第13話 工房を借りよう
教室には静けさが満ちている。机に向かうぼくたち生徒は誰もしゃべることなく、目の前に広げられた羊皮紙に向かい合っている。
そこに書かれているのは、いくつかの数字。それが一定の規則で並んでいる。たまに聞こえるのは、ペンが動く音くらい。
つい、とぼくは顔を上げる。視線の先には、黒板。いくつかの問題が書かれた黒板だ。
そう……ぼくたちは今、学生の戦場――テストの真っ最中である。
ただ、この世界は紙が貴重品だ。羊皮紙ですらろくに手に入らない国だから、生徒全員に問題用紙と解答用紙を配るなんて、王様でもそうそうできない贅沢なわけで。
だからぼくたちには、もっぱら解答用紙として白紙の羊皮紙だけが与えられ、問題は黒板に板書されている、というわけ。
もちろん、たった十数人とはいえ生徒全員に羊皮紙を用意するということは、相当のお金がかかる。これはひとえに、ぼくたちが将来を嘱望される特別学級に属しているからに他ならない。
さて、そのテスト。今行われているのは要するに、算数だ。数学じゃない、算数だ。
なので、ぶっちゃけぼくにとっては苦労する要素がまるでない。出てくるのは四則計算、それも足し算と引き算だけなのだから、はっきり言ってヌルゲーにもほどがある。
というわけで、早々と問題を解き終えたぼくは、最後の見直しすら終わり、時間を持て余している。前世なら、問題用紙に落書きでもするところなんだけどね……。
壁に掛けられた時計を見る。時計。時計だ。時間の流れを計測する道具。
え? 紙はないくせに時計はあるのかって?
うん、時計、あるよ。さすがに個人の家にはないけどね。他と比べてとりわけ裕福に見えた我が家にも、時計はなかった。相当の貴重品ということは間違いないだろうね。
ただ、地球でも機械式時計は少なくとも11世紀の文献に出てくるくらい、実は結構早い時期から存在するので、この世界で時計が存在していても不思議じゃない。
それより問題なのは、この世界の時計の時間数だ。
地球の皆さんは、1日は何時間かと問われれば、間違いなく24時間と即答されると思う。うち午前は12時間、午後は12時間とも答えるだろうし、時計の構造はといえば、1から12の文字が刻まれていると答えるだろう。それは、コーラを飲んだらゲップが出るくらい確実だと思う。
けれどこの世界の時計、なんと文字盤が15まである。午前と午後という考え方は共通しているみたいなので、単純にこの世界の1日は、30時間という計算になる。
そして体感ではあるけれど、この世界の1秒の感覚は地球のそれとほとんど変わらなかった。さらに1時間は60分、1分は60秒という60進法が使われているので……この世界の1日と地球の1日は、本当に見た目通り6時間もズレがあることになる。
……テクマ○マヤコ○テクマ○マヤコ○、1日が30時間になあれ。とは、長期休載で有名な某漫画家先生の名言だけど、まさか異世界に来てそれを体感することになるとはね。
これは思わぬラッキーだ。単に作業時間が増えるということもあるけど、無意識に無理をしない体制ができあがっているのだから。
ぼくは生前、無理がたたって死んだ。偉大な漫画家先生たちも、若いころ無理をしていたエピソードを持つ人ほど、早死にしている。特に手塚治虫先生なんて、全盛期は月に数日程度しか眠らなかった、なんて話があるくらいだ。
つまりほぼ1日中漫画を描き続けていたわけだけど、それは結局は24時間なのだ。この世界では、彼と同じ生活をしてもなお、6時間は余る。その分を睡眠に充てれば、さほど無理にはならないだろう。
もちろん、手塚治虫先生は極端すぎる例だから、普通に生活したら、一日12時間の睡眠は普通にできると思う。これが、無意識に無理をしない体制だ。これで文明が伴っていればいい世界なんだけどね……。
文明といえば、だ。今日は楽しみにしていることがあるんだよね。
半月ほど前、当初の半年という予定よりも3か月以上早く、藤子ちゃんからお金が送られてきた。たった2か月とちょっとで、白金貨6枚分なんていう大金を用意できたと連絡がきたものだから、その時は真剣にびっくりしたものだ。当時、ちょうど授業でお金の単位についてやっていたから余計かな。
……この世界には円やドルのような通貨単位がないので、白金貨6枚というお金が具体的にどれくらいかとなると上手く表現できないんだけど……。
使われているお金の種類は日本円と同じで、8種類。
銅貨10枚が大銅貨1枚、大銅貨10枚が銀貨1枚、銀貨10枚が大銀貨1枚、大銀貨10枚が金貨1枚、金貨10枚が大金貨1枚、大金貨10枚が蒼金貨1枚、蒼金貨10枚が白金貨1枚で取引されているという。
なので、ぼくの感覚では白金貨は1万円なんだけど……一般的な借家の家賃が金貨5枚程度らしいので、無理に日本円にするとしたら、白金貨は1000万円くらいだろうか。この辺りはどうもはっきりしない。
使う側としても、正直数えづらいしわかりづらいので、いっそ国内でだけでも独自に貨幣単位を導入できないだろうかと考えてる。ああうん、もちろんその時は父さんに頼ることになるけどね。
話がずれた。どうもあっちこっちに話を飛ばす癖があるな、ぼくは。
ともあれぼくは今、白金貨6枚分という法外な大金を持っている。盗難が怖いので藤子ちゃんに預けたまま……って言うより、このままだと不便だってことで、黒猫マークの転送機能は、シャネ○マークのアイテムボックスに取って代わってる。短い命だったよ、ヤマト……。
この機能、まさにアイテムボックスで、中身はぼくと藤子ちゃんで共有している。ぼくが入れたものを藤子ちゃんが取り出せるし、逆もしかり。
藤子ちゃんは、各所で手に入れた道具の数々もこの中に入れるし、ぼくはその中から開発に使えそうなものを探せる。
お互いに、利益を得られるってわけだ。充実のリスト機能つき。
財布もこれを介して共有になったので、名目上は半々が取り分。
ただ実際のところは、二人がそれぞれ必要な時に必要がだけ取り出して使う、使わない時はとにかくここに貯める協定って感じかな。
そして……彼女が集めてくれたお金や資材を使って、ぼくは遂に先日、学園町(どう見ても城下町だけど、学園町で通す)で見つけた道具屋さんに、紙づくりに必要な道具の作成を頼みこむことに成功。その完成予定が、今日なのだ。
問題は、その道具の出来具合がどれくらいか、ってところだ。木槌は最悪どうとでもなるし、水槽も不具合が出てもなんとか対処はできるだろう。ただ、簀や、追加で注文したものに関してはぼくではどうしようもなさそうなんだよね。
その辺りの確認もあるので、今日は学校が終わったら最速で下校するのだ。
ふふふ……楽しみだな……。
と思って時計を見ると、まだ実に30分も残っていることに気づいてげんなりする。
こういう退屈な時間ってホントに長く感じるよね……。
ちなみに、全く関係ないけど、時計を見た時に針が止まって見える現象のことを、クロノスタシスって言うんだぜ……。全く関係ないけど……。
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廊下から、ベルの音が聞こえてきた。当然だけど正確な時間制御に即したチャイムなんてないので、あれは用務員さんがベルを鳴らしながら廊下を歩いている。
これの意味するところはただ一つ。授業終わりだ!!
解答用紙が順に回収され、先生から毒にも薬にもならないお話が少しあった後、解散となる。話なんて聞く気ゼロなので、ぼくはその段階で下校準備を進める。
そして解放された瞬間、待っていましたとばかりに教室から飛び出した。
クラスメイト達のなんだあいつって感じの視線を感じたけど、そんなことはどうでもいい。ぼくにはやらなければならないことがあるのだ!
「にいさまー!」
「おーうティーアー!」
途中でティーアが追いつき、走りを緩めてハグをする。
「今日は道具屋さんにいくのよね? ティーアもいくー!」
「はははこやつめ。よーしわかった、ぼくについてきなさい」
「はーい!」
相変わらず従順なティーアは走りながら手を上げて、そのまま速度を戻したぼくのペースに簡単について来る。
学校が始まってからおよそ2か月半。当初こそ人見知りする性格があってクラスになじめるか心配だったけど、何せティーアはかわいい。天使だ。周りが放っておかなかった。おかげで、ティーアも同年代の友達ができ、なんだかんだで楽しそうな日々を送っている。
それは兄として喜ぶべきことだとは思うんだけど、ちょっぴり寂しさを覚えるのはいけないことだろーか? ぼくは今から、彼女の未来の旦那を殴り飛ばすために身体を鍛える必要性を感じている……。
「セフィ君」
「ティーアっ」
「げっ、先輩!」
校舎出口を目前にして、ぼくたちは立ちはだかった2人に道をふさがれた。
片方は、銀髪に鳶色の瞳の美少年、シェルシェ先輩。ぼくのルームメイトだ。あまり他人の気がしないのは、彼が小人族だからだろうか。
もう片方は、黒髪に青い瞳の褐色美少女、トルク先輩。ティーアのルームメイトだ。今日も、トレードマークの青いバンダナが映える。
「今日はどこに行くのかな、セフィ君?」
シェルシェ先輩が、小首を傾げながら問うてくる。うっすらと浮かべた笑みが、考えを見透かされているような気にさせる。
「今日は外には出ないですよっ」
「出ないもんっ」
「今日『は』……ね」
ぼくたちの返事に肩をすくめ、シェルシェ先輩は苦笑した。
そしてそれから、ちらっとトルク先輩のほうを見てから……。
「どちらにしても、ボクたちもついてくけどね」
「うぐう……」
「拒否権なんてあると思うなよぉー
」
うなるぼくに、トルク先輩がくくくっと笑いながら、肩を組んでくる。
彼女は3歳年上。子供の3歳差は大きくて、この状態になったらぼくに抵抗することはできない。首根っこをつかまれた猫みたいなものだ。どうしようもないので、恨みがましく先輩たちを見やるだけ。
ぼくは入学当初から、頻繁に学園町を出て周囲の平原や野山を駆け回っている。もちろん、遊ぶためじゃない。見たことのないものばかりのを確認して、片っ端から情報を得るためだ。当然対象は動植物の別はないし、なんならその辺に転がってる石だって調べる。
……ただま、自分でもわかっちゃいるけど、そんなことをしてたら危ないに決まってる。日本で「公園で遊んでくるね!」と言うのとはわけが違うんだから。なんなら、野盗なんかが出る可能性だってある。
そんなわけで、シェルシェ先輩たちはぼくたちから目を離さないように、いつもぼくたちにくっついてくるのだった。要するに、監視だ。
いやー、うん、わかってるけどね。どう転んでも先輩たちのほうが正しいってことは。
「で? 今日のセフィはどこに行くつもりだったんだ? んー?」
「……街の道具屋です。頼んでたものが今日仕上がる予定になってるので」
「何してんだい、お前……金はどうすんのさ?」
「そこは大丈夫です、ちゃんとあります」
ぼくの即答に、トルク先輩は思わず、といった感じで目を丸くした。
けれどすぐににやっと笑うと、くしゃくしゃっとぼくの頭を少し乱雑になでる。
「準備のいいやつだなー、お前は! シェルシェみたいだ!」
「それ、褒めてるんです?」
「さー? どうだろな?」
トルク先輩は何が面白いのか、けらけらと笑ってる。隣ではシェルシェ先輩がしきりに苦笑していて、逆側ではティーアが必死にトルク先輩を引きはがそうとしている。
……数分後には諦めて、ティーアとトルク先輩によるぼくのサンドイッチができるんだろうな。
「話は決まったし、そろそろ行こうか。往来の邪魔になるよ」
「「「はーい」」」
もみくちゃにされ始めたぼくを見かねて、シェルシェ先輩が助け舟を出してきた。それに全員で気のない返事を返して、ぼくたちは歩き始める。
……トルク先輩が離してくれない。おかげでティーアもそのままだ。サンドイッチは継続なのか……。
「セフィ君は、どんな道具を注文してたの?」
歩きながら、シェルシェ先輩が聞いてきた。
「木槌と水槽と簀と……あと、釜と作業台と灰、それと撹拌機です」
「はあ……?」
質問したシェルシェ先輩ではなく、トルク先輩が素っ頓狂な声を上げた。
とはいえシェルシェ先輩も首を傾げているので、心境は似たようなものかな? ティーアだけがなぜか得意げだ。君も何するかまでは知らないでしょうよ……。
「……それで何をするつもりなの?」
「秘密です」
別にいじわるのつもりはない。企業秘密って言葉があるように、技術というのは基本的に赤の他人に知らせていいものじゃない。それによってこうむる不利益が、かなりのものだからだ。
まして、ぼくが作ろうとしている紙は、まだこの世界には存在しない。不用意に言いふらしたら、まずいことになるのは目に見えてるのさ。
「……シェルシェえ、天才のお前でもわかんないのかよ?」
「うーん……残念ながら、まったく見当がつかないですね……」
少しくせ毛気味な頭をかきながら、シェルシェ先輩は眉根を下げる。
天才。その言葉がこれほど似合う人は、なかなかいないだろう。
シェルシェ先輩は、ぼくの2つ上。つまり7歳だ。けれど、これまでの会話を見てわかる通り、彼は常に物腰穏やかで、丁寧な言葉遣いを崩さない。
そして彼の成績は常に1位。勉学だけでなく、剣や魔法でも1位というザ・パーフェクトな人なのだ。
実家は元町の宿屋らしいけれど、その才覚で経営を立て直した上に黒字までブイ字回復させているあたり、単に勉強ができるだけって人でもない。これで驕ることもなく、日々努力も欠かさないんだから、非の打ちどころがない。
なので、ぼくとしては彼に対して紙のことを黙秘し続けるつもりはない。こういう有能な人は、早いうちに仲間に引き込んでおくに限る……ということで、紙を作る段階まで持ち込んだらこちらから呼ぶつもりだった。
「ちゃんと後で説明しますよ。それまで楽しみにしていてください」
ぼくは先輩たちにそう言うと、人差し指を唇に当てて笑った。
「……じゃあ、そうさせてもらおうかな」
ここで無理強いしない辺り、本当にできた人だ。
「んだよー、教えてくれたっていいじゃんかよー。なー、セフィぃー」
トルク先輩なんて、この調子だもんね。これで頬ずりしてくるんだから、ティーアの機嫌がマッハで急降下ですよ。
彼女に対しては、愛想笑いを浮かべるしかない。こういう時は、スルースキルを全開にするに限る。
結局その後、道具屋にたどり着くまでぼくはトルク先輩に迫られ続けた。彼女がもうちょっと歳を重ねていたら危なかったかもしれない。お互い子供でよかった。
そんなことをしている間に、目的地にたどり着く。位置的には三の丸くらいの街の一角、「道具一式承ります」という看板を掲げたお店にぼくたちは入った。
「おー、来たな坊主。できてるぞ」
「ありがとうございます。早速確認させていただいてもよろしいですか?」
「ああ。っつっても、設計図までもらったからなあ、大丈夫だと思うが」
「念のためです、ごめんなさいね」
大将とそんなやりとりを交わしつつ、ぼくは前に引っ張り出された注文の品々を手に取って吟味する。
……ふりをしつつ、星璽を起動してスキャンだ。コンフィグで他人に見えないようにしてるから、ばれることはない。姿勢とかでばれるかもしれないけど、逆に気を付けるのはそれくらいだ。
木槌、水槽、簀は前々から言及してたね。簀については、木枠もセットで作ってもらった。これが重要になる。
それから、原料を準備する段階で必要になる釜に、木槌の相方になる作業台、さらにパルプを撹拌するための馬鍬。
最後に、灰。……別に間違いじゃないんだけど、言い方が悪かったね。漂白剤、と言いなおそう。説明はまた後で。
最後の3つは藤子ちゃんに指摘してもらって気づいたもので、これも紙作りではとても重要だ。失念していたので、彼女には本当に感謝。
これらをスキャンした結果、問題なし。道具のほうはどれも指定通り、水に強い木材を使って作られていて、水が抜けるようなミスはどこにもなかった。
「おっけーですね。いい仕事していただきありがとうございます」
「ははは、いいってことよ。で、値段だがな……」
「大丈夫です、ちゃんとありますよ」
大丈夫かと聞かれる前に、ぼくは頷きながら懐から財布を取り出す……ふりをして、アイテムボックスから蒼金貨を1枚取り出す。
「ちょっと大きくて申し訳ないんですが……」
「おおう。まさか5歳児からこんなもんを預かるとはな……」
大将は目を丸くしながらもそれを受け取り、表裏を二度ほど見てから奥に引っ込んだ。
そして戻ってきた彼が手にしていたのは、金貨が7枚。つまり道具の値段は、大金貨99枚と金貨3枚分だったってわけだ。やっぱり値段の感覚がよくわからん。
それを見た先輩二人組が、目の色を変えたのがちらっと見えたけど、それについては後だ。
「おら、釣りだ」
「はい、確かに。ありがとうございます」
「これが俺の仕事だからな」
「で、その……申し訳ないんですが」
「おう、移動と設置な。任せろ」
言いながら水槽と釜をひょいと持ち上げて、大将は店の端の方へと移動する。そこには、水回りの設備が整えられた一角。そこに、水槽が設置された。少し離して、釜。
どうかな諸君、小さいながらも立派な紙工房になったとは思わないかね。ま、さしずめレベル1ってとこだけどね。
紙を開発するにあたって、やっぱりある程度のスペースが必要になるけど、まさかこういう設備を寮に持ち込むわけにはいかない。
ぼくがこの店を選んだ基準は、値段や仕事の出来不出来よりも、ぼくのやることにあまり抵抗を見せず、店内を改装したうえで間借りさせてくれることを最優先にした。
まずは何よりも、紙を作ることが大事だと思うからね。
「これでいいだろ。何するかわからんが、ま、上手くいったら一枚かませろよ、坊主」
「あはは、もちろんです。今回の取引の、何倍にもしてみせましょう」
「言うな? 期待しないで待ってるぞ」
そうして大将は、店の低位置へと戻っていった。
それを見計らって、全員がほぼ同時に口を開く。
「おいセフィ、この買い物で蒼金って、いくらなんでもボられてっぞ?」
「随分な大金だけど、どこから調達したの?」
「にいさま、これなあに?」
うん、予想通り。なので、ぼくは用意していた答えをキメ顔で言うのである。
「値段にはここに水回りの設備を整えてもらう分と、それから店内のスペースを間借りするための場所代も含まれてるんですよ。むしろまけてもらったほうです」
「お、おお……そーいうことか……」
「お金は……実はパトロンがいまして。投資していただきました」
「投資って……どんな人か知らないけど、よくやるねその人も……」
「道具については、これから説明しまーす。えーとでも、その前にセンカ草を集めないといけないので、皆さん手伝っていただけますか?」
「はあ?」
「うん?」
ぼくの答えに、2人が首を傾げる。ティーアだけは疑問を感じていないのか、元気よく手を上げて「はーい!」と答えている。
まあうん、先輩方の言いたいことはわかるよ。センカ草って、要するにその辺にいくらでも生えてる上にドチャクソしぶとい雑草だから。
けれどこの雑草が、紙を作る上での超重要アイテムなのだ。それはもう、地球の製紙業界が目の色変えてほしがるくらいの。
ふふふ、待ってろよ、紙!
ぼくは先輩たちが驚く顔を想像しながら、にへらっと笑うのであった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
いよいよ、作業場と道具をそろえるところまでこぎつけました。
完成品の登場は次回にて。
※トルクの外見(髪と瞳の色)を、本日修正しました。あれ?と思われた方、ご了承くださいませ。




