【第一話】奇怪な魔法陣
俺は西寺 煌斗24歳。職業は、なんとこの年になって学生である。といっても、みなさんの想像するような学生ではない。「この世界」のことを知り、適応するための、職業訓練校の生徒である。そこで俺は美少女たちに囲まれながら魔法と剣術を心得て、牙をむく魔獣たちと闘っているのだ。そして、そこを卒業したら勇者になって賞金を稼いで、夢を叶える。その夢とは、そう!「借金返済」である!
ことの発端はごくごく単純。別に大した能力も持たず、毎日が退屈で、このまま同じ日常を繰り返して生涯を終えるのか。と、暇しながら思ったことである。
その時の俺は片手間にパソコンを弄っていて、ネットでとある記事を発見した。
「日本中で失踪者が続出!さらに彼らの自宅近辺には類似した痕跡が多数!」
暇なので、覗いてみる。筆者によると、失踪者たちの自宅近辺。そこにはいわゆる、「魔方陣」なような並びのものがあり、それは木の枝、砂、石など、材質は違えど、全ての陣形は一致しているとのこと。さらに、これは愉快犯による挑戦的なマーキングなのか、それとも、異世界への扉なのだろうか...?と茶目っ気たっぷりに締められていた。
興味が出てきたので検索をかけると、案の定その画像が出てきた。少し複雑ではあるが、これなら自分でも再現出来そうなくらいだ。暇つぶしにと、その陣形をそっくりそのままマジックで紙に書いてみた。
書き上げた時、あるはずないと信じながらも、心臓はバクバクと打ち付けた。1分も待っただろうか。これだけ待って何も起きないのなら何も起きないのだろう。
「なんだよ肩透かしだなぁ...まぁこんな程度だとは分かってたようなもんだけど」
「はいお声いただきましたっ!!!」
「えっ」
驚く間もなく、俺は魔方陣の中へと吸い込まれた。