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すぐ続き書きますとか言っててもこんなもの

 イノの【グレネード】が扉に炸裂しつづけ、範囲ダメージが猫の王をチビチビと削る。

 ターゲットが移ると、せっかく扉と言う障害物にひっかけてあるのに抜けてしまうかもしれないので、他のメンバーは休み。この一例でもわかるように、このゲームのモンスターはロクなAIになっていない。近接型の場合は標的としたプレイヤーキャラに一直線に向かって行って攻撃をするだけの事が多いので、様々な地形で適切なハメ技を使う知識こそが最強のプレイヤースキルなのだ。ヘイト管理? そういうの、無い。


「しかし、俺らって防御力も高いし、エリクサーもいっぱいあるし。一撃死だけ気を付ければ無敵だな」


 イノの自爆ダメージをエリクサーを延々と投げて回復しながら、余裕の表情でフラグを立てるコウに、みなみが知識を披露する。


「いや、でもその一撃死させるスキルが多いんだよ。固定ボスが使うヤツだとこいつの【まるのみ】とかヤバい。あと範囲広いのだと【死神の鎌】とか。プレイヤースキルだと【首狩り】だな、あれは【斬り術】のスキルレベルで確率があがるから、持ってるやつも多いし耐性防具ないと手も足も出ないかも。【三年殺し】も背面の下段からのみっていう条件が厳しいけど喰らうとヤバい」

「【心臓を握り潰す】とか【真っ二つ】とか対抗策見つかって無いのに雑魚敵で使ってくるのもいたッスね」

「アレ、やばいよな」


 ヤバいしか言えなくなったみなみの蘊蓄を、自爆の炎で焼かれてはエリクサーでびしょぬれになるのを繰り返すという、意味不明の苦行に慣れつつあるイノが補完する。


「このゲームの製作側は一体何を考えて無駄に死亡率をあげてるんだよ」

「このゲームがFPS風のゲームだった事が関係ありそうッスよね」

「ああ、初期のレベルキャップは上限10だったからな。その頃のHPだと、一撃死スキル以外でもヘッドショットなら確殺だった」

「なんでFPSからRPGに方向転換したんだろ……」

「いや、その間にいろいろありましたよ。RPG色を強くする前に、ほのぼの系の村育成SLGっぽくなった時期があったはずです。わたしの旦那はその頃に始めたみたいだから確かです」


 ゴンザさんによる予想外のコメントが飛ぶ。


「種植えても他のプレイヤーが火刑とか言って火を放つから、作物が取れる前に炎上するやつな。作物を村長に収める量で村のレベルが上がったりしたらしいけど」

「だれも村の防衛なんか出来なかったんだろうな……」

「もちろん無理に決まってるだろ。川から用水路引いてくる所からやらないといけないんだぞ。その対策なのか、NPCの農夫が一杯配置されて、ステータスにいろいろフレーバーテキストが書かれるようになったのもこの頃だよ」

「外見データも以前は凄く少なかったんですけど、この時に増えて。マッチョが作成できるようになったんです」

「ねぇ、なんなのこのゲーム」

「そろそろ回復、頼む」

「NPCと恋愛が楽しめるとかいう変な要素もそのあと入った」

「知ってます! 男同士でも結婚できるし子供も作れるゲームって一時期話題でしたよ」

「戦争から育成経由して恋愛ゲーとか、探偵漫画がバトル漫画になるよりひでぇな」

「回復忘れないで!」

「そのうちパズルゲームになるんじゃないかとかギルドメンバーも戦々恐々としてた」


 大規模パッチが当たるたびに余計な要素がつけたされ、メンテの度にバグが増える恐るべきVRMMOの話題に盛り上がっていると、いつのまにか爆音が止んでいる事にコウは気付いた。

 振り向いて見てみると、部屋の中央に置いた扉に寄りかかって不機嫌そうな目で一同を見るイノと、その横で毛皮に座って枝毛を抜いているフェイの姿があった。


「あ、そういえばボスは?」

「倒したよ! 回復してくれないから自分でエリクサー飲みながらチビチビやってたら、フェイがトドメ刺しちゃった」

「お、おう。無事でよかったな」

「無事じゃねぇよ! 俺のねこニャン(ひろし)が死んだよ!」

「御愁傷様」

「ちゃんとブロックしておいてよ!」

「すまん」

「ごめんなさい」

「マジゴメン」


 会話に夢中になってボス戦の最中である事を忘れる。他のMMOなら非難どころでは済まない可能性もある行為だが、プレイヤーの質が低いのもこのゲームの特徴と言える。


「ドロップ品、何か出ました?」

「リンゴだけだった」

「湧き待ちする?」

「一回倒したし、たいしたレアもでないし要らないんじゃないッスか?」


 それでいいよね、とみなみに伺いを立てる。みなみとしても、デスゲーム物のお約束としてボスを狩ると言う名目で遊びたかっただけなので異論は無い。ここのボスは倒し方は確立されている。範囲魔法が無い場合でも弓を曲射したり、鞭やフレイルで扉越しに叩けばいいのだ。


「じゃ、腹ごしらえしたら次行きましょうか」

「他のボスですか?」

「いや、裏ボス」

「裏ボスって魔王とか言ってませんでした?」


 いきなり無茶なことを言い始めるみなみに非難の視線が集まるが、みなみは余裕の表情だ。


「大丈夫。裏ボスは見に行くだけ。戦闘にはならない」

「どういう事?」


 とりあえず、満腹値を回復させる為にニシンのパイなどを皆で食べる。

 テキスト欄の効果にはこんな事が書かれている。『マズイ。生臭いので割とみんな嫌い』


「美味しいモノだけじゃなくてマズイっていう表現でも味はするんですね」

「だね」

「マジで不味いッス」

「生焼けっぽいな、これ」


 製作陣の悪意は留まる所を知らない。


 マズイ物を食べたままと言うのも気分が悪いので、口直しに先ほどドロップしたリンゴを食べようとするが、なぜか食べる事が出来ない。


「ああ、満腹状態だとそれ以上食べられないんだよ……」

「女性キャラだと甘いモノだけは上限超えて食べられるらしいですよ。」

「意味わからん、口の中に生臭さが残ってるのに」


 リンゴはフェイが食べた。


 みなみに案内されて迷宮をさらに奥にススムと、嘘つきオヤジ像と正直オヤジ像がならんだ扉がある。

これはリドルと呼ばれる謎かけクエストで、合わせて二回だけ質問が出来る。どちらかに二回か、両方に一回ずつか。

 どちらが正直オヤジなのかは外見ではわからない。間違った扉を開けるとデストラップが発動する。正しい問いを考えなければならない、という謎かけだ。


 しかし、みなみさんの指示でゴンザさんの巨体が宙に舞う。その太い両腕に巨大なスレッジハンマーを握りしめて。


「そいやぁーー!」


どっちかは分からないが、右側の像を粉々にする。首を吹き飛ばした後、台座まで執拗に叩いて叩いて粉々にする。

そしておもむろにこう言うのだ。


「こうなりたいですか?」


 残った像は引き攣った顔面に大量の汗をかきながらゆっくり両手をバッテンにして『NO』を示す。


「よし。正直だな。ならば答えろ。開けたら俺達が死ぬのは右の扉か?」


 怯えた表情のまま両手の指先を頭の上で揃えて『YES』のサインを出す。


「左に行くのが正解っぽいです」

「エレガントな解決ッス」

「ひでぇ」

「時間があれば扉の横の壁を掘るんでもいいんッスよ」

「正しい答えとかよくわからん」


まぁ、これが楽な進み方と言うのならそれでいいけど。


 そしてさらにいくつかの扉を壊したりスルーしたりして最下層の魔王の封印されている扉を開放する。 中に入ると、干からびた死体が一つ。


 カーソルを合わせると、魔王の死体という文字がポップアップする。


「な、戦う事無かったろ」

「なんで死んでるんです?」

「モンスターじゃなくてNPC扱いらしいんだけどさ。閉じ込められたまま食べ物ないから。餓死するんだ」


 干物魔王をみて、俺らの身体も今頃こんなかなぁとかイノが言いだす。

この死に様はさすがにイヤだなぁ。真面目にログアウトする方法を考えようかな。


 死体から魔王のマントやエリクサーなどのレアドロップをはぎ取り、死体自身も解体して「魔王の干物」として回収する。マントは防御性能はそこそこだが高く売れる。エリクサーは貴重な回復アイテムだが……どっちも正直いらない。


「干物は何に使うの?」

「鍋物の材料になるんッスよ」


 本当に酷い設定のゲームだった。

 溜息をつこうとした時。視界の右上を占拠する邪魔なMAPに赤い点が現れた。


「敵対的なプレイヤーだ……」


後半ごっそり削って、下手に長くなる要素はすっ飛ばしてとりあえずちゃんと完結させる事を目指します。すいません平気で半年とか放置して。

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