担わねばならない。

「全員でここまで来たんだから、この先も全員で進むよ」

「その通りだ。誰かが抜けるというのはありえない」

 ほかの皆も頷いて同意を示すと、賢はボタンを近くにいた翠に託した。

「ここに攻略法がないならこの先にある。きっとそうだ」

 誰一人としてここに残さない方法を見つけに行くと、棗が的を射た。

「一人でここに来ている人もいるはず。その人はどうやって攻略するの?」

「...たしかにぃ」

 賢はボタンを詳しく調べ、あることを試した。

「あっ、これ外れるぞ」

 白いボタンのふくらみに指を引っ掛けて捻ってみると、固定しているパーツが外れ、引き抜けるようになった。ボタンの正体は杖であり、よく見ると杖が穴の底のボタンを押していたと判明した。杖の中には小さな棒があり、賢はすぐに攻略法を閃いた。そこそこの天才だという自覚はある。

「ボタンを押して、この棒で壁が閉じないようにするんだよ」

 実際にやってみると壁は棒を挟んで停止し、全員が先に進むことに成功した。

「常識外れの行いは常識に縛られた人にはできんのだよ」

 常識だけがこの世の法則ではない。

 

 次なる謎解きは重力均衡で開くドアで、重さが等しくなる組み合わせを見つけてドアを開いた。その次は神経衰弱の足場で、踏んだ足場と同じ絵柄の足場を踏まないと下の階のクッションに落とされるというものだ。数の暴力ですべての足場の絵柄を暴き、ペアをつくってなんとか攻略した。

 最後の試練はなんと、謎解きの常識をブチ破る『攻略法は物理』の試練だった。ボクシンググローブが置かれており、壁を殴ることで奥に進めるという極めてシンプルなルールで、今までの試練で疲れた頭を休ませつつ、溜まっていたストレスを晴らせるというなんとも嬉しいアトラクションである。各々が怒りを込めて壁を殴り、あっさり破壊すると、奥には水中を歩くチューブ状の歩道があって、魚が泳いでいたり海藻が揺らいでいるのを見ながらホテルに戻れるようになっていた。とても幻想的な空間には長く居たいと思うが、後がつかえてきたので先を急いだ。


「どうだった?」

「なかなか面白かったよ。でも疲れた...」

 帰還者たちは一斉にベッドに転がり込み、すぐに寝てしまった。具体的な様子を聞けなかった賢の両親は二人だけで攻略することにしたが、賢たちが目を覚ましてもまだ戻らず、夕飯の前になってようやく戻ってきたと思ったら、心身ともにボロボロだったので思い切り笑ってやった。

「あれだけ歩かせて疲れさせて最後に物理って酷くないか?」

「中年にはきつい試練だったわ...」

 父に関しては本当に疲れているのか疑わしいが、どちらも夕飯を食べる余力を残しているあたり、自分たちより強者だと思った。

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