元彼
彼氏と別れたのは少し前。まだ桜が咲いてる頃だ。
散ったのは私。もうアナタの知ってる私は此処に存在しない。
多彩な色を放つイルミネーションも派手な真紅のドレスも私の目には白と黒でしか映らない。
「変わったね」とアナタは言うが、変えたのはアナタ。
何度も言うが、あの頃の私はもう此処に存在しない。初心で恥ずかしがり屋の私は死んだ。
別れても逢っている私を、安い女だなんて思わないで。アナタだって白と黒でしかないのよ。
優しくなんてしないで。私は素直じゃないの。だからまたアナタを怒らせる。いくら求められても、今のアナタに抱かれるつもりはないから。
アナタが私の手を握る。それで私を抑えたつもり? 私は泣いたり怒ったりしないわ。アナタの前じゃ弱さを見せたくないの。
そんなに激しく下唇を噛まないで。この赤い血が流れ落ちても、私は堕ちないわ。
ただ、アナタのその長いまつ毛が肌に擦れるの。卑怯じゃない。
いっそ、その硝子の灰皿で私をぶって。何もかも壊して。私は卑怯なの。
世界でアナタだけになら、殺されても構わない。
アナタは耳元で囁く。
「やり直さないか。昔みたいに」
アナタが良くても私が困る。だってもう変わってしまったから。
だから言葉遊びなんていらない。もう一度、私の網膜をぶち破って頂戴。
今の私を愛して。
女心を描いた~。とか言ってますが、女性じゃないので女心はわかりません。あしからず……