サブタイのネタ元にと思ってた作品が無くなってたでゴザル
オーグルを倒してレベルが上がったので、さっそくというか今更だがスキルを覚える事にする。
職業神殿で神官に金を払い、スキルを覚える。
「【バズソー】はまずですね。【木こり】【斧習熟】【木材加工】【大工】を覚えると、【のこぎり習熟】が出てくるのでこれを覚えるのが第一の条件です。
第二の条件が【指回し】【ペン回し】を覚えると出てくる【回転斬り】。
この両方を覚えると【バズソー】出てくるんです。だから、この木こり系の方を採掘系にして似たようなのを覚えて欲しいんです」
「わかりました~」
みなみの指示に従って、ゴンザは一旦採掘士に転職すると、既に持っている【掘削】【鉱石採掘】に加えて【ハンマー習熟】【石工】を覚えて行く。ここまでで既に2万マネーほど掛かるので、本来なら金策に奔走する事になるのだが、今の財布は全然尽きないので気軽にクリックしていく。
「【つるはし習熟】がでました!」
「よし!それとって回転系行ってくれ!」
叫ぶゴンザ。拳を握りしめるみなみ。回転系スキルのツリーって何か変ッスよねと呟くイノ。少しイノに優しくしたくなったコウはそうだよねーと相槌を打って見たりもする。
「【回転斬り】も取って見たけどでないですねー」
「なんか足りないのか。怪しいトコ取って見てくれる?」
「【傘回転】【椅子回転】取っても、あ【ろくろ】ってのが出ました!あと【大道芸】も!」
「ろくろってアレか。陶芸家が粘土回してるやつ?」
「はい。取ったら【壺作成】【壺叩き割り】って出ました!」
「なんかドリルと違う方向言ってる!ちょっと一旦ストップ!」
みなみの期待通りにはすすまず、ゴンザがドンドン奇妙なキャラに育っていく。生産キャラとしては本望なのかもしれないが。
「コウさんもスキル取っちゃってイイッスよ。【ポーション投げ】は【投擲】から派生する投げ系二つ取るとでるんで」
「【投擲】は投げるアイテムの飛距離伸ばすスキルだよね?【石投げ】【ナイフ投げ】取ったら【ポーション投げ】の他に【投げやり】ってスキルが出たんだけど、これは槍投げとは別?」
「それは【手加減】の前提になるスキルっすね。使った次のスキルの効果が弱くなる技能で。まぁ初心者育成くらいにしか使い道のないスキルっす。」
コウもイノに話を聞きながらスキルをどんどん取って行く。
とりあえずエリクサーさえ投げておけば、肉壁魔法士のイノがタゲを取り続けてくれる。
このゲームの戦闘では、通常攻撃やスキルによる攻撃は仲間どころか自分にも命中する。なので範囲魔法は仲間を巻きこまない様に使うのが普通なのだが、自分自身を中心としてノックバック効果を持つ範囲魔法を使うという戦法は、囮としてはかなり優秀だ。遠距離からの回復がなければ自殺行為なだけで。
PKの方法として有名な技の中に、詠唱中の魔法士の前に割って入りわざと攻撃を受けて『攻撃を受けた』というフラグを立ててから、『PKへの反撃』を行うと言う『カウンターPK』という方法が頻繁に行われている。その為範囲攻撃のスキルをメイン戦力に据えるのは忌避されており、あえてその茨の道を行き、40レベルまで上げているイノはプレイヤースキルもかなり熟練しているはず。エリクサーでの遠距離回復が成立すれば、的確に敵を集めてくれるだろう。
「【ポーション投げ】取ったよ。後衛から回復アイテム投げる以外に、攻撃用の【槍投げ】【斧投げ】も取っておいた方が良いかな?」
「投げた武器は無くなるんで、金掛かるからほとんど取る人居ないスキルっすね。ちなみにその二つ取ると【剣投げ】がでるッスよ」
「【剣投げ】?屠竜なら増やして投げまくれるんじゃないか?」
二人で思わず顔を見合わせる。
遠距離から500以上の攻撃力が飛んでくるというのは前代未聞だ。なにせ序盤で使う安物の武器は攻撃力20~30前後。NPC売りの鉄パイプやフライパンなどの高品質武器で100から180がせいぜいで、鍛冶系の高熟練度PCの造ったブロードソードなどの武器でも250が限界なのだ。サーバに一本しかないユニークウェポンはその倍の攻撃力を持っている。
「チートにも程があるッスよ!」
「武器無限!投げ放題!」
お金と武器に引き続き、残弾無制限という飛び道具を手に入れて小躍りする。
さらに二刀流スキルもったら両手で投げたりできないだろうかと、調子に乗って【剣習熟】から派生する【刀習熟】を取り、【器用度上昇】からの【両手利き】を取り【二刀流】を身につける。光司の本来のアカウントのキャラクターが二刀流使いなので、スキルの出し方はしっかり覚えている。
【二刀流】は武器を二本持てるようになるスキルだが、命中率が派手に落ちるので実用性の低い、カッコよさ重視の浪漫スキルの一種なのだった。
こう言う物ばかりに手を出すので光司のキャラクターはいつまでたっても弱いのだ。
「二刀流取って見たけど、両手で連射投げとかは無いみたいだね。あったら強いと思ったんだけど」
「そんなの取る位だったら【投げやり】とか取って投げ系フルコンプを試すべきっすよ。数多くてあまり試してる人居ないんッスから、何が出てくるか未知の領域ッス」
もっともだと思ったコウはそのまま【投げやり】を取得。最後に残った武器投げ系の【ハンマー投げ】を取り、そこから派生した【砲丸投げ】【円盤投げ】【パイ投げ】も取る。何のためにあるスキルなのだか全然わからない。名前を見ただけで死にスキルだとわかる。が、あえて取る。
「転職したらGMに戻れるかわからないから、転職しないと覚えられない製造系からの派生とか魔法スキルも取れないけど、結構いけるもんだね。投げ系なら全部取れそうだよ。パイ投げって料理スキル持ってなくても使えるんだね…」
「マジ取ったんッスか?ネタまっしぐらじゃないッスかwww」
スキル取得の指導をしてる時くらいは真面目にして欲しいとおもったが、手遅れなのでこのまま好き進む。
「オリンピック種目みたいな投げ系全部覚えたら【背負い投げ】が出た…」
「それ、【格闘】【掴み】で出る初級の格闘系スキルっすよ。それに【パイ投げ】なんか【料理】と【投擲】で出てくる料理系の戦闘スキルで、全然使えない事で有名w。相手を一時的に盲目にする効果だけどパイ作る材料が店で売って無いという意味不明なスキルw」
「投げならもうなんでもいいのか、この系統は」
腹を抱えて笑うイノに石をぶつけてみる。ダメージは固定値で10。
「効かないッスw【石投げ】全然効いてないッスよw もしかして【投げやり】も使って投げてるんッスか?」
まだ笑いの止まらないと言うか止める気の無いイノにどんどん石を投げる。フェイが気を利かせてレンガとか拾ってきてくれるので【砲丸投げ】スタイルでイノに連射する。【器用度上昇】の効果のおかげもあり、顔面に命中。ノックバックとスタン効果を発揮する。
「今のはマジで痛かった。パーティ組んでなかったらPK扱いになってガード飛んでくるレベルでダメージ受けましたよ……」
「ごめんね」
ようやく期待通りに真面目に話すイノだったが、さすがにレンガはやりすぎたと反省する。
だが、改めてレンガを拾って見てみると<M00011 耐火レンガ 攻撃力25 火炎に耐性があり、打撃武器扱いで命中時に低確率でスタン効果>などと書いてある。
「イノ、レンガって初心者用ナイフより強いぞ……」
「序盤のキャラ育成で有利と言えば有利ッスけど、それやりたいッスか?」
「少しやってみたい」
レンガでゴブリンと戦う騎士や戦士を想像して、少し釈然としないものも感じるのだが、それはそれでかっこいいとも思う。だいたい、先祖から伝わる伝説の剣よりも鉄パイプの方が強い、そういうゲームでレンガなどきっとマシな方のはず。
「まぁ、せっかくだし、接近された時に使えるかも知れないから【背負い投げ】も取っちゃったらどうッスか?ネタ的にも」
「ネタは余計だが一応取っておくよ。MP消費でかいし人型にしか効かないし使用後の硬直も長いけど」
レンガの直撃で凹んだ顔とダメージを治す為にエリクサーを飲むイノ。ベコン!と音を立てて直るのを横目で見つつ、ほとんど義務感にも似たコンプリート欲に従って、【背負い投げ】を取得。
その瞬間、また新しい派生スキルが現れた。
「【さじを投げる】ってスキルがでました……」
イノがエリクサー吹いた。
フェイが華麗に回避したのでコウに直撃し、状態異常「濡れ」状態に。
二人のやりとりに、ドリル捜索の手を休めてコウのスキル取得の迷走ぶりを見ていたゴンザも苦笑している。みなみは一応メモをとってはいるが、顔は笑っている。
そんな三人に、コウは固まった表情でスキルの効果を読み上げた。
「【さじを投げる】宿屋やテントなどの安全な場所以外でも、スキルを使用した瞬間にその場でログアウトする」
全員が固まった。
「ねぇ、そもそもさ。なんでイノってそういう喋り方してんの?」
「誰が喋ってんのかわからなくじなるじゃないッスか」
「あ・・・そういう」
「実際、MMOでも便利ッスよ?」
「たまに居ますね。へんな語尾つけるプレイヤーさん。そっとしておきますけど」