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プロローグ

 N.C.116年。日本の首都は福岡に遷都し、かつての首都であった東京は歴史的価値を後世に残す重要な文化都市となっていた。そして今日は軍事英才教育所初等部福岡校、通称アカデミー福岡校の卒業証書授与式が執り行われている。


「今日を以て君たちはこのアカデミーを卒業する事となります。この六年間で学んだ沢山の事を振り返って下さい。しかし自分には才能が無いなどと言って自分の可能性を捨てないで下さい。君たちはまだまだ若い、宇宙、陸、海、防衛どの部隊にでも入ることが出来ます。操縦士、整備士、管制官に船医どのような役職を目指す事も出来ます。また一般企業に入る事も許されています。そして後悔のないよう四月からの進路先を決定してください。」


英才教育所が軍の施設とは言え、アカデミーの内容は市立小学校とたいした差はなく、集団生活に慣れるため四年生になると宿泊体験学習が月一のペースでやって来るくらいだ。無事に式が終わり教室で正真正銘、最後の終わりの会があった。


「皆、六年間お疲れさま!そしたら先生と最後の約束、家に帰ったら今日来れなかったお家の人にしっかり報告すること。いいわね?」

「「「「はーい!」」」」

「うん。それじゃあ舞ちゃん、おねがい。」


「起立、休め、気を付け、礼!」

「「「「さようなら!」」」」

「さようなら。」


そうしていつも道理、駆け足で教室から皆が出ていったあと私、白浜舞は学級日誌を職員室の先生の机に置いて帰るだけだ。いつもと違うと言えば、職員室へ向かう私の隣に先生がいることぐらいだ。


「舞ちゃん、今年一年間、学級委員長をしてくれてありがとう。先生楽しかったよ。」

「うん。私も楽しかった。ありがとせんせー。さようなら。」

「ちょっと待って。大事なこと伝えるの忘れてた。帰る前に所長室に寄っていきなさい。とっても大事なお話があるみたいよ。」

「はいせんせー。」


いったい所長先生が私に何の用なのだろうか?いつもなら先生が用件を教えてくれるのに、今日はただ大事なお話があるとしか言わなかった。まぁ、何であれいつも道理呼ばれたからには行くだけだ。


「失礼します。」

「よく来たね。白浜舞さん。」


所長先生には苗字でしか呼ばれたことのないのに、今日はフルネームで呼ばれたと言うことは思っていたよりかなり重要な話に違いない。


「まずは、首席卒業おめでとう。転入試験を受けた女子が男子を抑えてこの成績を修めた事は誇って良いことだよ。」

「そうですか。でもようやくスタートラインに立っただけですよ。」

「うむ、良い心がけだ。そこで本題だが単刀直入に言わせてもらう。新学期から宇宙(そら)に上がるきはないかね?」

「宇宙ですか!最短でも中等部で訓練しないとどの部隊も配属は出来ないと聞いてたんですけど。」

「艦隊に入れと言う訳ではない。ただ君のスキルを宇宙で磨く気はないのかと言うことだ。もちろん君一人で決める問題じゃない、ご両親としっかり話し合いをして明日の十七時に署名捺印をしたその同意書を直接私に提出して下さい。」

「あっ、ところで宇宙って具体的にどの辺なんでしょうか?」

「かなりの機密事項ですが、L4のコロニー群の中の一基であると言うことは教えておきましょう。」

「L4ですか。わかりました。」

「良い返事を期待しているよ。」


その後、よく読むとその同意書には全寮制の施設での生活費は国が全額負担する事のみが記載されており、この他の詳細は同意した場合のみお伝えすると書いてあった。


 所長室をあとにした私は校門で待っていたくれてたママと共に真っ直ぐ家路についた。


「パーティーまでにはパパは帰って来るよね?」

「そうよ。そのために今日は朝早くから仕事に行ったんだから。それがどうかしたの?」

「何でもない。とりあえず部屋で着替えてくる。」


何でもない訳ではない。たがそれを今ここでママに言ってもどうしようもない。問題はパパの方であり私がアカデミーに入ると言った時も反対していたので三年間コロニー生活で一度も家に帰れないと知るとどうなるか分かったものではない。


「アイちゃん、私宇宙に行っても良いのかな?」

『それは法に引っかかるような選択ではありませんよ。だから舞が行きたいと思うのであれば、そのようにパパに伝えるべきです。前の時も何だかんだで最終的にはアカデミー転入を認めてくれたのですから。』

「そうね。今日しっかりお願いしてみる。アイちゃん、応援してて。」

『了解。』


パーソナルAIのアイちゃんと喋りながら服を着替えて、リビングに降りるとパパが仕事から帰ってきていて、テーブルには私の大好物オムライスが用意されていた。


「おかえりなさい、パパ。」

「ただいま。卒業おめでとう舞。」

「ありがと。・・・・パパ、ママ、乾杯の前にこれを見てください。」


そう言って私がママに渡したのは先ほど所長先生から貰ってきた宇宙行きの同意書である。


「今日アカデミーで所長先生に宇宙でスキルを磨く気はないかと渡された。」

「舞は行く気なの?」

「うん。」

「期間はどれだけだ?」

「最低でも中等部に当たる三年間。」


無言で見つめう私とパパ、ここから先は言葉なんて必要ない、目を逸らした方が負けだ。


「駄目と言っても行く気なんだろう。」

「うん。」

「やっぱりな。そして志望はドリムスーツのパイロットか。まぁ好きにしなさい。」

「ほんと!」

「あぁ。アカデミーに転入した時から夢が変わってないなら仕方ないだろう。まぁ一人娘に三年間会えなくなるのが悲しくないと言えば嘘になるが、娘の夢を親が潰したらいかんだろう。」

「ありがとうパパ!」


そうしていつもならママに代筆させるパパが、自分で署名をして判子を押してくれた。


「良かったわね舞。パパ、あなたの娘は一人だけじゃないわよ。」


そう言ってママは自分のお腹をさすった。


「「えぇーーー!」」

「あら言ってなかったけ?二人目妊娠してる事。」


弟か妹かわからないけど、ママは妊娠しているらしいが、パパも知らなかったみたいだ。


「だから舞、この子が自慢できるパイロットになってきなさい。」

「はい!」


そうして私の卒業祝の家族パーティーは、ママの二人目妊娠発表と重ねて、あっという間に過ぎていった。翌日所長先生に同意書を提出しにいくとそこにはとなりのクラスだった、坂本麗奈ちゃんも来ていた。


「ふたりとも、ご両親の署名捺印はもらえたようだね。そしたらこれが持ち物用紙と次の集合日時ね。大抵のものは持っているとは思うけど、無いものは出発まであと一週間で準備すること。それと君たち以外にも女子が一人いるから仲良くしてあげなさい。」

「「はい。」」


そして私たちは所長をあとにした。持ち物用紙には衣類や薬などの日用品は支給されるため必要ないが、スマートデバイスとウェアラブルリンカーは必ず自分のものを用意する必要があると書いてあった。


 一週間後、軍と民間共同の宇宙港の指定された部屋に麗奈ちゃんと二人で行くとまだ私たちしか来ていないようだった。


「ねえ、舞って独立戦争の被害にあって月から引っ越してきたのによく親が宇宙に上がる事を認めてくれたね。」

「まぁね。アカデミーに転入するときに揉めちゃってたから今回は普通に同意してくれたの。」

「へぇ~。良かったじゃん。」


そうこうしていると部屋に誰かが入ってきたみたいだ。


「俺は仙谷利幸、金沢生まれの金沢育ちや。よろしくな!」

「こちらこそお願いします。」

「よろしくねー。」


一人目は第一印象元気すぎると言うぐらいの明るさで、焼けた肌が喋った時に見えるその白い歯を際立たせている。その後から入ってきたもう一人は眼鏡女子で手下げの中からパソコンのキーボードが飛び出していた。


「はじめまして相楽優美です。趣味と特技はプログラミングです。」


この時麗奈ちゃんと二人で『やっぱり。』と頷きあってしまった。それから時間があいて入ってきたもう一人の男子の方はなにも言わずに席について歳の割には落ち着いているように見える。というよりもむしろ無口だ。そして色白で長身なうえ髪も銀髪サラサラヘアーで顔立ちも良くて何だか同じ歳のはずなのに次元が違いすぎて取っつきにくいくらいだ。


「君のお名前は?」

「舞ちゃん、人に名前を聞くときはまずは自分からって言ってるでしょ。・・私は坂本麗奈よ、でこの子が白浜舞同じ福岡のアカデミーの同級生。それで貴方は?」

「僕は天野翔平。」

「出身はどこ?」

「気づいたら仙台の施設にいた。だから親の顔は知らない。」

「ごめんなさい。変なこと聴いちゃって。」

「別に。」


まぁ口数が少ないのは確かだけど、話しかけたら応じてくれたので、取っつきにくいと言ったのは間違いだった。


「よーし、遅刻した子はいないみたいだな。」


そう言って、所長先生が部屋に入ってきて扉が閉まるのと同時に全員が起立をし、敬礼をしていた。


「君たち、まだ軍に入隊はしていないのだから私に敬礼をする必要は無いのだよ。」


もっともなことを突っ込まれた私たちは全員が顔を赤くしていた。


「三人は初めましてだね。私はアカデミー福岡校所長の山本だ。今日君たちに集まって貰った本当の理由は、君たちが日本の所有するL4のコロニー群『タカマガハラ』にて開発が進められている第三世代の試作機のテストパイロットに選ばれたからである。」

「所長さん、俺の所にはもっと成績良い奴いましたよ。」

「そりゃそうだろう。なんせ選定基準は実技とゲームの結果なんだから。アカデミー合宿の時に先生が持ち込みを許可したゲームがあるだろう。」

「まさかロボット対戦オンラインの事ですか?」

「その通り。各アカデミーのデータベースに保存してある戦闘データを分析して選び出した最適解が君たちと言うことだ。そしてこのマイクロチップに各機体の基本データが入っている。これは軍内部でも知られていない最重要機密である。名前を呼ばれた者から取りに来て今直ぐに各自のスマートデバイスにインストールし、インストール完了後は直ちに返却すること。私が責任をもって廃棄します。」


所長先生は今すぐにと言っているけど、インストール終了まで一時間とか、ながすぎるでしょう。


「言い忘れていたが新型のその運用仕様上、データが多いから一時間ほどは見といてくれ。それとコロニーに上がっても機体(・・)はまだ完成していないから、上がって直ぐに乗れるなんて期待(・・)しないこと。」

「所長先生、なんか寒くないですか?」


麗奈ちゃんの言葉にみんな一斉に頷いた。


「そうか?私にこの部屋は暑いくらいだが。」


と言って自分の言葉を振り返った所長先生が独り大笑いしていた。


「すまん。君たちには古過ぎるネタだったな。」


そんなふうに所長先生と談笑しているうちにあっという間に一時間が経過して、機体データのインストールが完了していた。


「最後になるが、移動中のシャトルの中で必ず一回は目を通しておくこと。三十分後にシャトルは離陸する。私からは以上だ。」


ちなみに私たちが登場するの民間のシャトルらしい。かなり極秘裏に行われている計画らしく、一介の工業コロニーに過ぎない場所に軍用シャトルが頻繁に出入りするのは憚られるらしい。そうして三十分後、私たちのシャトルはL4に向けて飛び立った。

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