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俺の周りに天使の輪  作者: 立川好哉
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第72話 海上庭園へようこそ

 主に室内で夏休みを満喫していた賢たちのもとに、一通の封筒が届いた。差出人は『ジブラルタル海上リゾート企画』という彼らの知らない組織からだ。封を切ってみると、中には手紙と文字列の書かれたカードが入っていた。

「ジブラルタルって...ジブラルタル海峡のジブラルタルだよね?」

 頭のよさそうな棗に向かって問いかける。トロピカルフルーツのジュースを飲んでいた彼女は『ん』と肯定を示す音を出し、飲み込んだ後に解説を加えた。

「スペインの南の半島にあるイギリスの海外領。カジノが有名」

「遠く離れた国の会社が何の用だろう」

 手紙のほうを読んでみると、それが招待のために送られたことがわかった。

「えっと、『おめでとうございます!あなたはジブラルタル・リゾートカンパニー(以後:弊社)が企画した海上庭園体験ツアー(4泊5日)に当選しました。あなたに特別な体験をしていただきたく、この通知をお送りしました。ご参加いただける場合、下記URLより弊社HPにアクセスいただき、同封のカード記載のIDとパスをご入力ののち、手続きを完了してください』...なにこれ?ありがちな詐欺のたぐい?」

 賢はキャリアメールに頻繁に送られてくる『宝くじが当たりました!』とか『有名人とディナーする権利が当たりました!』とかの詐欺メールと同じような第一印象を抱いたが、それは尚早だと遥が言ったので続きを読んだ。

『ツアー内容はHPにてご確認ください。なお、参加者が複数の場合でもご心配は無用です。参加者入力フォームの下部に参加人数を入力することで問題なく参加いただけます』

 賢はさっそくホームページにアクセスし、ツアーの内容を調べた。ジブラルタル・リゾートカンパニーが企画したジブラルタル海上リゾート施設のオープン前体験ツアーに当選した人は無料でそこで過ごすことができる。もちろん旅費や施設内のサービスにかかる費用は会社が負担する。ホームページの通りであるなら賢はその企画に応募したということになるが、彼にその記憶はない。ただ、誰が応募したのかはすぐに見当がついた。

「父さんだな...?」

 念のため確認をとってみると、やはりそうであった。大変な目に遭っている息子の息抜きのために望み薄で応募したのだという。当選したことに驚いていた彼だが、それなら仕事を一つ断って合流するから自分たちを参加人数にカウントするように言ってきた。

「13人でもいいのかな?かなり大きな負担のように思えるけど」

『オープン前のお試しなんだから入りきる最大数を当選させているわけじゃないだろう。100人で来るなんてことがなければ部屋とかレストランの数は足りるはずだよ』

「そうだね。じゃあ入れておくね。それじゃあ、当日」

 思わぬ形でこの夏最大のイベントへ突入した賢は尋常ならざる興奮を喚起させ、いてもたってもいられなくなった。

「落ち着いて。まだ1週間も先の話よ。今日は今日のことを考えようよ」

「そ...そうだな。ごめん、1人で盛り上がった」

 

 この日は近くの神社で夏祭りが開催されるということで出店を廻り、近くの公園で花火を見た。

「花火って天界にはあった?」

「なかった...けど、どうしてだろう、懐かしいって思うんだ」 

 配られた紙コップにジュースを注いで持っていた隣の光が空高くで弾ける鮮やかな花に見惚れた。時が止まったような感覚がして、賢は気づけば光に肩を預けていた。

「あ、ごめん」

「いいよ。いいね...こういう美しい時間が流れてるのは」

「なに突然ロマンチックになってるのさ」

「いや、本当に綺麗だから。ここに来なきゃ見られなかったね」

「賢、あっちでアイス配ってるみたいだよ。取ってこようか?」

「あ、お願い」

 遥は葵を連れてアイスを貰いに行き、賢とは別のテーブルを囲む霞たちの分まで持って来た。

「ほんと、いいよね...」

 

 花火の美しさのせいなのか、この場所で賢と夏を過ごせる感動のせいなのか、なんだか泣きそうになった遥だった。

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