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世界珠の地 「死女」  作者: 御厨つかさ


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1/7

死女  

なにか降りてきたのでおいておきます

美少女とねこと少年とディストピア

一話完結の小話が基本です



      死女




――――――滅ロビ、ヲ。―――





灰白にカワキ、覆われた世界。


罅ワレテ、カサツイタ、モノ、地ヲオオウ、…ハテシナキ。


ソノウエニ、ヒトリ。


白、シロ、ハイ、ノ、チル…。


灰白ノコドモ




灰白に乾き罅割れた地が延々と見晴るかす限り続く。

その乾いた地に、一人立つ姿。

僅かに俯き、視線は何を捉えるか。

無表情に整った容貌に、赤い瞳。

白い髪は額で切り揃えられ、首の辺りで切られて広がる。

少女は、極普通の服装をしていた。

膝丈のスカート、両肩に吊り紐、くつしたに運動靴。

白い半袖の襟付シャツ。前に留めるボタン。

 普通の暮らしをしてきたら、着るような服。多分。

 唯、少女は痩せていた。

 無言で大地に立つ姿。

 それだけだ。

他に生きているものの姿は無く。

唯一人、立ち尽くしている。

それだけだ。


ことばはない。


話す相手もいない。


白い少女は唯一人、乾いた灰白の大地に立ち尽くしている。






 滅ビヲ――無の大地





ハイイロ ト シロ ―――

ホロビ ノ イロ

ゼンブ ホロブ ダケ、―――


ナンニモ、ナクナル…


ム ノ ダイチ


ノコル ノハ ム












「おはよ――!みんなおきた?」

元気良くおはようのあいさつをするのは、マナだ。

滝原邸に響く明るい声に、今日も一日が始まる。

ぐーんと伸びをして、笑顔になって。

「いいよね。すてきだよね!一日がはじまるって!」

マナの言葉に、無言でうなずいているのは篠原だ。

その隣で、レイン・ジーンもまたうなずいている。

 滝原邸の無駄に広い庭に出て、青空を仰いで朝のお茶など飲んでいた二人なのだが。

ちなみに緋毛氈が敷かれたベンチに、背後に立つのは赤い唐傘だ。

お茶屋さんでお茶や団子などをいただくような装備である。

昔、大体850年程前に観光地という仕組みの中でこの屋敷が使われていた際に、

実際にお茶とお団子を観光客というジョブに対して提供していた当時のまま時空保存されている装備であるらしい。本来なら、博物館行きの代物がこうして時空保存でシールド保存状態になっているとはいえ、そのまま使える状態になっているというのが滝原邸の恐ろしい処である。

尤も、全然まったく、そんなこと使用しているかれらは頓着していないのだが。

 緋毛氈に座り、行儀良くお薄――抹茶というものを点てて飲むものの種類のひとつであるらしい――を手に、ジーンがにこやかにいう。

 赤い緋毛氈と傘に、ジーンの金髪が映えている。

「その通りだね。今朝は朝ごはん、何にするんだい?」

「うん、あのね?ベーコンにハムエッグと、ハムに目玉焼き!

それにね、トーストにバターだよ?すっごいでしょ!」

にこにこ、黒髪が肩に踊る美少女は、うれしそうに数えながらいう。

「今朝は、ベーコンにハムエッグがしーくん!それで、ハムに目玉焼きはわたしと、じんくん!それに、ジーンはハムに目玉焼きはいっしょで、でもはんじゅくなの!トーストはみんなかりかりね!」

「うん、本当にすごい。いつもありがとう、マナ」

元気に応えるマナにジーンがにこにこと笑顔で応えて。わたしとじんくんはめだまやき、ぜんぶやきなんだよ!といっているマナをしみじみとジーンが笑顔でながめて。

 明るい笑顔の二人に、隣で篠原が無言で深くうなずいている。

ちなみに、じんくんは壇上守少年のことである。何故、どこからじんくんになったのかはなぞだ。

もっとも、単なる気分かもしれない。篠原のことも、しーくんだったり、しっくんだったりする。

尤も、これはマナだけでなくジーンもだが。

 にっこり、光がさすような笑顔でマナがいう。 

「お野菜もいためたのがあるから、ちゃんとたべてね!」

「うん、…ほうれん草?」

明るいマナの笑顔に、ちょっとまゆを寄せてジーンがいう。

それにためらいなくうなずいて。

「うん!ほうれんそう!おいしいよ?」

「…わかった、…マナがいうなら食べるよ」

諦観と遠く何かをみつめるように視線を空に逃がしてジーンがいう。

それに、笑顔でマナがちゃんとたべてね!というと背を向けて台所へ走って行くから。

「…うん、―――まあ、仕方ないよね、マナが作るんなら」

庭を眺めながらお茶を手にいうジーンの隣で、無言で篠原がうなずく。

「わかったよ、…。ちゃんと食べます。苦手なだけだから、ほうれん草は…」

うんうん、とそれに篠原が無言でうなずいている。

「お野菜、食べられた方が、いいです」

「…しっくん、無理に三単語以上話そうとしなくてもいいから」

「はい、…」

無言でうなずいている篠原の強面は普通ならこどもが泣き出しそうなこわさだが。

ジーンもマナも、さらにじんくん――壇上少年も。

ここに篠原の強面を怖がるこどもはひとりもいない。

 その強面の篠原を隣りに、ジーンが青空を仰ぐ。

「良い日和だねえ」

のんびり、楽隠居でもしている雰囲気で。

白雲が青空に流れる良い時間を、レイン・ジーンは過ごしている。




その頃、壇上少年は。

「…見つけちゃった、―――」

がっくりと、庭の一角に見つけた穴を前に肩を落としていた。

日課になっている朝の散歩。

広すぎる庭を毎日場所をかえて歩いているのだが。

それも、実をいうと壇上が持つ仕事の一部なのだけれど。


 黒い穴、丸々とした黒い淵の奥はまったくみえない。


「しかたないよね、…」

ポケットから、通信器機を取り出す。

外の世界で通用する通信器機がここでは使えないから、これは特製の装置になる。

滝原邸特製専用通信器機――

 略して「ネコの手」。

どこを略したらネコの手になるのか全然わからないよね、と。

最初にこの装備をもらったときのことを思い返しながら。

 壇上少年は本当に猫の手型をした通信器機を取り出して、その肉球をおす。

 ぷに、と肉球がへこむと光ってホログラムが浮き上がる。

「ハロー、と、壇上君。お仕事かい?」

「はい、ジーンさん、…みつけちゃいました」

ホログラムで空中に浮き上がるジーンの映像に、壇上が肩を落としながら肉球を黒い穴に向ける。

ホログラムが少し動いて視線を動かして。

「うわ、…――見事だねえ、壇上君はいつも。流石、それをお仕事としてるだけのことはあるよ」

「…ありがとうございます―――でもこれ、朝ごはん食べてる時間ないですよね?」

肩を落としていう壇上に、ジーンがあっさりと。

「そうだね。がんばってね、壇上君」

「…――ジーンさんは?」

問い掛ける壇上にジーンがにこやかにいう。

「勿論、ぼくはマナの作った朝ごはんを食べてから向かうよ?がっかりするからね、食べないとマナが」

「…そうですよね、…ぼくは?」

かなしげにいう壇上少年にホログラムでも神々しいような笑顔で美少年が言い切る。

「勿論、きみはそのまま事態の解消に当たって。優先順位は処理にあるからね?時間外ボーナスは出るから安心して。マナにはぼくからいっておくから、こちらも安心してね?」

「…―――了解です、…」

ホログラムが消えると、壇上少年が黒い穴をみる。

 庭の一角に突然開いている黒々とした穴は、確かに対処することを何よりも優先する必要のある異常事態だった。

「…仕方ないか、」

黒い穴をみてから、ポケットにネコの手を仕舞うと。かわりに、携帯食――つまり、こうして臨時に食事が取れなくなることを想定して持ち歩いてる食事代わりのバーを取り出す。

 チョコ味の携帯食バーはわるくない。

 単に、マナが作ってくれた朝ごはん、…とおもうと、視線が遠くなるだけだ。

「うん、はやくおわらせて、ごはん食べよう」

 活動前のエネルギー補充に携帯食をかじると、壇上少年が大きくうなずく。

 そして、真顔になると。

 右手の甲を黒い穴に向け、左手で右手首にふれるようにする。

「封印処理開始、―――シールド、オープン」

海を引き込み庭としたといわれる千年前に大名屋敷だったという滝原邸の広い庭で。

ひとり、壇上少年が突然現れた黒い穴を処理する為に対応を開始する。

 展開を始めたシールドに、黒い穴が一回り大きく透明な球体に包まれていく。

 透明なシールドが境界で弾く白い光がかすかに庭を背景に輝き、そのシールドが展開され始めているのを理解させる。

 しずかに音もしない封印処理を。

 そして、壇上少年がシールドが閉じる間際にいう。

「鍵を、掛け。そして、閉じる」

 しずかに、確信を持ち。

 右手を振り下ろす。

「無に通じる入口であり出口である無の門、

しかして、我はその鍵を握り、門に鍵を掛けることができる者」

 淡い光が漆黒の闇にわずかに境界をなぞるように踊るのを。

「我は、鍵を握るもの。―――故に命じる、無の門に鍵を掛け、閉じる」

 黒い穴の境界がゆらぐ。

 何かが、不意とゆらいで消えるような。

 それは、―――。

「鍵を、閉じ封印する」

 壇上少年が告げて。

 そして、―――。



 無の門は閉じ、封印された―――。



 



 そんなこんなで、平穏は護られて。

 平穏を守りつつ、日々のんびりとねこ様にかつお節を捧げつつ生きるかれらの物語である。




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