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2話 運命の日

翌朝、ヒルアは起きてすぐ窓を全開にし、朝の澄んだ空気を肺いっぱいに吸い込む。


天界にも朝はあるのかって?あるに決まっている。太陽と月は我らを作り出した神が住まう頂上の場所なのだ。

その進行を止めるのは地上のものであろうと、天上のものであろうと不可能なのだ。

空気はどうしたのか?それはじじ様が人間好きだから、人間の住まう世界のものを1つ再現しようとして創造したんだよね。

じじ様は変わり者だ。なんで人間に情をかけているだろうと。まぁこの空気?ってのは気持ちの良いものでヒルアは気に入っていた。


「おいでお前たち、ご飯の時間だよ。」


やってくる小鳥たちに昨日取ってきた果物をあげる。小鳥たちはすごく喜んで食べ始める。うん、やっぱり禁ノ園の果物は絶品だよね。


ヒルアは窓枠から離れ自分も侍女たちが持ってきた朝食を取る。座っている場所から窓の外をもう一度見る。


「ここから見る景色は何度見ても綺麗だな。」


王城の一室から見るその景色は綺麗に整われた街並みが一望でき、とても美しいものだった。


「まだ少し時間があるな。」


昼になるまでまだ少し時間があるので、昨日サボった分の学習を筒がなく終わらせる。下界についての歴史。我らが天上の世界の暦、天界暦は地上の暦とは少し違う。この世界は地上の時間よりも穏やかな時間が流れる。

地上では色々な歴史が繰り広げられている。とある国では、宗教の違いで争いが起こった。別の国では民衆が、王の政治に対する不満で革命を起こしていた。また違う国では、国の統治権を決める戦いが繰り広げられていた。

学べば学ぶほど人間が悪いものだと感じさせられる。ハルバンはなぜこんな争いの多い種に対して好感が持てるのか。眉間にしわを寄せ考えていたヒルアだったが、


「あ、もうすぐで時間かそろそろ動こうか。」


急いで正装に着替え、部屋を出る、と思いきやヒルアは窓の方へ行き足を窓の枠にかける。


「玉座の間、僕の部屋から少し遠いんだよね。」


と言い、背中から忍ばせていた真白に輝く大きな翼を広げる。窓の外へ勢いよく飛び出し翼を羽ばたかせ下に降りて行く。

玉座の間のドア、、、ではなく、空いている窓から顔を出し姿を現す。


「な!ヒルア!ちゃんと正面のドアから来ぬか!」

「え、いやぁ僕の部屋からここまで遠いので、仕方なく、、、」

「仕方なく、では無いわ!はぁ、まぁ良い。前へ出よ。」


と言われた、ヒルアは少々足を重くさせながら祖父が座る場所から少しだけ離れた場所まで移動する。が、そこで違和感に気づく。

なんでこんなに人が多いのだ?

それだけではなかった。異様に周りがざわついている。いつもここで罰を受ける時はここまでの大人数で話を聞くことは無かった。

そんな疑問を抱いたヒルアだったが、祖父の前までやってきた事で気にするのをやめた。


「ヒルアよ、そなたに禁ノ園に立ち入った罪として罰を与える。」


今回与えられる罰はなんだろうか。謹慎か、課題を多く出されるのか、または食事を抜きにされるなんてものだとすごく辛い。まあ天使は元々あまり食事を必要としないが、食べるのが好きな僕からしたら相当辛いのだ。


「ヒルア、そなたを、、」


謹慎も嫌だな。長いことまた禁ノ園に行けなくなる。


「"下界送りの刑"とする。」


え?


「えっ!?」


え?いや、、待て、待て待て待て、下界?地上の世界?天使である僕が?、いやいや、嘘だろ、、?


「ま、待ってください!じじ様、、ハルバン様!ど、どうしてそのような罰を!そのような罰は一度も聞いたことがないです!下界送りなど重すぎるではないですか!」


ヒルアは混乱していた。いつも受けるような罰ではなく、まさか自分が下界送りになるなど想像もしてなかった。


「ヒルアよ、そなたはわかっておらぬが、そもそも禁ノ園へ立ち入ることはとても重き罪なのだ。最初は王族という事もあって罪を軽くさせておった。が、さすがにこれ以上の軽化は他のもの達への示しもつかぬのだ。」


ヒルアは理解した。自分は慈悲を受けていただけだったのだと。


「あと、そなたは人間への偏見が強すぎる。下界での生活を経て少し頭を冷やすが良い。人間から学ぶこともあるだろう。」


「、、、、」


「ヒルアよ、人間が作った言葉で『可愛い子には旅をさせよ』というものがある。そなたが立派な王になるためにも今後300年天上へ帰ってくることは許さぬ。」


____________


判決を下された翌日、ヒルアは少ない荷物を抱え、下界と天界を繋ぐ門の前に立つ。

あの後もハルバンへの懇願を続けたが、その願いは聞き入れて貰えず、ヒルアは放心状態になっていた。


「ここから先が、下界、、、」


ヒルアは膝から崩れ落ち、目から涙を零した。

この大好きな国から離れないといけないこと。300年と言う年月は決して天使に取っても短いものでは無い。果物もその間食べられないだろう。家族や友達と離れて過ごす事その全てがヒルアにとって苦になると思えた。


「じじ様、どうして、、、」


そしてヒルアは立ち上がり泣きながら下界へと降りていく。












マイペースで書いていきます。

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