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虹かけるメーシャ   作者: 藤巳 ミタマ
職業 《勇者》
73/76

73話 戦いの火蓋

「──いくぞみんな!!」


 ワルター達は魔法弾が降り注ぎ、頑強な結界が守るジョン砦に攻め込んでいた。


「ダイアナちゃん強化を、シャロンちゃん魔法障壁を、アメリー攻撃魔法準備!」


 ワルターが仲間に指示を出す。


「みんなに届け……! ──攻撃強化(ドドガッツ)! ──魔力適性強化(ドドマジカ)!」


 ダイアナの円盤から魔力のオーブがいくつも飛び出していき、仲間の能力を上昇させる。


「──魔法障壁(マジカチット)! これで魔法弾に強く出られるわ……!」


 みんなの周りに魔法でできた魔法の壁が出現する。シャロンの使ったこの魔法は、受ける魔法の魔力を分散させることで弱体化する効果がある。

 状態異常でも弱体化でも攻撃でも、弱い魔法だと無限に消し去り続ける強力な障壁だ。


「…………魔力集中。……闇の王よ、我に上位たる闇のチカラを……!」


 アメリーは上級魔法を使うために魔力を練り上げていく。


 ──ドドドドドドッッ!!


 その時、ゲリラ豪雨のような爆音を鳴らして砦から魔法弾がはっしゃされる。狙いはもちろん、今魔法を使っている3人だ。しかし──


「──させない、よ……!」


「──ざんねんでした!」


 ポリーとカシーが超遠距離から連続で矢を射出し、3人を狙う魔法弾を撃墜していく。


「あたしたちの矢は、マジックキャンセル効果があるから……」


「こうげきを当てたかったら、もっと強い魔法じゃなきゃかき消されちゃうんだから!」


「ナイス双子ちゃんたち! ……じゃあホブちゃん、そろそろ準備は良いかい?」


「ガウッフ……!」


 ホブちゃんは腕をグルンと回すと、次の瞬間魔法弾の雨の中を突っ切って行った。


「グゥオオオオオオオオアアアア!!!」


 鬼神の如き気迫でホブちゃんは駆ける。魔法弾を受けてもお構い無しに。後ろにいるワルターをこの先へ無事に届けるため己の肉体を盾にして走り続けた。


「カシーちゃん矢を!」


「どうぞ!」


 ワルターが言うが早いか、カシーが矢を放つ。


「サンキュ!」


 それをワルターは走りながらキャッチし、急いでホブちゃんの背後に向かう。


「ワルター、いつでもいけます!」


 アメリーの魔法の準備が整ったようだ。


「オーケイ! じゃ、この邪魔な結界に風穴を!」


「闇の槍よ我が道を(はば)むモノを穿(うが)て! ──上級闇魔法(ハミミスヤ)!!」


 ──刹那。5m以上もある巨大な漆黒の槍がいくつも出現し、結界の1点だけを捕捉して降り注いだ。

 邪魔をする魔法弾を一切がっさい粉砕し、修復機能をも上回る火力で、闇の槍は結界に大きな風穴を開け放ったのだった。


「ウガウ!!」


 攻撃が止んだ瞬間、結界はすぐさま穴を閉じようとするが、控えていたホブちゃんがふたつの剛腕でせき止める。

 持って生まれた筋力という才能、一般のホブゴブリンとは比べ物にならない努力、仲間から託された攻撃強化、そしてホブちゃんの()()によってなせる技だった。


「ガウガ! イガウ!!」


「助かるぜホブちゃん!」


 ホブちゃんの合図でワルターは風穴に飛び込み、砦の中へと突き進んだ。


「ガッフゥ……!」


 それを見送ったホブちゃんはバックステップを駆使して魔法弾の攻撃範囲外に避難する。


「いま治しますからね。 ──中級回復魔法(シュワリン)……!」


 ホブちゃんが戻ってくるのとほぼ同時にシャロンが回復魔法をほどこす。

 いくら強靭な肉体を持ち合わせていたとはいえ、数百もの魔法弾をもろに喰らってしまったホブちゃんは無視できないダメージを受けていたのだ。


「ホブちゃんさん、お疲れ様です。おかげで作戦の第一段階成功と言っても良いでしょう……」


 冷静に語るアメリーだが、魔力消費が激しかったらしく肩で息をしていた。


「アメリーちゃん、魔力ポーションじゃ。今のうちの飲んどった方がええぞい」


 ダイアナが円盤からビンをひとつ取り出してアメリーに渡す。


「そうですね。本番はこれからですから」


「……みんな、大丈夫?」


「わるたーちゃん、せいこうするかな? そうじゃないと……」


 遠くにいたポリーとカシーが合流する。

 そう、カシーの言う通り作戦の次の要はワルターにあるのだ。


 砦内に潜入したワルターが、結界を作り出している魔法陣と魔石を破壊しなければならない。そこからオークロードや邪神の手下、覇王となるための道具を探して叩くのだ。


「きっとワルターなら大丈夫です。…………ほらっ!」


 アメリーがそう語ると時を同じくして、降り注ぐ魔法弾と砦を守る結界が霧のように消えてなくなった。ワルターは無事成功したようだ。



「──みんな、お待たせ! 入り口は確保したから来て大丈夫だよ!」


 門から顔を出したワルターが仲間に合図を送る。


「では、行きましょう!」




 ● ● ●



 それからワルター達はスマホ型魔法機械(パルトネル)で連絡をとりつつ、手分けをして砦の中を探索していった。


「──わるたーちゃん……怪しいオブジェ見つけたよ」


「儀式の道具かなぁ?」


「ガウガウガ」


 ポリー、カシー、ホブちゃんが、祭壇と骨でできたドラゴンのオブジェを見つけていた。


 これは不安定な覇王のチカラを安定化させるために、オークロードが事前に用意した呪術道具のひとつである。


『──さっきダイアナちゃんたちもドクロでできた盃を見つけてたみたいだ。直接触らず慎重に壊してくれ。双子ちゃんの矢とか、光魔法なら大丈夫なはずだ』


「わかった……」


「わるたーちゃんも、気をつけてね」


『ああ、また後で──』


「…………ウガ」


「そうだね、壊しちゃお」


 カシーは背中の矢筒から矢を取り出し、オブジェを思い切り叩いた。


「えーいっ!」


 ──ガシャーン……!


 オブジェは見事に砕けちった。


「これで覇王っていうのが弱体化? するのかなあ」


「信じるしか……ないよカシーちゃん」


「ウガ」


「それもそうか」



 ● ● ●




 それから一行はいくつかのオブジェを破壊していき、とうとうワルターが最深部に到着する。


「……ようやく会えたね、オークロードちゃん」


「…………ぐぬぬ。まさかここまで来れるとは、流石に予想外でしたよ……!」


 オークロードは怒りに震えながらも、総大将としての意地か冷静にワルターに相対する。


「ニンゲンにしては上出来です……。アレを壊されては本来のチカラを発揮するのは難しい。……ですが、それでも覇王成れないわけではありません。

 それに、7割のチカラは発揮できますし、後からあなた方と離れた位置にいるお仲間さん達の魂を吸い取れば取り戻せます。残念でしたねえ……!」


 オークロードは勝ち誇った顔を見せた。


「そんな顔をしても、焦ってるのが丸わかりだぜオークロードちゃん。指が震えてるの気付いてないでしょ」


「ナメやがって……! ああ、いえいえ……冷静さを失うところでした。確かに作戦を邪魔されて頭に来ているのは認めましょう。しかし、それは御使様(みつかいさま)の期待を裏切ってしまうからであり、あなた方が負けると言う事実は変わりません」


 オークロードは脂汗を流す。

 オブジェによって出力を上げつつ、その中でもチカラを安定化させてニンゲン達を蹂躙(じゅうりん)し、ゆくゆくはこの戦いで魔王にまで登り詰めてやろうと言う魂胆であった。

 だがオブジェを全て失った今、覇王になるのも博打になる上に、暴走しないでコントロールできるかも分からない。

 もちろん魔王になるのも確実に不可能であり、サブラーキャの前で大口を叩いた手前、失敗とあれば見捨てられてしまうかもしれない。



『ワルター、そちらに生命力が集まっています。気を付けてください』


 その時、アメリーから連絡が入る。


「くくくっ……遅かったですねぇ! すぐにトドメをさせば勝てていたものを!」


 確実にオークロードは追い詰められていた。だが、まだ完全に失敗だと決まったわけではない。

 不完全でも覇王となり、チカラは無理やりコントロールして後から出力を上げていけばいいのだ。


「見るがいい……! 覇王の誕生を、我の再誕を、神話の始まりを……!! 目に焼き付けるがいい……崇高なるこの覇王()()()()の姿を!!!!」


「みんな、砦から離れろ──」


 慌ててワルターがパルトネルで仲間に呼びかける。


 ──爆発。



 声は届いただろうか?

 返事は返ってきたのだろうか?

 仲間達はちゃんと避難できただろうか?

 自分は今どうなっているのだろうか?


 歴戦の冒険者である仲間のことだから、きっと事前に危険を察知して安全に戦える場所に避難しているはず。

 自分も部屋から脱出して、設置しておいた転移陣に飛び込んだはず。


 だが、魂が嫌悪するような邪悪な閃光で目が眩んで、おぞましい悲鳴のような轟音で耳が遠くなり、触れれば腐るような感覚を覚える邪気で肌を焼かれ、ワルターは何も確証を得られなかった。




「──ここで……負けるなんてダサすぎだろ? ワルター……!」


 ワルターは自分を鼓舞し、うまく動かない身体を無理やり動かして回復ポーションを飲み干す。


「……ったはぁ!」


 危機一髪、ワルターは死を免れたようだ。


「ワルター!」


「あれ、どうなってんの?」


 アメリーの声でワルターは目が冴える。どうやら、ホブちゃんに担がれて移動しているところらしい。他のみんなも一緒だ。


「ガウ」


「ん? あ、あれが……!?」


 ホブちゃんに促されて背後を見ると、そこにはもはや原形を想像するのも難しいほど破壊された砦と……見上げるほどに巨大なモンスターがそこに居たのだ。


「多分……いや、間違いなくアレがオーカスだと思うのじゃ!」


 ダイアナの言う通り、ソレはオークロードが無数の魂と覇王のチカラを吸収して進化した邪悪なモンスター…………()()()()()()だった。


 イノシシの頭はおぞましい雄叫びをあげ、ヒト型の上半身は天をあおぎ、ドラゴンの下半身は瓦礫を踏み潰す。6つあるコウモリの翼をはためかせて近寄るモノをはばみ、まとうオーラは周囲の生気を奪っていく。


 高さにして30mを超える巨体はそれだけでも圧倒的な存在感を放ち、その覇王の眼光は恐怖で魂を凍らせる程だった。


「やべえ……身体が震える」


 そのオーカスを前にしたワルターは恐怖を感じてしまう。



 だが、ホブちゃんから下りることを選択し、ワルターのつま先はオーカスの方へ向かっていた。


「戦えますか?」


「まあ……ね。それにさ、さっきオーカスの爆発を受けた時になにかこう……()()()気がするんだよ」


 成功するかは分からない。しかし、分の悪い賭けではない。

 ワルターはかすかに見えていた。オーカスとは違う覇王の宝石の使い方を。


「だからみんな……もう少しだけ、オレちゃんにチカラを貸してくれ!」


 ──そして、オーカス対ワルター、サブラーキャ対メーシャの戦いが始まる。




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