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はじまりの歌

ポニョンは3つの取り決めをすぐさま誓約として発表することを提案した。

1,軍隊を創設すること。

2,功績を上げたものは正規兵に取り立てること。

3,傷を負った者、戦死した者は一生本人とその家族に手当を支給すること。


僕は言われるがままに了承し、近隣の町に伝達した。

そして(これもポニョンの提案だが)、跡継ぎ以外の若い青年、馬、武器になりそうなものをとにかくかき集めることも付け加えた。

一日で百人ほどの若い男たちが集まった。下は十二歳位、上は四十歳近い男たちだ。

「よし、このくらいいれば二十人は使えるだろう」

「え?二十人だけか?」

「それくらいいれば十分よ。あとはカカシだ」

ポニョンは目を輝かせて言った。しかしこいつはただの泥棒では無さそうだ。

何か彼に導かれるまま、戦いの準備が行われている。

ゲームでいうチュートリアルみたいな感じなのだろうか?彼はいわゆる軍師役で、序盤の世界観やシステム作りを遠回しに教えてくれているのか?

「王様よう!こいつらの前で早く宣言してくれや」

「何を?」

「てめえ、さっき俺が頼んだだろうが!」

大臣や国民の前で、平気で僕を「てめえ」呼ばわり・・・たぶんこいつは軍師じゃない。



「しょ・・諸君!集まってもらってすまない。ご足労かけた。いや、何て言ったらよいか・・・忙しいところすいません」

上ずった声で営業周りみたいな挨拶をしてしまった。ポニョンがこれまたすごい顔で睨んでいる。

「オホン!ただいま我が国は存亡の危機に瀕している。世界はこれから戦乱の世となった。とにかく戦い抜かなければこの国は消えてなくなるだろう。そうすれば君たちも困るはずだ。僕なんかものすごく困る。戦争なんてゲームでしかしたことないし、それに僕は・・・」

「おめえら!」

ポニョンが大声で遮った。なんかいい感じで演説できていたのに、途中から身の上話みたいになってしまった。僕はいつもこうなんだ。会話が詰まると、とにかく自分のことを矢継ぎ早に話してしまう。沈黙が怖いんだ。自分に自信がないからだろうか・・・

「王様、自信を持ってくださいピョン。あなたがしっかりしていなければ、国民の士気は上がらないピョン」

気づけば横に立っていたぴょん吉が言った。

そうだ、僕は王なんだ。責任がある。これはゲームではない。セーブもロードもできない。ぴょん吉やポニョンや国民の命がかかっているんだ。

肩が重くなるような感じがした。手が震えだした。でも僕は、意を決した。


「王は褒美をしこたま用意してくれている!お前らみたいな穀潰しを、王は貴族に引き立ててやろうとしているんだ。命を懸けやがれ穀潰し共!お前らは勝って故郷のボケナスどもに復讐するんだ!」

ポニョンが息巻いている。烏合の衆の中に、熱気が立ち込めた。

この国は文化的には進んでいるが、農村では未だに封建的な秩序が根強いのだろう。跡取りになれない男たちは「穀潰し」のような扱いなのかもしれない。日本でも跡取り以外は結婚も難しいなんて時代がたしかにあった。

ポニョンは『理』ではなく『利』を説いているんだ。



「我が国はたった今より、軍を創設する。諸君はその尖兵になるのだ。功績のあったものはすぐさま貴族に取り立て、領地も与えよう!」

僕はポニョンの言葉を遮って言った。眼前の男たちがにわかに騒ぎ出す。彼らの目に色が点った。

ポニョンはニヤッと笑って後ろに下がった。

「これから始まるのは戦争だ!時には傷つき、命を落とす者もいるだろう。だが、私は勇敢な血には最大級の礼を持って接しよう。諸君の働きによって、諸君の妻や子達は永久に繁栄するであろう!」

小さな歓声が上がった。それはゆっくりと熱を帯びながら広場を駆け巡った。


「使える奴が四十人になった」

ポニョンが言った。

「こいつらの顔をよく覚えておけよ、王様!こいつらがあんたの兵隊だ。そしてあんたの命令で死ぬ」

「わかっている」

僕は心臓が軋むように痛んだのを隠すように、小さな声で返事をした。



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