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異世界行っても漫画家目指す!でもその前に……  作者: ひさなぽぴー/天野緋真
少年期編 1~でもその前に、精進だ!~
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第60話 ダンジョンの結果と消しゴムづくり

「兄様……本当に大丈夫?」

「……へんじがない……ただのしかばねのようだ……」

「そんなあ! 兄様死んじゃやだよ!」

「ごめんうそ。死ぬかとは思ったけど、命に別状はないよ」

「も、もーっ、心配するでしょー!」

「ごめん、ごめんってば」

「お前も無茶するよ、まったく。その……けしごむ? とか言うののためにマナ全部使うかよ……?」

「使う価値はあると思ってる」

「はいはい……んで、どうすんだよ?」


 そんなやり取りをかわすぼくたちは、魔法研究所の研究室に戻ってきていた。

 そこでぼくは、ティーアとトルク先輩の前で例の銀色の粘液を実験しようとしている。

 今はもう日が暮れかかっている……けど、まずはここまで何があったのかを感嘆に説明しよう。


 あの後ぼくたちは、藤子ちゃんの手を借りてあのダンジョンを神話級ゴッズ遺産級レガシーのように、自然崩壊しない形態のダンジョンに定着させることに成功した。


 ただ、その際藤子ちゃんは具体的なことは何もしてくれなかった。

 ダンジョン化の魔法式と、あのダンジョンを構成している基本部分、その中の変換すべきポイントなどを指摘しただけで、あとは全部ぼくに委ねたのである。


 そして、彼女の助言をもとにぼくがマスターモンスターに宿る魔法式を改ざんしたんだけど……。

 まさかマナを全部持っていかれるとは思わなかった。いわゆる、現在MPをすべて消費したって状況だね。

 ゲームの場合、MPを消費しようが生命活動に影響はないけど、現実はそう甘くはなくって……うん、普通に気絶しました。


 まあ、藤子ちゃんの例の回復魔法で直後に完全回復したんだけどさ。

 本当なら数日は寝込んだ上に、半月は魔法が使えなくなるくらいマナが枯渇した状態だったらしい。明日の元気を今日使ってしまったわけだね。それを即改善とか、あの魔法ホントに反則すぎ。


 それはさておき……藤子ちゃんが手伝ってくれなかったのは、すべてのことを彼女がやってしまうとぼくのために、ひいてはこの世界のためにもならないから、だとか。


 確かに、魔法式の改ざんはかなり高度な「魔法の状態を見極める目」と「魔法式を正確に書き換える技術」、さらには「それに見合うだけのマナ」が必要になる、ということがわかった。そして今回のこの経験が、今後の研究に役立つだろうことは否が応でもわかる。

 何せ、規模がとてつもないだけで、今回やったことは錬金術とほとんど変わらないのだ。この技術を突き詰めて極めれば、きっとぼくがやりたいと思っていることの多くは実現できるようになる。


 ……と思う。


 そんなことがあって、ダンジョンは固定できた。ついでに、内部構造も大幅に改造させてもらった。


 藤子ちゃんの「ある程度規模を拡張して、初心者から中級者までがほどよく実入り良くダンジョンを経験できる場所に改造する」という案に基づいて、かなりゲームみたいなダンジョンになっている。

 細かう言うと、全10階層、出戻り可能、5階までは初心者向けのモンスターを配置、6階から中級者向けのモンスターを配置、フロアは毎回ランダム、5階に中ボス配置、と……元からゲームっぽいダンジョンが、完全にゲームのダンジョンになった。


 っていうかこれ、不思議のダンジョンだね。一応、藤子ちゃん監修のもとで2回潜りなおして、問題ないことも確認済み。


 ギルドには、「マスターモンスターを倒しても消えませんでした」と報告して、ちょっとした騒ぎの後に一応完了の言質をいただいた。後日、より上のクラスの人たちが潜ることになるらしい。

 たぶん、何の成果も得られませんでしたとなるだろうけどね。なんてったって、藤子ちゃんが噛んでるんだから。


 まあ、ぼくも悪乗りしたことは否定しない。あの時はティーアとトルク先輩を完全にのけ者にして、藤子ちゃんと日本語で盛り上がったのは本当に申し訳ないと思う。

 でもしょうがないじゃない。前世からのサガというか、こう、ほら。やったことある人も多いでしょ、RPGツ○ールとかの類って! 藤子ちゃんだってゲーマーだったっぽいし!


 おかげで藤子ちゃんと別れた後は2人から盛大に吊るし上げを食らったんだけど、光の女神様本人だからと押し通して納得してもらった。彼女の御利益の程は十分すぎるほど実証されてるので、さすがに信じてもらえたよ。


 ともあれそんなわけで、今日という日は実に有意義に終わりを迎えつつあるわけですが。まだぼくにはやることがある。

 そう、消しゴムの作成だ。このためにぼくは色んなリスクを負ったんだからね。


「しかし今回は、女神の啓示が降りている……!」

「……啓示って言うよりか、ただの助言って感じだったよな」

「神々しくなかったよね」

「そ、それは言わないお約束だよ……」


 そりゃあ、藤子ちゃんは神様じゃないんだから仕方ないじゃないか。

 神様を殺したことくらいはあるかもしれないけど、彼女は人間なのだ。たぶん。


「気を取り直して……氷霊石ひょうれいせき!」


 キコキコキコーン……っと。


 アイテムボックスからぼくが取り出したのは、サファイアにも見える透き通った宝石。けれどこれは宝石ではなくて、そう、この世界のファンタジックマテリアルだ。


 水、土、風、火と基本4属性は既に出揃ってたけど、ここで氷の登場。氷霊石が持つ魔法式は、ズバリ「固定」だ。

 そう、この力を使って粘液を凝固させようと、そう言う作戦だね。


 今回はもうなんていうか、失敗する気がしない。何せ藤子ちゃん直々の案だし。まあどう使うか、と分量の問題はあるけど、そこはあまり大した問題じゃない。


「どうするの?」

「土器の時みたく、砕くか?」

「とりあえず、粉末状にして混ぜるのと、直に突っ込むのと両方やってみるよ。ティーア」

「うん、粉にするんだよね。まっかせて!」

「そっちができるまでの間、ぼくたちは直に試してみよう」

「あいよー」


 ティーアには氷霊石を10個ほど渡す。受け取った彼女は、それらを抱えて部屋の隅に置いてある石臼のほうに向かっていった。

 力仕事ができるの、今のところティーアしかないから仕方ない。この世界での力仕事は、単純な力よりマナの赤い使い方のうまさで可否が決まるのだ。


 ちなみに霊石の粉末化は、ある程度までは石とか金槌とかでぶん殴って砕いた後、石臼に放り込んで挽く方法が一般的だ。川が近くにあれば水車でも使えたんだろうけどねえ。


「さーて、いっちょやりますか」


 腕まくりをして、ぼくはアイテムボックスから銀色の粘液を取り出すのであった。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 結論。


 氷霊石を直接粘液に突っ込むと、ガッチガチに固まって凶器にしかならない。


「……一つ賢くなった」

「質が良すぎるのも問題かもな」

「だねえ。最高級の氷霊石の『固定』の威力すごいなあ……」

「確実に人を殺せるな……」

「これはこれで、何かの素材に使えそう……」


 今ぼくたちの前には、固形物を通り越して金属か何かみたいな状態になった元銀色の粘液が何個も並んでいる。見た目はどう見ても銀だ。

 数や重さ、サイズなどを考慮していろいろ試したけど、結果はほとんど同じだったんだよね……。


 なお、この状態をスキャンしてみたら、対象名が「アルギュース(質:最高級)」に変わってた。もう完全に別物だこれ。


「あるぎゅーす? 聞いたことないなあ」

「ああ、なるほどアルギュース。……って、こう作ってるのか、へえ」

「知ってるの、先輩?」

「銀って名のつく武器とか防具は、大体これが使われてるんだぜ。銀なんてやわっこい金属が、そんなんに使えるわけないだろ?」

「そりゃ確かに。へえ……これがそうなのか……」


 うん、地球で銀が武器に使われることなんて、狼男とか吸血鬼とかを相手にしたときだけだろうね。あとはイオンにして、バクテリアの殺菌とか?

 ところがこのアルギュースは、見た目はどう見ても銀なのに、鋼鉄並みの硬度があるんだとか。なるほど、そりゃあ武具に使われますわ。


 しっかしまあ、失敗作ではあるんだけど、なんなら高く売れそうだ。資金には困ってないけど、失敗作をちゃんと処分できるのは不幸中の幸いかな。


「兄様ー」

「ん、どうしかした?」

「できたよー、粉末化」

「お、ありがとーティーア」


 戻ってきたティーアは、お盆にいくつもの小皿を乗せている。それぞれには、さまざまな大きさの銀色の粉。


「どうなるかわかんないから、粒の大きいのから小さいのまでいくつか作ってみたよ」

「おお、ありがとうティーア。さっすが、わかってる」

「えへへ、まあねっ」


 ティーアがちょっと姿勢を下げたので、ぼくは察して頭をなでてやる。すると彼女は、嬉しそうに笑った。天使。


「おいそこの兄バカ」

「アッハイ、ケジメします」

「そこまで言ってねえだろって……」


 トルク先輩はそう言うと、小皿の一つを手に取った。顔がちょっと苦々しい。


 うん、まだ終わってないんだから気を抜いちゃダメだよね。


「……とりあえず、粒子の細かい奴からやろうか。大きすぎたらどうせアルギュースになるだろうし」

「はい兄様、手袋。それからへらだよ」

「お、さんきゅ。……あ、先輩そこの土霊石どれいせき土器ください」

「ん、ほい」

「あざっす。んじゃ、やってみますねー」


 土器の中に、銀色の液体と一番粒子の細かい氷霊石粉末を入れる。

 もちろんその前に重さははかる。それを記録するのは基本的にいつもティーアの仕事だ。


 合わさった素材同士を混ぜる。混ぜる……混ぜる。

 銀色の粘液に、青い粉が少しずつ馴染んでいく。けれどそれは長続きせず、だんだんとその青さは消えて行った。最終的に、元の粘液と見分けがつかないくらいの銀色に戻る。


「……どうだ?」

「さっきみたいな劇的な変化はないなあ。……変化が起きるまで時間がかかるとか、そう言う可能性もあるだろうけど……」


 すっかり混じりあったと思うんだけど、見た感じは粘液のまま。スキャン結果もそのままだ。これは失敗かな。


 そう思ったところで、先輩がおもむろに口を開いた。


「3つに分けてみようぜ。日干し、暗所で保管、焼く」

「あ、そうだね。それがよさそうだ。じゃあ早速3つに分けて……」


 特に何も言わなくても、保存用の容器を差し出してくるティーアの気配り。

 みなさんご覧になりましたか、いい娘でしょう。ぼくの妹ですよ!


「後の粉もこれと同じにすっか?」

「あ、うん。分量をもうちょっと分けて考えたいところだけど、まずはこの比率で一通り試してみよう。ティーア、粉はまだあるよね?」

「うん、念のため多めに作っておいたよ」

「おっけー。んじゃ、今日はこの比率で全種試して一旦お開きにしよう。門限が近い」

「あいよー」

「はーい!」


 たまには城に戻らないという選択肢も採りたいなあ。特にこうやってノってる時は余計に。

 今度城内にぼく専用の研究所作ってもらうかなあ……アトリエも兼ねて。


 そんなことを考えつつ、実験は続いた……。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


粘液に魔法石ぶちこんだだけで金属になるとか、どういう原理で起こってるんでしょうね。

設定してるボクが言うのもなんですが、この世界の法則ってどうなってるんでしょう?(ぁ

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