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俺の周りに天使の輪  作者: 立川好哉
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第59話 スフィア・オブ・アイディアル

 人間がスマホを手にしてから生活は便利になった。わからないことはすぐ検索して情報を得ることができるようになったし、無料通話ができるようになったし、短文を送信してコミュニケーションをとれるようになったし、SNSで共通の趣味を持つ友人ができるようになった。

「しかし、だ」

 賢はスマホを左右に振って遥に説く。遥のスマホは賢が買ったもので、月々の支払いは彼の父が負担している。高校生なら誰でも持っているような時代だし、ないと困るくらいに生活がスマホ等の電子端末に依存している時代だから遥も持つに至ったのだが、スマホは利便とともに問題を我々に示した。

「何を見てるのかは知らないけど、スマホ見ながら歩く奴ってもれなく歩くの遅くて困る」

「あー、狭い歩道でそれやられるとイラッとくる」

 目的地の位置がわからないから地図を使っているというのなら許せるが、今すぐでなくていい返信や、どうでもいいSNSの投稿をじっくり見るようなことのために他人の迷惑となることをするのは許せない2人。自分がやっていないから怒れるが、この先歩きながらスマホをいじらなければならない時代が来ないとも限らない。

 

 人間の中でも日本人は殊に同調への意識が強く、誰かと同じであることを望む傾向がある。そのため常に誰かと情報を共有している必要があり、その収集に余念がないのだ。そのためにいつもスマホをいじっているのであり、そうではない人の迷惑になるのだ。賢は誰かと同じでありたいと思うことはないし、むしろ漫画は誰かと同じようなものではなく、他の作品とはっきり区別できる印が必要だ。遥も離れない友人がいるので仲間外れにされまいとしがみつく必要がなく、スマホを使わずして生きることができる。他人に迷惑をかけない付き合い方はいくらでもあるはずだ。

「いじっててもいいから道を譲ってほしいのと、時折周りを見てほしいね」

 スマホという便利道具は人を夢中にして盲目にした。同調意識だけが肥大化し、マナーやモラルといったものが蔑ろにされている今の社会では明るい未来を期待できない。ただ、自ら行動を起こして大衆を変えるのは非常に困難だ。親を殺されたかの如くスマホ依存症の人々を皆殺しにした事件が起きれば多少は変わるかもしれないが、そんな犠牲を払うことなく変わってほしいものだ。

 

「俺はスマホ、殆ど使わないな。連絡だけだ」

「だよなぁ。SNSってどうでもいいことを呟くらしいけど、どうでもいいことなら雑談としてお前らと話してるからなぁ」

「いっつも繋がってなきゃ嫌だってのが理解できない。ここにいる時間は否応なしに誰かと話せるのにな」

 毎日のように会って愚痴でも世間話でもできる相手がいれば、SNSを入れたスマホと常に向き合っていなくても平気だ。人と人との直接のつながりが希薄になっているから、スマホに支配されてしまっているのではないだろうかという説が浮かんだところで帰りのホームルームが始まった。

 

「一人暮らししたことないからわからないけど、独りぼっちだと寂しくなってスマホで繋がろうとするんじゃない?」

 SNS普及の背景には間違いなく単身者の増加という社会の変化がある。プライベートを尊重して一人になる時間を確保するのは結構なことだが、そのときに誰かとの繋がりを求めるようなら一人にならなくてもよかったのではないだろうか。


「ってことは俺が遥と再会しなかったら俺もスマホ依存症になっていた...?」

 そう思うと自分は運命に牙をむかれただけではなかったのだ、と慰めになった。

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