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短編(1)
僕がおそるおそる顔を後ろに受けると桜さん、いや、谷川さんか?が、見るからに不機嫌そうな顔で、こういった。
「何寝てんの。あたしでさえ寝なかった授業を。ばっかじゃないの?」
うるせえ。余計なお世話だ。そもそもだぞ、谷川さん、僕にとっての一分の授業中の睡眠は普段の睡眠の1時間分と一緒のようなもんなんだ。それはたとえ一代ローマ法王のペトロでさえ侵しがたい真実である。
「そんな馬鹿げた反論は聞かないから、早くこっち来い!」
と、僕は強制的に手を引っ張られ、連れて行かれた。少し後ろを振り返ると、拓武のニヤけた顔が目に入った。後で覚えてろよ、お前。




