第20話 次の獲物は
ごくり。
と、誰かがつばを飲み込む音が工房に響いた。
ぼくはそれに応じるように、インクをつけたペンを静かに。静かに、紙の上で走らせる。
するとそれは、すうっと抵抗なく、ほとんど音もなく動いて、きれいな一直線が現れた。
その線を、ぼくはじいっと凝視する。ぼくだけじゃない。ぼくの周りにいる、ティーア他いつものメンバーも、固唾を飲んでそれを見守る。
1分。……くらい。
もういいよね、いいよね? と言いたい気持ちを抑えながら、ぼくはそろそろと後ろに振り返った。
出迎えてくれたのは、シェルシェ先輩の力強い頷き。そんな彼にぼくも頷いて、張りつめていた緊張の糸をぶった切った。
「やったああぁぁっ、完成だー!」
「ばんざーい!」
「セフィ君、お疲れ様!」
「やったぜー!」
そう言い合って、ぼくたちは互いにハイタッチを交わし合う。
何が完成だって?
ふっふっふ、刮目して見よ! このにじみのない美しい直線を!
初めて作った紙じゃ、こうは行かなかった。そう、ぼくたちは遂に、インクのにじまない紙を完成させたのだ!
長かった! ここまで来るのに、1年1か月と22日もかかった! なまじ元々作り方を知ってただけに、わりと簡単にできた紙作りに比べると、この製品改良はホントに大変だったぜ……!
そもそもこの世界、ペーハー値を具体的に確認する手段がないのだ。リトマス試験紙? なにそれおいしいの?
もちろん石油製品とかの加工物質なんて、ろくにあるわけもなくて。そんな中で、酸性にならず、しかもにじみを抑えられるものを探すなんて、砂浜で特定の砂を探すようなものだ。
確かにぼくには、星璽がある。これを頼れば、ある程度の結果は予想できる。でも、その特権を持っているのはぼくだけだ。これで効率よくものを集めるなんて、できっこなかったのだ。
色んな物を手当たり次第に集めて、とにかく徹底的に試した。量はもちろん、一度火を通すとかして、性質を変えたものでやってみたり、いろいろと混ぜてみたり。
最初はもう、半年どころか10か月くらい本当にまったく成果が上がらなくって、やっぱり酸性紙で妥協すべきだったなあと思った。けど、そういう苦労も無駄じゃなかった。
星璽には、データベース機能がある。今までにスキャンした物質のデータは、全てまるごと中に記録されている。この中から、特定のものを混ぜた時に生じる結果をシミュレートする機能が搭載されてからは、早かった。藤子ちゃん、さすがです。
彼女も忙しいみたいで急ごしらえと言っていたので、性能のほうはあまり良いとは言えなかった。けど、それでも前世のスパコンみたいな機能だ。これが無駄になるわけがない。
そうして、サイズ剤に最適だと言う答えを得ることができたのだ! 後はどういう配合比率にするか、そして紙に対してどうやって、またどれくらい使うか。その最適解を探すだけだった。
そしてその答えが、今日見つかった。この世界で、中性紙に最も適したサイズ剤……それは!
……あ、ドラムロールお願いしますね。
はいテイクツー。
この世界で、中性紙に最も適したサイズ剤……それは!
毒の悪名高いシュムノガの根っこ、その抽出液に、腹痛に効く薬草、パマカ草をすりつぶしたものを混ぜ、水で薄めたもの、です!
比率は2.7:1.22:6.08! めっちゃ細かい数値になったけど、これがずれると結構な差が出るんだから仕方ない。
けれど調整が難しい分効果も大きくって、この完成品を使って作った紙のインクにじみは、ご覧の通りほぼゼロ。まるで、前世のそれを見てるみたいだぜ……!
「おお、ついに完成か?」
「はいそーです!」
ぼくたちの歓声を聞きつけて、道具屋の大将がやってきた。彼にサムズアップを向けて、ぼくは笑う。
ここ1年とちょっとで、彼はすっかり大実業家になった。何せ、紙という発明が今までなかった世界だ。それをいきなり扱うようになったんだから、引く手あまたに決まってる。
そして鉄板ではあるけれど、彼は統一教育学校という大口の顧客を抱え込んだことで、うまく商売を軌道に乗せたのだ。元々道具屋の主人として商売を続けてきた彼だが、最近はほとんど製紙業者と化している。
もちろん、作り方を教えてほしいと言う人もたくさん来る。普通ならこういうものは秘匿するものだが、なにせぼくは、一刻も早く紙を普及させたい。ここは様々な利益をちらつかせて、製紙法を教えることを黙認させている。
そして、彼に与えた利権の一つ。それが、インクにじみを防ぐ方法を教えること、である。その契約を今、ここで果たそう……。
……いや、もちろんいずれ学校を卒業した後は、他の土地に移って製法をばらまくつもりだけど。それまでまだ4年近くあることを考えると、ぼく専属に近い形で紙を用意してくれる存在はほしかったわけだね。
「これで紙の需要はもっと上がるってわけだ。坊主、お前も本当、頭が回るな」
「いやいや、そんなことはないですよ」
この世界に生まれてもうおよそ6年、このやり取りも慣れた。
それにシェルシェ先輩っていう転生者仲間がいるおかげか、あんまり気にもならない。やっぱり、仲間の存在は偉大だ。
「砂糖の売り上げもこれから見込めるし、笑いがとまんねーな……」
うひ、とやや下卑た笑いを浮かべる大将。まあ実際、止まらないんだろうし無理はない。
え、なんで砂糖かって?
うん、これね。実は、サイズ剤を作る上で思いもよらない副産物として、手に入っちゃいました。
この世界、前世のかつてと同じく砂糖は貴重品。南国でしか栽培できない、スイートフルーツとかいう果物から取っているんだとか。
当然、扱えるものは限られてくるし、流通の関係もあるので高級品にもほどがある品だ。上流階級なのは間違いないだろうぼくも、砂糖由来と思われる甘さを口にしたことは、転生してからと言うもの片手で数えられる程度しかない。
ところが、サイズ剤に使うシェムノガがスイートフルーツと同じく、砂糖を精製することができる成分を持っていたのだ。
シェムノガは、一見すると里芋に似ている。地面から上には、ひょろりと伸びた茎。その上に、幅広の葉っぱを茂らせる。地面の下は、肥大化した根が鈴なりになって、実のように成長していく。まさに芋って感じだ。
サイズ剤にはこの地下茎……要するに芋的な部分を使うんだけど、これが相当の糖分を蓄えていた、というわけ。もちろん、発見には星璽の機能が活躍した。
この芋を一度煮詰めて抽出液を作り、そこに薬草と水でサイズ剤ができることはさっき言った通りだけど……芋が糖分を持っているんだから、当然この抽出液も甘いのだ。ここで薬草とかを混ぜないで固めれば、見事に砂糖ができるという寸法。
こちらも、大将を通じて早くもシエル王国内で流通が始まっている。何せ、シエルじゃまったく手に入らないと思われていた砂糖だ。本来は嗜好品であるはずのこれが、何せ原料の関係で安い。おかげでまあ売れること売れること。
ね? 笑いが止まらないのも無理はないのだ。
ところでこのシェムノガ。さっきちらっと触れたけど、毒を持っている。それも根の部分に。
じゃあその砂糖食べたら死ぬじゃん、とお思いのあなた。ここが一体どんな世界か忘れておられるようだ。
この世界は、魔法が存在するんですよ? 解毒魔法の1つや2つ、ありますって。砂糖を取り出す前の芋に、しっかり解毒魔法をかけて1日ほど寝かしてやればあら不思議。毒はきれいさっぱり抜け落ちて、おいしいおいしい砂糖芋の出来上がりですよ。あとは普通に抽出すればオッケー。
もっとも、植物やそこから取り出した物質に対して、治療行為である解毒魔法をかけるなんていう行為を実行したのは、ぼくが最初だったみたいだけど。どうも、植物が形態が違うだけで動物と同じく「生き物である」という感覚は、まだこの世界にはないみたい。
……前世のヒ素以上に有用な毒物が完成したという話は、ご勘弁願おう。
ちなみにサイズ剤として使う場合も、先に解毒したうえで使う。そうしないと、紙が毒物になっちゃうからね。いずれは、品種改良を重ねて毒を持たない品種を作れたらいいな。その頃までぼくが生きている可能性は低いけど。
ああ、それから糖分は一緒に入れる薬草のパマカで中和されるので、紙は全然甘くないです。
「うーん、こりゃホントにすげえなー。これでもうちょい、魔法式に柔軟に対応してくれたら完璧だ……」
「はは、そこまでを求めるのは難しいでしょう。でも、いつかそういう紙が出てくるかもしれませんね」
2人の先輩が、紙にあれこれと書きながら話している。
なるほど、そういう考え方もあるか。
魔法を物質に組み込むという技術は、まだその存在しか授業で習ってないので詳しいことはわからないんだけど……。組み合わせようによっては、本がそっくりそのまま魔法を使うための媒介として使えるようになるかもしれないよね。魔法道具としての本、憧れますね。
む、待てよ。それを使えば、前世に会った飛び出す絵本どころか、ホログラム映像を出す漫画みたいなものももしかして……!?
「兄さまー」
「な、なんだい?」
「見て見てー」
最近ますますかわいい我が家の天使は、あれこれ考えるぼくの前にぱたぱたと躍り出ると、手にしていた紙をばっと広げた。そこには、いかにも子供らしい味のある文字が並んでいる。
きっと、自分の書いた文字も、ちゃんとにじんんでないということを主張したいんだな。うん。
「……うん、たくさん書いたね。文字のにじみはやっぱりないし、大成功だよ」
「だよね、だよね!」
意図がぼくに伝わったことが嬉しいのか、ティーアはきゃいきゃいと笑う。
うーん、子供って無邪気だなあ。まぶしすぎる。こんな時期がぼくにも……かつては……。
いやいや、そんな前世の遠い昔のことを考え立ったしょうがないや。今のこと、今のこと。
「シェルシェ先輩、これからのことなんですけど……」
「ん。紙は一旦切り上げるんだったよね?」
「はい。次は筆記具を作ります」
ぼくのその言葉に反応したのは、トルク先輩だ。
「筆記具? ペンがあるじゃんか」
「いえ、書いたらおしまいのペンじゃダメなんです。ぼくが求めてるのは、書いたら消せる、そういうものです」
「ええぇー?」
トルク先輩、めっちゃ信じてない。すごい顔で見られてるなあ。
「そんな魔法みたいなこと、できるわけないじゃん。なーシェルシェ」
「……どうでしょうね? もしかして、意外と簡単にできるかもしれないですよ?」
トルク先輩に反論したシェルシェ先輩は、それからぼくにウィンクをする。
わかってるよ、とか、大丈夫だよね、とか、そんな感じの意図を感じた。……この人は、自分が今は男だってことを忘れてるんじゃないかな。
「材料が手に入れば、結構早くなんとかなると思うんですけど」
「ホントかよー?」
「ふふ、ボクはいつでも手伝うからね」
「はい、頼りにしてます。後で打ち合わせしましょう」
こくりと頷くシェルシェ先輩に頷き返して、ぼくたちは意味深な笑みを浮かべた。
「兄さま!」
そこに、またしてもティーアから声がかかる。
そちらに顔を向けてみれば、彼女は頬を膨らませて腰に手を当てていた。これはあれかな。ご機嫌斜めなのかな。
「よくわかんないけど、わたし手伝うからね!」
「……うん、もちろんだよ。ぼくはティーアみたいにうまくマナ扱えないしね、頼りにしてるよ?」
「えへへ、任せて!」
ティーアは、どうもぼくに頼れられるというのが嬉しいらしい。
……っていうか、むしろ常にぼくに構っててもらいたいような、そんな節がある。
今までの研究の最中でも、一番頭が回るシェルシェ先輩との会話がどうしても増えるので、そういう頭脳労働中のティーアはわりかしむくれてたしなあ。自分がその手の分野では、ぼくを手伝えないことは幼いながらもわかっているのか、一応大人しくはあったんだけど。
ある種の独占欲みたいなものが、彼女にはかなり多くあるのかもしれない。
……かわいいやつめ!
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さてその日の夜。ろうそくの明かりを間に挟んで、ぼくはシェルシェ先輩と話し合っていた。
ろくに明かりがないので、これが精いっぱい。おかげで、なんだか怪談でもしてるような気分だ。
「次の筆記具ですが、鉛筆といいまして」
「鉛筆」
「はい。これがないと、ぼくのしたいことは始まらないんです」
鉛筆。ここからすべてが始まると言ってもいいと、ぼくは思っている。
書いても消すことができる。前世地球では当たり前にあふれていた道具だけど、これがどれほど画期的なことか。
絵とは、試行錯誤の繰り返しだ。
もちろん、そんなことをせず、いきなり完成形を描き出せればそれに越したことはない。でもそれは、天才でも難しいとてつもない技だ。凡人は、たくさん引いた線の中から、最適解を見つけ出すことでしか答えにはたどり着けない。
そしてそれをするためには、ペンとインクでは不可能だ。後に退けない緊張感は、確かに集中力を増す。
けれど、それはたとえて言うなら、レベル99の強くてニューゲームで縛りプレイをするようなものだ。素人ができることじゃない。縛りプレイとは、実力者がやることなのだ。
「うーん……トルクさんにはああ言ったけど、正直ボクもまだ半信半疑なんだよね。大丈夫?」
「はい、大丈夫です。前世では普通に使ってました」
「……君は画家を目指すより、発明家を名乗ったほうがよさそうだなあ」
苦笑しながら、先輩はそのお餅みたいなほっぺをかいた。
「あの時自分で独占せず、作り方を広めておけばよかったなあって、今は思います」
「あはは、そうだね。でもまさか転生するなんて思ってる人なんていないだろうからね、そこは仕方ないよ」
まあ、嘘なんですけど。
先輩、ごめんなさい。でも、前世のことはなるべく外に出したくないんですよ。
「それで? どうやって作るのかな?」
「はい、黒鉛を使います。それから粘土と……あとは木だけど、あれは最悪なくても別のもので代用できるか……」
「こくえん……?」
「あ、はい、えっと、ちょっと待ってください」
どうやら先輩、ピンと来てないみたいなので、現物を見せることにする。
ぼくは自分が使ってる机の引き出しから、初期型の紙で包んだものを取り出して、先輩に手渡す。
「これです」
「これ……! ブレイジアの軟黒曜じゃない!」
「はい、そう呼ばれてるみたいですね」
驚く先輩に、ぼくは静かに頷いた。
ブレイジア。大陸北部を版図に持つ国で、中央のセントラル帝国とは不倶戴天の敵国同士……らしい。正式名称としてはブレイジア王国。ただし、世間的にはもっぱら闇の国ブレイジアと呼ばれている。
どうしてかというと、彼の国の首長が魔王だから、といえばおわかりいただけるかと思う。国民の大半はモンスターの血を引く人種で、一見するとまさにモンスターの王国だから……というのがその理由らしい。
とはいえ、見た目だけの問題で内面は人間と大差ないみたい。地図の上ではシエル王国とはお隣さんだし、普通に交易や人の行き来も盛んにおこなわれている。
……というのが、学校で習ったブレイジアの概要。
「これ、……まさかとは思うけど、宝石を筆記具に使うつもりなの?」
「そのまさかですよ?」
「……うひゃあ、トルクさんが聞いたら驚いてひっくりかえっちゃうかもなあ」
いやー、確かに黒鉛はダイアモンドとほぼ同じ成分だから、宝石って言えば宝石かもしれないけどね……。光が当たればきれいに反射もするし……。
でも、正体がわかってる身としては、どうもこれを宝石と呼ぶのは抵抗があるよね。
「確かブレイジアは黒が一番高貴な色とされていて、黒曜石が最高の宝石なんでしたっけね。でも、それは貴重だから代わりにこれが珍重されてるってとう、……商人の人が」
「そうそう。モノ自体は珍しいものじゃないけど……黒曜石の代替品扱いだから、付加価値がかなり上乗せされてるんだ」
「あ、はい、目玉が飛び出るかと思いました」
もちろんだけど、ぼくがこれを入手したわけじゃない。1年ほど前に、紙の次は鉛筆と見越した藤子ちゃんがあらかじめ買っておいてくれたものだ。
いわゆるフリーマーケット的なところで27キロほど購入したと言っていたけど、その時の支払いは蒼金貨4枚だったという。山と谷を越えた運賃と労務費が乗っかってるとはいえ、モノ売るってレベルじゃない。ふっかけすぎだ。鉛筆なんて、1本数十円だってのに!
「……てわけで、できれば輸入に頼らずにやっていきたいんですよ」
値段と入手の経緯を、藤子ちゃんのことをぼかしながら説明して、ぼくは本題に入る。
「今手元にある分だけでも相当量が作れるとは思いますけど……やっぱり安定して供給したくて」
「なるほど……ってことは、次は鉱脈探し、かな?」
「ご名答です、先輩。何か心当たりないですかね?」
聞きながらだけど、我ながら相当な無茶ぶりだ。そんな鉱脈が見つかっていたら、とっくにブレイジア向けの輸出用として採掘が進められてるはずだもんね。
「うーんそうは言ってもなあ……」
「……ですよねー」
「ダンジョンなら……金とかの希少金属をドロップするモンスターもいるけど。軟黒曜は……見たことないなあ」
「……ダンジョンってなんなんですかね……」
「それは未だに謎だね……」
なんでも、ダンジョンに出てくるモンスターを倒すとアイテムになるらしいですよ。しかも、モンスターは成長しないし血も出ないしと、とにかくわけがわからない存在らしい。謎すぎる。
いや、いかにもゲームみたいな感じがして、個人的にはちょっとワクワクするけどね。だからこそ、冒険者がギルドまで組織して、各地のダンジョンに日々挑んでるんだろうし。
「他力本願かもしれないけど、お父さんに頼んでみるっていうのは? 確か、偉い人なんだよね?」
「あ、はい……詳しいことは聞いてないですけど、たぶん。そっか……そう言う手もあるか」
立ってるものは親でも使え、とは日本のことわざだ。せっかくだし、頼み込んでみようかな。
「せっかく紙も完成したんだし、報告がてら手紙を出す、っていうのはどう? きっと驚くんじゃない?」
「あはは、確かに。いいサプライズになりそうですね。よーし、じゃあそれで行ってみます!」
ぼくの答えに、先輩はにこりと笑って頷いた。
やっぱり、1人で考えるより2人で考えたほうが案はまとまるね。願わくばもう数人くらい、ぼくに賛同してくれる、信頼できる仲間が欲しいところだけど、贅沢は言ってられない。まだまだ実績もない子供だし、ね。
「まあでも、今日はそろそろお開きにしようよ。今のままじゃ、手紙なんて書けないでしょ?」
「……そうですね」
うん。ろうそくだけでそんなことしてたら、目悪くなっちゃうね。それに万が一のことを考えると……。
……よし。とりあえず文面だけ考えるとして、今日はもう寝ることにしますか。
待ってろよ鉛筆……必ずお前に巡り合って見せる――!
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
今回からセフィ編に戻りまして、平常運転となります。殺伐とした雰囲気はゼロでお送りするつもりです。
というわけで、次の獲物は鉛筆です。絵描きにとってはめっちゃ大事ですね。
シャーペンを作るところまでは……さすがに行けないかな。




