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勧善懲悪

 僕は今とても焦っている、異常事態が発生したからだ。


 「おかしいだろ。あの女一人で罠を突破して、ラスボスのドラゴンまで数秒で殺しやがった。何とかして逃げないと。お前らあいつらを足止めしてこい、」

 

 僕は命令を発して、赤髪で新入りの女とレイを彼女に向かわせた。

 

 「いい気味だ、死ねばいいんだ。やっと天罰が下る。」

 「神様はいるのですね、やはり悪は滅びる。」

 ここぞとばかりに捨て台詞を吐いて消えていく女奴隷たちを、腹立たしく思いながら、僕は、どうするべきか悩んでいた。突破されるわけがないと思っていたから、脱出口なんか用意しなかった過去の自分を、殺してやりたい気分だった。

 「ここですか、最近調子に乗っているダンジョンマスターの部屋は。」

 微笑みながら、血でまみれた衣装で佇んでいる彼女は、今まで楽しんでいた女奴隷とは、比較できないぐらい美しくて、気品があった。スタイル抜群で、金髪の彼女は、イメージする貴族の令嬢そのものだった。そして彼女の後ろには首輪を叩き切られて、眼が爛々と輝いている女奴隷たちがいた。

 

 「ちっ、レイ、赤髪、俺を裏切るつもりか。」

 「裏切る、そもそも仲間じゃないだろうが。」

 「3年間あなたの奴隷でしたが、あなたは下手くそで童貞のまままったく進歩してませんでしたよ。」

 「二人とも言いたいことはあるでしょうが、あの屑に聞きたいことがあるので連れて帰ります。そのあとお二人の好きにしてください。」

 心底どうでもよさそうに、つぶやいた。

 「なぜ殺されないといけないんだ、僕はただ自分の身を守るためにダンジョンを作ったんだ。ダンジョンマスターは、冒険者に殺されるからしょうがないだろう。」

 そう返事する声は、自分でも震えているのがわかった。僕には戦闘能力は0だから、彼女が軽く僕を殴ればそれだけで僕が死ぬことが容易に想像できた。

 「知りませんよ、そんな事情、そもそも生きるためだけなら、女奴隷はいらないでしょう、楽しんでたんでしょう。あなたもダンジョンマスターを。都合の悪い時だけやりたくなかった。そんなこと通用しませんよ。」

 「君にわかるわけないよ僕の気持ちなんか、そしてわかってもらいたくもないね。」

 「そうですか、それは残念ですね。」

 まったく残念そうじゃない顔で、返事をした彼女は呪文を唱え始めた。それから少したって僕の周りに白い霧が発生した。そこから僕は意識を失った。意識を失う前覚えていることは彼女の一言だった。「正義は勝つ。」その言葉にはどんな意味があったか知らないが、彼女のその一言が、僕のちっぽけなダンジョンマスターとしての役割を思い出させてくれた。所詮僕らはかませ犬だと。

 

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