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異世界行っても漫画家目指す!でもその前に……  作者: ひさなぽぴー/天野緋真
少年期編 1~でもその前に、精進だ!~
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第58話 結成! 赤銅色パーティ

「じゃあ、せーので見せあおう」

「先輩、後だしはダメだよ」

「ばっか、そんなことするもんか」

「いくよー?……せーのっ」

「「「ていっ!」」」


 そんな掛け声で、ぼくたちは手にしていたカードを同時に前に出した。


 出てきたのはぼくから順に、赤銅色、赤銅色、赤銅色と、はかったように3人とも同じ色をしていた。


 ぼくたちはそんなカードをそれぞれ順繰りに見やってから、今度は互いの目を見やり、そして誰からともなく笑う。


「なんだ、みんなブロンズか」

「あはは、バカみたい」

「まったくだよ、妙に緊張しちまったぃ」


 もう一声、笑ってぼくたちは今度はため息まじりにイスにもたれかかった。


 ここは、冒険者ギルドのハイウィンド支部。食堂や酒場も一緒になっていて、かなりにぎやかだ。満員御礼ってわけではないけど、都なだけあってなかなかの客入りだね。


 なんでこんなところにいるのかというと、お察しの通りギルドに登録するためだ。

 シャニス義母さんによる修練場での騒動から3日経って出した結論が、「やっぱり限定解除オーバードライブしよう」だったからね。


 理由としては、たとえ威力が落ちても魔法の細かい部分まで式を見えるようになる(いじれるかどうかは実力次第だけど)のが一番だ。


 ぼくがやろうとしていることは、正直な話、地球における人類が4000年以上かけて培ってきた技術の蓄積をパクって、超速の技術ジャンプを起こすこととイコールだ。歴史に対する冒涜と言ってもいいだろう。

 けれど、それでも自分の夢が漫画家である以上、ぼくはやめるつもりはない。


 そうは言っても、科学による技術の蓄積を、この世界ですぐに再現することは並大抵のことじゃない。


 でも、ここに魔法による力が加わったらどうなるだろう?

 前世、地球における創作によくあった、サイエンスファンタジーというジャンル。それと同じことができないだろうか? とまあ、そう思ったんだよ。


 魔法で、科学の力を後押しすることができれば……それは地球の歴史とはまた異なる、この世界の歴史になるだろうと、……ま、そんな感じでね。

 そんなわけで、そのためには限定解除オーバードライブが必要だろう……と、まあそう思ったんですよ。よりよい漫画家ライフ、その足場作りのために。


 でも、そのためには冒険者ギルドのクラスをシルバーまで上げないといけないので……こうやって、いつものメンバーと一緒に登録しに来た、というわけだ。


 あ、ちなみに破壊された修練場の一部は、現在鋭意復旧中。下手人のシャニス義母さんは、父さんから大目玉を食らって……るようにみえて、あれは普通にイチャついてるだけだったな。爆発すればいい。


「とりあえず、アイアンじゃなくてよかった、ってところかなあ」

「だねー。一応ちょっと先に進んだ状態だもんね」

「シルバーへの昇格条件ってなんだったっけか?」

「ブロンズクラスの依頼を一定数こなすのと、その上での試験に合格だね」

「討伐系の依頼とダンジョン系の依頼とそれ以外で、数が違うんだったっけ?」

「そうそう。一番少ないのは討伐系だけど、シエル国内じゃあんまり多くないらしいから、それはちょっと期待できないけど」

「討伐か……とんでもない強さの魔獣と戦うのは、あたいらにゃ向いてねーよな」

「だねー」

「うんー」


 まあ、シルバーになるのをそこまで急がないといけないってわけでもない。


 そもそも銃を開発しようとしてるのは、ぼくの当初の夢とは全く関係がないことだ。あくまで、2度とシェルシェ先輩のような犠牲者を出したくないから、そのために最低限の強さがほしいからという理由でやっているだけなんだから。


 というわけで、やはり優先は文具の開発や印刷技術の構築のほう。


 自分がこなした仕事のことなんかは、この高性能なギルド証にちゃんと記録されるらしいし、試験はどこの支部でも受けられるらしいしね。

 期限が設けられてるわけでもないから、昇格そのものを急がないといけない状況ではないんだ。


 しっかし……データが保存できるっていうこのギルド証、案外この世界の中でもかなり異彩を放つ代物だよね。

 登録の際はこれにマナを注ぎ込んで実力のほどを確認したわけだけど、偽造防止の魔法も含めて、かなり緻密で精巧な魔法が使われてる。冒険者ギルドの秘匿技術みたいなのがあるのかねえ?


「で? どーすんの?」


 テーブルにずいっと乗り出して、トルク先輩が笑った。

 ここでその言葉が意味することは、一つしかない。


 ぼくは、頷いた。


「うん、せっかくだし、何か仕事やってみようと思う」

「だよな! そーこなくっちゃ!」

「わたしもー!」


 剣と魔法の世界で、ギルドに登録。

 そりゃもう、何かやる以外の選択肢があるわけないですよね!


 というわけで、依頼が張り出されてる掲示板のほうへと向かう。


「……うーんと」

「結構多いね」

「あっちのほうにブロンズとアイアンの依頼がまとめてあるみたいだな」


 ぼくが見上げる(他の二人はぼくより高い。悔しくなんかない!)掲示板は、3つに区切ってあるようだ。プラチナ、ミスリル向けとゴールド、シルバー向け、そしてブロンズ、アイアン向けだ。

 まあ、プラチナ、ミスリル向けの区画には何も張り出されてないんだけどね。そりゃ、そんな難易度の高い仕事がそうそうあっても怖いだけだ。


 見たところ、ゴールド、シルバー向けの仕事はやっぱり討伐や護衛、ダンジョン攻略と言った、ある程度以上の実力が必要になるようなもの……つまりは危険度の高いものが多い。

 一方、ブロンズ、シルバー向けの依頼は物品の配達や物資の収集といったものが多い。まあ、この辺りはゲームなんかとあまり違いはなさそうだ。


「……あれ? 兄さま、あれ……ダンジョン攻略があるよ」

「え? あ、ホントだ」

「マジで?……マジだ、ブロンズ向けでダンジョン攻略なんてあるな……」

「……もしかして、できた直後のダンジョンなんじゃないかな?」


 ぼくの言葉に、2人がああ、と頷いた。


 ぼくたちが4年前に巻き込まれたダンジョンもそうだったけど、この世界のダンジョンは基本的に自然発生するものだ。

 父さんたちから聞いた話だと、低確率でマナに発生する「ダンジョン化」という魔法式が動植物に取り込まれた時、その生物を媒介にして発生するんだとか。

 これが低確率とは言っても、マナは空気中にヴィノリウム(いわゆる酸素的物質)と同程度は含まれているので、なんだかんだで結構頻繁に起こる。


 ダンジョンは発生すると、周囲のマナによって中身を拡張していき、最終的には崩壊する。その時に、周囲も同時に破壊されてしまうため、ダンジョンは放置するわけにはいかない。

 けれどこれは逆に言えば、早期に発見できたダンジョンは、まだまだ規模が小さいことを意味している。ブロンズのところに攻略の依頼があるのは、きっとそう言うことなんだと思う。


 ちなみに、冒険者ギルドとは元来、そうした自然発生したダンジョンが周囲に被害を生む前に処分してしまうための組織だったらしい。

 上位2種、つまり神話級ゴッズ遺産級レガシーは大昔から存在していたもので、そういうのとは全然違う仕組みの別物らしいけどね。


「なあ、これ結構狙い目なんじゃね?」

「……そう、だね。できたばかりの小規模なダンジョンなら、ぼくたちでもなんとかなるかもしれない」

「……うん。もうわたし、負けないもん」


 ダンジョンには決して軽くないトラウマのあるぼくとティーアだけど、だからと言って挑まないでいいっていう話でもない。

 あの時がそうだったように、ダンジョンの発生に巻き込まれる可能性はゼロじゃない。そう、この世界に生きている以上は、ね。


 ……まあ、精神的に受け付けないようだったら、その時改めて考えればいいよね。一応あの時の教訓ということで、星璽せいじには本気で危ない時を藤子ちゃんに知らせる用の緊急通知機能も付けてもらったし。


「よーし、じゃあ、最初の仕事はダンジョン攻略! それでいいかな?」

「おっけー!」

「だぜ!」


 そんなわけで、ぼくたちはその依頼の番号を記憶してカウンターへと向かう。

 そこでは、登録した時とは別の受付嬢さんが出てきてくれた。時間を過ぎたのか、それとも休憩しているのか……まあいいか。


「あの、559番のやつを受けようと思うんですけど」

「番号559……と、これですね。ハイウィンド郊外に発生した初期ダンジョンの攻略」

「はい、それです」


 受付嬢さんに見せられた書類は、掲示板に張ってあったものと同じ内容だ。

 それを確認して、ぼくは頷く。


「依頼に参加されるのは、3人でよろしいですか?」

「はい、そうです」

「わかりました、パーティでの受諾ということですね。では、こちらの書類に必要事項をお書きください」

「わかりました」


 渡された紙は、依頼に参加する人間のことを書くもののようだ。


 ……普通に差し出されたけど、これも紙なんだねえ。自分のやったことだけど、影響の大きさを実感するなあ。


「ねえ二人とも、パーティの代表者なんてのがあるみたいだけど……」

「それはセフィでいいんじゃないか?」

「うん、リーダーはやっぱり兄様じゃないと」

「……はいな」


 そんなような気はしてたので、ぼくは驚かずに自分の名前を書いた。

 それから、仲間のところにティーアとトルク先輩の名前を。


 それ以外は、注意事項や契約内容の確認になっていた。あれだね、ソフトのインストール時に出てくるやつによく似てる。


 まああそこまで大量で雑多ってことはなくって、「死んだ場合の補償内容」とか、「今回のダンジョンの性質」、「履行期限」とかがほとんどだけど。

 それらを2人に説明したうえで、2人の了解を得てからぼくは、確認したというチェック欄に丸を書きこむ。


「……これでいいですか?」

「はい、確認いたします。……、……、っ!?……で、では……あの、セフュード様をリーダーで、この依頼を受理いたします。皆さんのギルド証をこちらへ」


 ……ぼくからいかにも畏れ多いと言わんばかりに受け取ったのは、きっとぼくの名前を見て驚いたんだろうな。偽名を使う意味もないよなあと思って、本名で書きこんだんだけど。

 万が一他国で何か依頼を受ける時は、本名使わないほうがいいかもなあ。父さんはどうしてたのかな。今度聞いてみよう。


 そんなことを考えていると、受付嬢さんは奥から出てきたおじさんにギルド証を渡した。

 渡されたおじさんが奥に引っ込むと、今度は3回、光が漏れてくる。

 その後でおじさんは戻ってきて、ギルド証を受付嬢に渡す。そしてそれは、ぼくたちに戻ってくる。


 この間およそ1分ちょいかな。……なんだろう、今の?


「はい、依頼内容の記録が完了しました。こちら、お返しいたします」

「どうもありがとうございます」


 なるほど、今のがギルド証へのデータ登録か。

 外部の人間には見せたくないということは、やっぱりギルド証含めて、何か普通じゃない技術が使われてそうだ。今日帰ったら、最速でスキャンかけようっと。


「あと……こちらはダンジョンがある場所周辺の簡易地図です。どうかお気をつけて」

「はい、ありがとうございます」


 依頼受理はこれでおしまいか。案外、あっさりとしてるような。まあ、こんなもんか?


「さて、じゃあどうする?」

「不可抗力とはいえ、ダンジョンに潜ったことのある2人はどう思うんだ?」

「えっと……準備は絶対必要!」

「同感。今日は各自準備に専念して、明日の朝一番でここに集合ってことで、どうかな?」

「異議なし!」

「なーし!」

「よーし。それじゃ、今日はこれで一旦解散! また明日会いましょう!……あ、ちなみに食料とかそういうのはぼくが担当するよ。秘密兵器があるから」

「わかった、任せるよ。まあ、あたいはダンジョン初めてだからな。そこはセフィ、頼んだ」

「任せといて!」


 とまあ、こんな具合でぼくたちは初のパーティを組んで、初の(?)ダンジョン攻略へと挑むことになったのでした。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


クリスマスは、前職が製菓工場勤務だったおかげで、どうにも地獄のイメージがいまだに抜けません。1日27時間働いたのはもういい思い出。

え? 予定?

あったらこの時間に作品投稿なんてしてないっすよォ!(カッ

マジ性の6時間とか爆発してしまえばいい!!(カカッ

まあ要するに人肌のぬくもりがほしいです(シャキーン

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