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GM転生クソゲオンライン  作者: 地空乃いいちこ
アップフィールド
9/29

くっついて

「うあああ・・・ああ」


ゴンザはさっきからそれしか言わない。

新婚なのにとか、嫌われたらどうしようとか呟いているが、助けてくれる人がいるだけマシな方だ。

他の三人は下手したら餓死の危険すらある。いや、水分の不足の方が先に問題になるかもしれない。


「とにかく、ログアウトできないってのはゲーム内からはどうにも出来ないんだよね?」

「普通ありえない事だからね。ただヘッドギアを物理的に外せば目が覚めるから、危険では無いはずなんだけど」

「なんか、小説とか読んでるとゲームから出れない事件って頻繁に起きてるみたいに思えるんッスけどw」


コウシもみなみもチラッとは思ったが、あえて言わなかった事なのに、†イノウエ†は空気を読まない。

危機感が無いのか、†イノウエ†はいまだにヘラヘラしている。

肉体の不快感に反応して表示されるフィジカルアラームの他に、ヘッドギアの側面に付いている呼び出しアラームなんて物もあるのだが、これも「肉体側で誰かが呼んでますよ」というメッセージを表示する事しかできない。

ゲーム内にログインしている側から、「外側」に対してメッセージを送る方法は無い。

そんな必要など本来無いのだ。ログアウトすればいいだけだったのだから。


「なんかアラームがいくつもチカチカ出てきてウザイッス」

「尿意以外にも痛いとか空腹とかイロイロ原因があるんじゃないか?」

「あ~、窓開いてたかも。起きたら風邪引いてるかもしんないッスね」


ログアウトできないと言うのに、†イノウエ†はログアウトした後の心配をしている。やはり楽観的に考えているのだろうと思ったコウシは、みなみにそっと囁いて(wis)相談する。


「死んだプレイヤーキャラが復活して来ないのは、再ログインできないからですよね。死んだらログアウトできると思いますか?」

「・・・・・・お前、それ試して見る気、ある?」

「ですよね~」


それが一番の問題なのだ。

ログインできないで弾かれるだけなら良い。

だが、ログイン画面のままで固まったまま、正常なログアウトも出来ずにどっちつかずな状態に置かれたら、それこそ拷問だ。

そうコウシが話すと、みなみは驚いたように、別の事を考えていたと告げる。


「死んだらほんとに死んでしまうんじゃ無いかって、ちょっと思ってた」

「それはいくらなんでも無いでしょう」

「・・・・・・そうだよな」


ヘッドギアには大出力のマイクロ波を出す装置も無いし、死の恐怖による暗示で死ぬ可能性も低い。

肉体が死ぬとしたら、ログインし続けた事による餓死や凍死くらいだろう。

ゴンザの家族が戻って救出され、電話で連絡を入れて貰えれば死にはしない。


そのはずなのに、なぜか「死んでしまう」という言葉が耳からはなれないコウシだった。

絶対にありえないと言いきれるのに、もしかしたらという恐怖がぬぐえない。


「みなみさん、死なない様にしましょうね。防具とかも作って」

「・・・・・・ああ。ホントにな」


じわりと湧いた恐怖を抑えるために、死なない為の行動を何かしようと囁き合う。出来る事が無いとは言え、何もしないのもそれはそれで怖いのだ。


「武器とアクセサリーはレアアイテム多いけど、防具系ってあんまりなかったよね。まぁどうせアイテム番号覚えて無いけど」

「なんとか大きい街まで行けばある程度は買えるんじゃ無いでしょうか」


ログアウト出来ない以上、ブログ等からアイテム番号を調べてレア装備量産というずる(チート)は使えない。

別な方法で身を守る必要がある。


「それならまずレベル上げようよ。コウシさんGMアカハックしたばかりって事はレベル低いでしょ?俺のキャラはレベル18だけど初心者育成用に作ってるから、ある程度までは安全に引っ張れるよ」

「俺はレベル40なんでパーティは組めないッス。でも壁して上げられるんで、ギブ&テイクと行きましょう」

「うん、そうだね。レベル上げてヒットポイント上げたり、装備品のレベル制限クリアするのは大事かも。せっかくだからフレンドリスト登録とパーティもお願いしていいですか?」


こうして、正しい意味での廃人になっているゴンザを含めて、4人でパーティを組む事になった。


とりあえずの目的は「死なない事」

その為に出来る事を順番にやって行こうという事になった。

・レベルを上げる

・持ってるアイテムなら詳細ウインドウからアイテム番号見れるので、高く売れるアイテムを増やして資金を増やし、金で買える防具を揃える

・安全に手にいれられる範囲で装備を整える

・モンスターの進入しにくい大きな街に引き篭もる


「リアルでもゲームでも引き篭もりか。完璧だな」


なにが完璧なのだかわからないが、誇らしげに腰に手を当てて胸を張るみなみをスルーして、ゴンザにパーティを組む旨を伝える。


「ゴンザさん、†イノウエ†さんがパーティ作ってくれたから入って下さい。この街にいると危ないんで移動しますよ」

「あうあうあー」

「お漏らしなんて可愛いもんじゃないッスか。旦那さんも笑って許してくれますよ。俺なんて授業中にウンコ漏らしてから一ヶ月学校休んだけど、担任からみんな気にしてませんよって手紙貰ったし、セーフセーフ」


いや、ゴンザさんはともかくそれはアウトだろうとコウシは思ったが、それが不登校の発端なら悲しすぎるので振れないで置く。

すぐにコウシにもパーティ加入要請のウインドウが視界を塞ぐ様に現れる。


<パーティ名『†胃の上食堂†』からの要請が来ています。パーティにはいりますか?>


「あ、俺の名前は井上じゃなくて胃の上なんッスよ。料理スキル上げて食堂やりたいんで。食道だから胃の上、なんちゃって」


あまりの下らなさに、なんかもうイロイロ限界だと思ったコウシであった。

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