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第五話 ラングレヌスの青い竜

 近接戦闘の出来る三機が敵の機体と接触した頃、アマテラスの策敵センサーは新たな熱源反応を感知していた。


「熱源反応を感知、熱紋データベース検索、共和国軍ココス級と判明。座標特定、ブルーデルタ距離500。本艦に高速で接近中です。」【井上】

「後方ですって!何で今まで気付かなかったの!」【美咲】

「この艦のセンサーでもエンジンを止められていたら熱源感知しませんよ。」【井上】

「まぁ良い、取り付かれる前に落とす。火器管制をCICに委譲、頼むわよ。」【美咲】

「大型ミサイル発射管、全門トリスタン装填。右舷モルドレッド、ライトニング、照準共和国軍ココス級、撃てぇー!」【美琴】


後方では敵艦との撃ち合いが始まった頃、前方のギャルド隊旗艦本国から帰国命令が入った。


「隊長、司令部より入電です。ギャルド隊は直ちに帰国せよ。とのことです。」【副官】

「ここで、あの艦を落とさねばこの先どれ程の損害が本国にもたらされるか図り知れんのだぞ。指令書だけ貰ってあとに回せんのか。」【ギャルド】

「それが、議会が絡んでいるのか極秘事項により口頭により直接伝達するとのことです。」【通信士】

「現状の分からん政治家には困ったものだな。信号弾撃て、一旦帰国する。」【ギャルド】


その宙域にて闘っていた全員がこのタイミングで信号弾が撃たれたことに困惑していた。


「艦長、前後をおさえて有利なのはあっちの筈なのにこの撤退の意図なんなのですか。」【凜】

「知らないわよ!それより後ろの敵はどうなっているの。」【美咲】

「同様に撤退していきます。」【井上】

「退いてくれるのなら好都合よ。信号弾撃て、こちらも戦闘宙域を離脱する。」【美咲】


アマテラスからも信号弾が撃たれ、不完全燃焼のままギャルド隊との戦闘が終わった。


~同時刻『イザヨイ』貴賓室にて~


「レオ・ル・アンダーソン少佐、前の大戦時の英雄『ラングレヌスの青い竜』が指導教官としてここに来てくれるとは願ってもないことだよ。」【司令】

「はぁ、あんな大義の無い闘いで英雄と呼ばれても、嬉しくありませんよ。」【レオ】

「戦局があのまま泥沼化していたら、いずれ両陣営とも核に手を出していたさ。そうなれば貴殿の母国とて無事では済まんだろう。そう考えれば大義が無いとは一概に言えんよ。それにここならそんな戦闘に巻き込まれることも無かろう。」【司令】

「えぇ、そうであることを願います。」【レオ】


そんな彼らの願いとは裏腹に基地内部に警報が鳴り響いた。


「何の警報だ!」【司令】

「それが、所属不明艦の大艦隊に要塞が包囲されました。」【伝令】

「包囲されただと、直ちにスクランブル発動。要塞に寄せ付けさせるな。」【司令】

「はっ!」【伝令】


そうして、伝令の男は貴賓室から駆け足で出ていった。


「すまないが、君にも出撃してもらい、ドリムスーツ部隊の指揮をとって貰いたい。」【司令】

「もちろんです。」【レオ】


そうして、アマテラスクルーの知らないところで配属予定先の要塞『イザヨイ』が戦闘状態に突入していた。


 その頃、何も知らないアマテラスクルーあと少しで到着すると言う時に写し出された『イザヨイ』の光学映像に驚きの色を隠せないでいた。


「何これ、直ぐに司令部を呼び出して!」【美咲】

「こちらイザヨイ司令部、アマテラス聞こえるな。見ての通りここはこの有り様だ。貴君らは動ける者達を連れて離脱してくれ。」【司令】

「しかし、それでは司令部は。」【美咲】

「無論、我らとて離ダ・・・ブツ」【司令】

「司令!」【美咲】

「・・・・・・・」【司令】


何度も司令部を呼び続けてはいるが、それ以降全く応答はしなかった。


「これ様子じゃ司令部はもう落ちたと考えた方が良いわね。言われた通りに友軍機に打電。」【美咲】


そのころ戦場の真っ只中ではレオ・ル・アンダーソン少佐とその愛機リンドブルムが孤軍奮闘していた。


「ちっ、全滅か。それにしても敵さんはどういう組織だよ。テロリストにしては統率がとれてるし、どこかの軍隊にしては機体とその母艦に統一制が無さすぎるだろ。」【レオ】


とその時、彼の機体にアマテラスから送られた通信が届いた。そこに書かれている内容を呼んだ彼はすぐさま返答した。


「こちらブリタニア軍所属レオ・ル・アンダーソン少佐。あんたらは何者だ?」【レオ】

「こちらはEEU所属、日本宇宙軍艦アマテラス。私は艦長の藤林美咲です。司令部から『生存者を集めて離脱せよ』との事です。貴方の他に生存者は?」【美咲】

「了解。俺以外の機体は撃墜された。」【レオ】

「わかりました。司令部陥落に伴い本艦は機体収容後、本戦闘宙域を放棄、離脱します。アンダーソン少佐、本艦の位置はわかりますね。」【美咲】

「あぁ、もう見えている。」【レオ】

「後部ハッチ解放。機体収容後下げ舵30、最大戦速で戦闘宙域を離脱する。」【美咲】


そうして、アマテラスは陥落する要塞『イザヨイ』に敬礼をしながら戦闘宙域を離脱した。


 ようやく安全圏まで離脱できたアマテラスはブリーフィングルームに艦長、パイロット、ソフィア、そしてアンダーソン少佐が集まっていた。


「それでは、彼女はブリタニアの王女で間違い無いのですね。」【美咲】

「あぁ、それは俺が保証する。姫が何故こんなところにいるのかは分からんがな。」【レオ】

「分かりました。それでは個室を用意させていただきますね。」【美咲】

「艦長さん。私は彼女たちと四人部屋の方が良いです。よろしいですか?」【ソフィア】

「一国の王女様がパイロットと共同部屋でよろしいのですか?」【美咲】

「えぇ、その方が楽しそうなので。それと艦長さん年下の私に敬語はやめてください。」【ソフィア】

「しかし、それでは。」【美咲】

「構いません。この艦の中では私も一人の少女に過ぎませんから。」【ソフィア】


その光景を見ながらアンダーソン少佐は腹を腹を抱えて笑っていた。


「これは失礼。艦長さん姫に一本取られちまったな。歳は俺の方が上だがこの艦の艦長はあんたなんだから、俺の事も扱き使ってくれて構わないぜ。よろしくな艦長さん。」【レオ】

「えっ、あっ、はい。」【美咲】


握手を交わす二人であったが、いつもは威厳のある艦長がここまでたじろいているのを見て、パイロット達は笑いを堪えるので精一杯だったという。そして艦長の戻ったブリッジでは、アンダーソン少佐を含めて今後の進路について話し合っていた。


「それで艦長さん、この艦の補給とかはどうなるんだ?」【レオ】

「弾薬と推進材は出港時に工廠からかなり持って来たので今のところは問題ないのですが。」【美咲】

「だが、食糧と水は無限じゃないか。ならここはどうだろうか?」【レオ】

「ターミナルですか。」【美琴】

「あぁ、ここは共同管理施設だから、国籍さえはっきりしていれば入港も仕入れも出来る。そして何より大気圏降下許可コードも発行可能だ。」【レオ】

「美咲、これがベストなんじゃない。」【美琴】

「そうね。王女さんをブリタニアに還すためにも降下は必要ね。」【美咲】

「艦長さん姫に代わって感謝します。」【レオ】


そうしてアマテラスはターミナルへ向けて進路を取った。そんな中、四人部屋で生活する事の許可が降りたソフィア達は部屋で談笑していた。


 その頃、本国に戻ったギャルド隊はアマテラスと新型五機の性能について議会で報告していた。


「まずはこの映像をご覧ください。この五機が日本のコロニーが極秘裏に製造していた新型ドリムスーツです。この機体は見て分かる通り各機体がそれぞれ、電子通信、可変戦闘、近接格闘、遠距離射撃、の分野に特化しておりその中でもこの白い機体の機動力においてはレッドナイトのそれと遜色ないと言っても過言ではないでしょう。」【アレックス】

「馬鹿な、そんな高機動兵器を地球人が使える訳が無いだろう!」【議員1】

「しかし、それが本当だとしたら一大事だぞ!」【議員2】

「えぇ、ですが最も脅威的なのはその五機の運用母艦と言えるでしょう。これが、その砲撃の一部です。ご覧の通り一撃で小惑星を粉砕しました。」【アレックス】

「あぁ、策敵網に引っ掛かり次第、いつでも出せるよう準備しておこう。」【議長】

「よろしくお願いします。」【アレックス】


そして、アレックスに議会への報告を一任した隊長のギャルドは指定された部屋にやって来た。


「これはこれは、ノーム夫人ではございませんか。此度は何ようで?」【ギャルド】

「娘が行方不明なのです。」【ノーム夫人】

「その捜索を何故軍に?」【ギャルド】

「訪問していた港が何者かに襲われたみたいなのだ。護衛も全滅と聞いている。」【ノーム夫人】

「その訪問した港というのは?」【ギャルド】

「ここだ。」【ノーム夫人】

「しかし、あのような場所を襲うとは悪趣味な連中ですな。」【ギャルド】 


ノーム夫人が伏せて渡したその紙切れに書かれていた内容を見たギャルドの第一声がそれである。その後議会からアレックスが戻って来るのを待ち、ギャルド隊はノーム夫人を艦に乗せその宙域を目指した。

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